Story Reader / Affection / ルナ·銀冠·その2 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ルナ·銀冠·その3

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ビーチの白い砂が夜によく映えていた。ほんの少し、湿った潮風も吹いている

砂の中から身を起こす。口に少し砂が入ってしまったようだ

ここは……晨星スタジオリゾートだ

以前訪れた時とは様子が異なっている。ビーチから望む遊園地はライトアップされているようで、きらびやかだ。黄金時代風のアコーディオンの音色も聴こえてくる

遊園地に近づくにつれ、すれ違うサービスロボットの数が増えてきた

ケイシー?

いらっしゃいませ、ようこそ!お客様、ライブパフォーマンスはいかがですか?

マティーニ?

お客様、マティーニはいかが?

ホイールをフル回転させたロボット2体がやってきて、深々とお辞儀をした

マティーニ?

ええ、ええ、未成年者は飲酒禁止です

マティーニは鋭い警告音を鳴らすと、猛然と身を翻して去っていった。お陰でカクテルグラスに入っていた「マティーニ」を少々浴びてしまった

ケイシー?

お客様!お客様だ!お客様だ!またお客様がいらっしゃった!

ケイシー?

お客様、どうぞこちらへ!こちらへ!

もう1体の小さなロボットは完全にエネルギー過多のようで、ひっきりなしに飛び回っている

ケイシー?

晨星スタジオリゾート史上最高のパフォーマンス、絶賛上演中!

ロボットについてたどりついたのはある建造物の前だった。アモがアイスクリームや記念品を売っている。陽気な声をあげながらスナックや玩具を配るロボットもいた

アモ?

ちびっこのみんな、これをどうぞ!

こちらの返答は一切聞いていないようで、ロボットはきれいに包装された箱を強引に押しつけてきた

アモ?

わーい!わーい!わーい!

アモはプレゼントを寄越すと、歓声をあげながら去っていった

更にロボットのあとをつけ続け、劇場にたどり着いた。舞台上の横断幕にはクレヨンで「ショーメイの死」と書かれている

暗い客席の中にルナがいないか必死で探す。だがほどなく、客席のロボットたちの光る目が一様に自分に向けられていることに気づいた

開演!開演だよ!

舞台のスポットライトが点灯し、いつの間にか舞台に上がっていたサメピーを一斉に照らす

開演!開演だよ!

するとサメピーの頭が転げ落ち、中からショーメイの顔が現れた。彼は目を大きく見開いている

ルナよ。本当に自分が全てを掌握したと思っているのか?

貴様が何を考えているか知る者は誰もいないと、本気で思っていたのか!

失望したんだろう?私から真相を聞く以前から、昇格者であることをやめたいと思ったことがあったんじゃないか?

思い通りにことが運ばないのはどんな気分だ?貴様が他人に与えた苦しみには比べるべくもないがな……!

今世も、来世も、来来世も、貴様が幸せを得ることなど未来永劫ありえない!

貴様は何千倍、何万倍の苦しみを償うのだ!それが因果だ!貴様の姉も貴様の罪を償う……

ルナ

……黙れ!

暗闇からルナの声が響いた。客席のロボットの数はみるみる増え続け、光る目が全て激怒するルナへと向けられた

ルナ

なぜ……私を見るの……

いや……見ないで!

どこからともなく現れたロボットたちによって、いつの間にか劇場は大満員になっていた。座席から離れようにも、暗闇では何も見えず、鋼鉄の海の中を手探りで進むしかなかった

暗闇中を必死で舞台へと進む。舞台によじ登り、重い緞帳をよけると一斉にスポットライトが当たった

ロボットの視線がこちらに集まる。次の瞬間、ロボットたちは火に飛び込む蛾のように一斉に向かってきた

漏れ出す光がわずかに照らす劇場出口の近く、機械たちがいなくなったそのあたりに、ルナはいた

……

ルナもまた、茫然とした顔でこちらを見ていた。ロボットの海の上で互いの視線が交差し、彼女の表情が少しだけ緩んだ

唇の動きでルナに伝える。ひょっとしたら彼女はこちらの考えを読み取れるのかもしれない。とにかくルナは、言われた通りにその場にとどまっている

舞台を見回し、上から垂れ下がっているロープに狙いを定めた。無数のバルーンとリボンの装飾をつなぐロープだ

胸元から先ほど受け取ったプレゼントを取り出す。包装紙に巻かれていたリボンを外してロープに引っかけると、強度を確認し、飛び上がってロープを滑り降りた

壁にぶつかる直前、タイミングを見計らって手を離す。着地時に大きな音を立ててしまったが、なんとか体勢を整えた先は……ルナのちょうど真横だ

……

ロボットたちがこちらに向かってくる前に、ルナの手を引いて外へと駆け出した

……あそこへ行こう

どこへ?

ルナは抵抗しなかった。そしてどうやら、この遊園地のことを何もわかっていないらしい

……それは、どこ?

一番高い場所……?

ふたりは、きらびやかなライトも、音楽も、ロボットの群れも全て置き去りにして、劇場を逃げ出した。ただ風を切る音だけが耳元で鳴っていた

ルナの腕は細く、少し力を入れれば折れてしまいそうだった。恐ろしいエネルギーを秘めているなんてまるで思えない

宙に浮いてしまいそうな、質量なんて微塵も感じさせないルナの小さな身体を引いて、遊園地をひたすら走る

そうして、ふたりは一番高い建造物――「観覧車」の下へとたどり着いた

ここが……一番高いの?

だが、目の前の観覧車は普通の観覧車とは明らかに違っていた。本来ゴンドラであるべきはずのものが、なぜかペアの木馬になっているのだ

オレンジ色に光輝く木馬は、それ自体がくるくると回転しながら観覧車の回転輪に乗って上へ上へと昇っていく。これは……メリーゴーランドと観覧車が合体したメリー観覧車だ

木馬が目の前に来た。手を伸ばして馬の頭をつかむと、一息に飛び乗ってルナを見た

……

ルナの背中越しに、大量のロボットが奇声を上げながら迫っているのが見える

世界は真っ二つに分断された。恐ろしい悪夢と夢のような楽園。ルナは真ん中に立って、双方を見渡した

それからルナは一歩踏み出して、手を伸ばした。すると世界はひっくり返った