重いマントをまとい、常羽に渡された特殊な仮面をつけて、ふたりは港湾施設の奥へと向かった
守衛に厳重に監視されながら、なかば崩壊しかけている部屋に誘導される
ボスはすぐ来る、ここで待っててくれ
守衛は部屋の奥を指さした
了解です~
常羽は軽い返事をして部屋に入ると、倒れている石壁の上に腰を下ろした
座りなよ。まだちょっと時間がかかると思う
常羽は声をひそめて自分の隣を指さした
ったく、何ビビってんの?食やしないよ
ちょっと休憩しとこう
隣に座ると常羽は笑顔を見せ、こちらに体を寄せてきた
ボスは守衛をふたり連れてくる。指揮官は顔を伏せたままでしゃべらないで
常羽はぐっと近づいて小声で計画を伝えてきた
あの監視はもともと闇市のスパイだったけど、港の人間とは面識がないはず
何かを確認するように、常羽はこちらのマントのチップを触った
マントと古銭さえあれば、気付かれないさ
そう言って常羽は口をつぐんだが、ふと自嘲するように笑った
俺のこと、信用してる?
ははっ、友人か……
……選択肢ってなんだよそれ、冷たいなぁ
常羽は振り返ると、マントにくるまれているこちらを見た
あぁ、前は気づかなかったけど……
常羽は手を伸ばしてフードを上げ、顔をまじまじと見つめてくる
いい顔してる。昔の「あの場所」なら、いい値が着く
常羽は答えなかった。ただ笑ったまま、顔に手を伸ばしてくる
常羽が手を触れた瞬間、チクッとした痛みが走った
常羽は顔に触れた指をそのままゆっくりと下に滑らせ、首筋で止めた
いきなり、常羽が触れている場所にチクッとした痛みが走った
意識が朦朧とし、視界がぼやけ始める
リーの発信機が頭をよぎるが、体は微動だにせずそのまま地面に倒れていく
おっと、あぶない
次の瞬間、常羽に受け止められた
怪我するだろ
なんとか足掻こうとしても呼吸が苦しくて動けない。誰かが自分の体を支え、顔に何か柔らかいものが触れたのを感じる
まだ教えられない。きっと納得してくれないさ
意識が沈みゆく中、常羽の声はまるで水中にいるかのようにぼんやりとして、はっきり聞こえない
全てが終わったらきっと説明する、約束するよ
お?安心しろって。この薬の効果は弱いからすぐに醒めるさ
もう常羽の服を掴む力すらない。しかし、胸の心拍が救援のカウントダウンを始めたようだ
ちっ、心拍が上がると気づかれちまう!
俺を信じろ、[player name]!
しかしカウントダウンが終わる前に、その声すらも聞こえなくなった。視界から光が消え、混沌の闇の中へ落ちていった