Story Reader / Affection / ルナ·終焉·その5 / Story
再び暗闇に包まれた。おぼろげな映像や人影が浮かんでは消え、虚構と現実が入り混じって記憶を混乱させてくる
雑然とした声が前回よりもはっきりと聞こえる
指……揮官……
後方は私に任せて、あなたたちは先に行って
現在の検査……異常なし……
▄▆▃▅▂のこと、頼んだわよ
……空中庭……戻り……更に……提案する……
姉さん！
……
私が[player name]を傷つけることはないと、あなたはわかっているでしょ。あなたの力をもうしばらく貸して……
……
気がついた？
目を開けると、見慣れない天井や囚人を乗せた馬車といったものは見当たらなかった。すぐ側に座るルナがいて、静かにこちらを見つめている
2時間ほどよ
次第に目が明るさに慣れてきた。遠くには廃墟となった遊園地の観覧車の輪郭がうっすらと見えた。少し前に小雨が降ったようで、鉄錆の匂いが空気に混じって漂っている
自分は古いソファに横たわっていた。ソファの側には古い鉄製バケツがあり、ここで誰かが暖を取っていたようだ。ルナはその側の階段に座り、眉をひそめてこちらを見ていた
……
ここには私たちふたりしかいない。あなたの気のせいよ
ルナの話し方はいつも冷ややかだが、今の言葉にはどこかぎこちなさが感じられた
今はその秘密を探る時ではなさそうだ
あのエリアからは脱出したわ。ここは嵐の心配なんてないから、安心していい
先ほどの不自然な態度を隠すように、ルナはすぐに答えた
飛んで
え？
赤い瞳がその言葉を遮った
失礼な人。でも、今回だけは許してあげるわ
先ほど突然気絶したせいか、あるいは横転した時にぶつけたせいかはわからないが、あまり体に力が入らない
嵐に追いかけられるプレッシャーもなく、体をボロボロのソファにだらりと横たえ、星空を見つめた
何が？
白い髪の少女は振り返ってこちらを見た
都市の光害がなくなった夜空は目を見張るほど魅力的だ。140億年の歴史が星々を通して目の前に広がっている
地球の衛星である月は静かに空に浮いて、地上へと光を振り注いでいる
ルナは空を見ずに俯き、すぐ側の水たまりを見つめていた
……水面の月も、同じように綺麗じゃない？
彼女の声には拭いきれない悲しみが含まれていた
その理由はわからないが、今は何も言わない方がよさそうだ
蘭？
白い髪の少女の瞳に驚きの感情が浮かんだ
蘭の花を見つけた経緯を彼女に話した
……
今回だったのね……
運命って、本当に不思議ね
なぜその蘭を空中庭園に持ち帰ろうと思ったの？
寂しそう……
ルナは箱を取り出して、複雑な表情を浮かべた
箱の中身が気になると言っていたわね？
ガスの放出音とともに箱がゆっくり開くと、中には1株の蘭の花があった
実は、今回の旅はこの蘭のためのもの。この花を家に持って帰らなきゃいけないの
そう、一緒に行く？ご褒美に、やることを終えたらあなたを帰してあげる
……今回は断ってもいいわよ
彼女はまた水面の月を見つめた。その表情は夜の闇に隠れている
ルナは再び温かな笑みを浮かべ、花びらに優しく手を伸ばした
あなたには、まだ知らないことがたくさんあるわ
前に、約束したの……
……ある場所にたくさんの雪影蘭を植えていた
数日前に嵐に見舞われて、私がたどり着いた時には最後の1株しか残っていなかった
この一帯に、異常気象が頻繁に起こるようになってきた。時々、この星が少しずつ死へ向かっているように感じる
雨上がりの深夜の野外では、まだ寒さが身に染みる。少し体の位置を変えただけで肌寒さを感じ、思わず身を縮めた
ルナは手招きするような仕草をすると、赤い霧が集まって1枚の毛布を形作った
はい、どうぞ
言ったでしょう、あなたにはまだ知らないことがたくさんある、って
ただの毛布に見えるけれど、私の服と同じような原理よ
目の前の少女をよく見てみる。なるほど、確かに赤い服だ。緑のマントに金の角をつけたキャラクターではない
パニシングのこと？そこまで深く考える必要はないわ
「毛布」を受け取って体にかけると、確かに暖かい
理由はわからないが蘭の話の後、ルナの態度が明らかに変わったようだ
また……軽口が多いのね
人類文明の境界の外で、人間と代行者のふたりは、苦しくも和気あいあいとした時間をともに過ごしていた
？
妙なことをしなかったでしょうね？
？
ルナは遠くの観覧車を見つめた
奇妙な観覧車……
確かルナは、観覧車は未体験だって
あの時のリンクでは、メリーゴーランドと合体した奇妙な観覧車に一緒に乗ったはずだが、現実で体験できればもっといいだろう
ここはもう、朽ち果ててずいぶん経つわ
どうせ暇を持て余しているのだ。怪物を操る魔法使いに襲撃されるようなこともないだろう
