……(息を吸う)
……(息を吐く)
ジャ ミ ラ へ……
私は空中庭園でうまくやってる
前からグレイレイヴンのことを聞いていたけど、みんな思ってたよりもずっと優しい
みんなのやり方は、列車とはずいぶん違うけど、頑張って慣れるよ
陛下……これは、使っちゃダメな言葉だった。消そう
ジャミラ、どうして私を空中庭園へよこしたのか、まだよくわからない
使節といっても外交のことは何もわからないし、字を読むのも書くのも護衛になってから勉強し始めたし
それに……勉強しなきゃいけないことが、ここへ来てからどんどん増えたと思う
私を空中庭園に派遣したのは、間違いだったんじゃないかって思う時もある
……これは、言っちゃダメ。消そう
……でも、王族の護衛として、理由は訊かない。ただ、命令を実行するよ
だから、私はここでうまくやる
列車はどう?順調ですか?
陛……ジャミラのこの前の手紙、反王政派はみんな捕えたって書いてあったし、列車の問題もきっと全部解決したでしょう
これからは、ジャミラが言ったように、再建と「改革」を始めるんだ
改革した後の列車はきっと、ジャミラが望む姿になってるでしょう
ヘリウム3の輸送便が出る時、私も一緒に顔を出すようにするよ
それで、この前の手紙の質問だけど……どう答えればいいのか、わからない
でも、「わからない」も答えのひとつだって、グレイレイヴン指揮官が言ってた
だから、こう答えることにする。「今の私は、どうやって答えればいいのかわからない」
おかしいね。前の私なら迷うことなく「処刑」って言ってたと思う
だって、あの人たちは陛……ジャミラの敵だから。敵は消すべきだもの
でも、思い出した。出発する時の、ジャミラの言葉……
「戻ってくる時は私の剣でもお人形さんでもなく、世界の本当の姿を見たひとりの女の子であって欲しい」
私……今でも、その言葉の意味がわからない。私の命も希望も、全部ジャミラがくれたものだから、私はジャミラの剣でいたい
もし時間があったら、私をここに派遣した本当の理由を教えて欲しい
From S……oph……ia
……ふぅ
……やっぱり、ちょっとおかしいかな
でも、これ以上直したら……紙が破れちゃいそう
む。こんな時間に、誰が来たの……
こんばんは
……議長!
勤務時間外は、「ハセンさん」と呼んでくれたまえ
とは言っても、仕事の関係で来たのだがね
それは……私の転属申請のこと?
そうだ……グレイレイヴンから他の執行部隊に転属したい理由を教えてくれるかね?
私が……グレイレイヴンの戦闘について行けないから
そうかな?リーフから前回の任務記録を受け取っているが
戦闘のパフォーマンスから見る限り、一体どちらがついて行けていないのか、判断できかねるね
だが、まあそれはいい。君は、どこへ異動したいのかな?
……できるなら、ケルベロスにいきたい
なるほど。剣は、剣の群れに帰りたいということか
……うん、私にグレイレイヴンは、合わないと思う
ふむ……では、ジャミラはなぜ、君をここに送ってきた?彼女は本当に、君にただの剣として存在して欲しいと思っているのかな
……!
……さて、
残念ながら、君の転属申請は、セリカがどこかのキャビネットに放り込んで、行方知れずになってしまったんだ
何日か経ってセリカが見つけ出せば、処理が進むかもしれない
それでは、失礼するよ
…………