浄化塔の内部は予想よりも綺麗に整理されていた。異合生物や機械の残骸もなく、不気味な植物も存在しない
保全エリアを奪還したあと、執行部隊の隊員によって浄化塔は徹底的に検査されていた。塔内にパニシングの信号がないことを確認して、ようやくホルスターから手を離した
リフトに乗って浄化塔の中央部分へ行き、制御室に入った。カレニーナはすぐに仕事のスイッチが入り、巨大な制御パネルの前で浄化塔の運転状況を確認し始めた
浄化フィルターの状態……正常、メインエネルギーシステムとの接続も異常なし……
制御室の窓ガラスから見えるのは、他の浄化塔と同じ景色だ。ドーム状の天井から太陽の光が降り注ぎ、塔の内部を照らしている。遮るものは何もなく、浄化塔は明るく広かった
眉間に皺が寄ってるぜ
エネルギーシステムをチェックしているカレニーナが振り向いて、こちらを見た
グレイレイヴン指揮官、お前は相変わらずちぐはぐだな
カレニーナは頭をひねって作業を続けながら話した。その口調に非難や皮肉は感じられない。40号浄化塔で起きた出来事をよく知っているからだろう
……その選択でたとえ自分の命を落としても、か?
カレニーナは突然動きを止めて、こちらにくるりと振り向いた
自分の決断を疑うことはねーのかよ?
いつも、自分の決断が正しいか、どうやって判断してる?
ピピピピ——
答えようとして中断されたのは、端末から発信された警告音のせいだった
警告です。セクターCの分離機配列に異常があります。ただちに直行してください
見つかった……やっぱりここが問題だったんだな
すぐに降りるぞ!
分離機配列は地下の深部に設置されているので、高い識別レベルを持つ別のリフトを使う必要がある
ゆっくり降下するリフトの中で、規則的に鉄を叩くような音が聞こえてきた。小さく鋭い摩擦音が混ざっている。その音は徐々にはっきりと周囲に鳴り響くようになった
ちょっと待てよ……これって……
言い終えると同時に、リフトはふたりの予想通り、故障警報を響かせた。次の瞬間、体が覚えのある浮遊感に包まれた
頭上で鉄が割れるような音がした。カレニーナはすぐにリフトの制御パネルに飛びついて、非常ブレーキのレバーを引いた
衝撃に備えろッ!