Story Reader / Affection / ルナ·終焉·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ルナ·終焉·その2

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運がよかったのか、ルナが言っていた嵐は訪れなかった。3時間ほど歩いたあと、目の前にかろうじて廃村と呼べる場所が現れた

いや、「村」という言葉は適切ではない。岩壁に寄せて建てられた数軒の小屋が空き地を囲んでおり、それは単なるいち集落にすぎなかった

もしこの集落に住人がいるなら、その生命力は驚愕ものだ。倒壊した建物や鉄錆と黴の臭い、生い茂る雑草が、この場所がすでに忘れ去られて長いことを物語っている

あなたの移動速度じゃ、嵐の前に危険な区域を抜けるのは難しい

ここに移動手段があったはずよ

ルナの言う通り、集落には1台の車があった

しかし、その埃が積もった車体には奇抜な改造が施されていた。それが人類の科学技術史上における重要な成果なのか、処理するべき産業廃棄物なのかを判断するのは難しい

うーん……

ルナは目を閉じてしばらく考えた

ロープであなたを縛って、目的地まで飛ぶ方がいい?

だったら、この車がまだ使えるように祈るしかない。この辺に他に車なんてないもの

時間をかけて、その「ヴィンテージカー」を調べてみたところ、派手な改造の下は空中庭園製のオフロード車であることが判明した

自分が知っている型とは少し違うが、確かにこれは空中庭園製だ

そんなことはどうでもいいわ、動くの?

配線に問題はあるが、これは簡単な修理だ。一番の問題はバッテリーがないことだった。車の収納箱のソーラーパネルで解決できるとして、満タンまで充電する必要がある……

つまり、日が沈むまで充電し続けないと出発できない?

じゃあ、夜になってから出発すればいいわ

ある人間は車のエンジンルームに体を半分突っ込んで車の配線をいじり、ある代行者は近くの石に座って、ぼんやりと遠くを見つめていた

出会った時から、ルナはずっとひとつの箱を持っていた

気になる?

ええ

ルナは笑った

あなたがそんなに想像力豊かだなんて、知らなかったわ

今の私に、人類を滅亡させるような超兵器なんか必要ない

それに、私の注意を逸らそうとしても無駄よ。どれだけ救援信号を送ったって誰も来ないから

ルナはやれやれと言わんばかりに溜め息をついた

ふふ

誤魔化さなくたっていいわ。あなたの行動はずっと監視下にあるの

車はとっくに修理できてるんでしょう?

さっきからずっと車の通信装置で救援信号を送っていた

心配いらないわ、あなたを傷つけるつもりはない。約束する

ルナは笑ったが、返事はなかった

救援信号を送っていたのがバレたので、これ以上修理を装う必要はなかった。後は、夜まで待って出発するだけだ

ボンネットを閉めようと、視線を車から離した時……

一連のアルファベットと数字の組み合わせを見て、寒気が走った。それは空中庭園が製造した製品に刻印される番号で、出荷日とロット番号を示している

……

風が次第に強くなっていた。地平線が夕陽を飲み込むと、夜の帳が降り始めた

運転席に座って出発の準備をしていると、意外にも、助手席に座った影があった

浮遊し続けるのは疲れるの

それに、人間の文明から離れたこの荒野の夜は、あなたが思っている以上に暗い……車の中からじゃ私が見えないかもしれないわよ

車の部品に刻まれたあの番号が頭にちらつく

……

ルナは視線を窓の外に移した。答えるつもりはないようだ

先ほどまでの違和感はこの時少しだけ解消されたが、まだ確証はない

車のエンジンをかけ、廃墟となった集落をゆっくりと後にし、荒野へと走り出した

暗闇が世界を覆い、車の走行音と風の音以外は何も聞こえない

――しばらくして、その人間は何かを思い出したようだった

暖かな黄色の光が、狭い車内を照らした

ライトを点ける必要はないわ

少女はもう暗闇を恐れてはいないのだろう

私はもう……

ルナは静かに笑った

首席じきじきの、道徳の時間?

やめておくわ……でも、ありがとう

礼には礼を返すの。あと、私の真似をしないで

ルナは助手席で体に力を入れて身構え、顔をその人間の方へと向けた

私は代行者なのよ。あなた、本当にこんなに近くにいていいの?

そんなに簡単に私を信じるの?

あなたって……

ルナは言い終わらない内に、突然背筋を伸ばした

嵐がくる、もうすぐよ。全速力で走って

あっという間に、目の前の世界は風と砂に埋もれ、砕けた石と砂粒が狂ったように車体に打ちつけられた

こんな状況での運転は非常に困難だ。更に悪いことに、次第に目眩がしてきた。まるで……キャンプで倒れた時のように

ついに張り詰めていた糸がぷつりと切れ――車は横倒しになって転がった。長年修理されなかったヴィンテージカーはついにその終焉を迎えた。自分の視界も次第にぼやけ始める

意識を失う前に見たのは、手を差し伸べるルナの姿だった

しっかりして!