Story Reader / Affection / カレニーナ·輝暁·その1 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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カレニーナ·輝暁·その5

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緊急ブレーキが作動し、リフトが宙ぶらりんの状態で止まった。ふたりはとりあえず隅に座り込んだ

幸いなことに、通信に問題はない。責任者に具体的な状況を伝えると、すぐに応援を派遣してくれるとのことだった

救援が来るのを待つ以外にすることがない。カレニーナは電子モニターで浄化塔の設計図を見ながら、ひとりごとを言っている。故障の原因を調べているようだ

【規制音】、なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ?

構造体であっても、カレニーナのように負荷のかかる高度な作業を続ければ、意識海がオーバーロードする恐れもある。それに彼女は休眠カプセルを保全エリアの子供に譲っていた

お前もあの悲惨な人たちを見ただろ?

やっとパニシングの災難から逃れて、赤潮と異合生物から生き延びたのに、再建作業は遅れてるわ、物資は届かないわで、まだ今も命の危険に晒されてる

いくら侵蝕体を殺しても、敵を殺してもな

カレニーナは歯を食いしばりながら、拳で脇にある手すりをゴツンと殴りつけた

何度も何度も助けてるのに……誰かが死んでいくのを止められねえんだよ!どうやったら、それを受け入れられるっていうんだッ!

……オレにできることは、できる限り再建のスピードを早めること、皆に安心できる居場所を与えることだけなんだ

……立ち止まってる……時間なんかねーよ

彼女は両腕で膝を抱え、頭をうずめた。声が少しずつ弱々しくなっている

それは、オレが弱いからだ……

戦うにしても、研究にしても……オレはいつだって一番効果的な方法を選んでるつもりだ。オレの判断は間違ってない!オレたちにとって、1分1秒が貴重なんだよ

オレの行動が常に危険と隣合わせだってこともよくわかってる。だからいつもひとりでやってきた。もし判断を間違えても、その割を食うのはオレひとりで済む

でも、今はそうじゃない……背負うものが大きすぎる……オレの決断から生まれる結果が、オレだけのものじゃなくなってる

オレの選択は正しいのか、皆を不幸にするんじゃないか、オレのせいで大切な誰かが傷つくんじゃないか、心配なんだよ

……ザマないぜ、こんな弱っちい考え……オレらしくねぇ

お前が?寝言は寝て言えよ……お前はもっと破天荒だろうが……

すぐ側にいる声が穏やかで優しかったからだろうか。カレニーナの声は小さなつぶやきになり、徐々に疲労感が彼女を包み込む

自分の判断は本当に正しいのか、自分のせいで大切な誰かが傷ついたりしないだろうか――

選択には必ず結果が伴う。しかし、カレニーナはそれから絶対に逃げたりしなかった

少し待ったがカレニーナから返事はなかった。突然、ふわふわとしたものが近づいてきて、肩に重みを感じた

顔を向けると、カレニーナの閉じた両目と軽く震えるまつ毛が目に入った。彼女は穏やかに呼吸し、休眠状態に入っていた

カレニーナの肩を少しこちらに引き寄せて、彼女が快適な姿勢になるように調整した

救援が到着するまで、このまま休ませてあげよう

どれほど時間が経ったかわからないまま、唐突に、通信端末から接続音が鳴った

エンジニア

カレニーナ隊長!指揮官!ご無事ですか?

うん……え?どうして……

完全に肩にもたれかかっていたことに気づくと、カレニーナはすぐさま休眠状態から覚醒し、ぱっと慌てて立ち上がった

通信端末の映像を指差した。工兵部隊の隊員がリフトの監視カメラを覗いている

お前か?

隊長、私のことを覚えてくださったのですか……

……そんなことはどうでもいいんだよ!どうなんだ?できるのか?

朝飯前です!お任せください!

ドールベア

……まさか、偉大なカレニーナ隊長が、自らをエレベーターの縦穴に閉じ込めるなんてね。

突然、通信から別の誰かの声が流れてきた

……なんでお前がいるんだよ?空中庭園にいるはずだろ?

思い違いかもしれないが、カレニーナはそう言いながら、どこか悔しそうに歯を食いしばっているようだ

あの……我々はこの保全エリアに到着したばかりなんです。副隊長と状況を共有中に責任者が走ってきて、隊長が浄化塔に閉じ込められている、救助してほしいと言われまして

副隊長も心配なさっていたので、通信を接続しておりまして……

ドールベア

心配じゃない、ただレアな醜態を見逃したくなかっただけ

ド!ル!ベ!

カレニーナが突然立ち上がると、頭上で垂れていた逆元装置もピンと勢いづいた。拳を強く握っており、通信でなければ相手の襟を掴んでいただろう。その行動でリフトが揺れ出す

ドールベア

元気そうで何よりね

でも、やっぱり休眠は十分にとることをオススメするわ。口をぽかんと開けてグレイレイヴン指揮官の肩に寄りかかって眠る様ったら、バカ丸出し

端末からいきなり通信終了を知らせる音が鳴った。そのため相手はカレニーナの怒鳴り声を聞かずに済んだことだろう

あははは……隊長、指揮官、これから手動で配線を接続します。ゲートに近づかないようにしてください

おふたりに怪我がなくてよかった……

浄化塔から出ると、責任者と保全エリアの住民が外に待っているのが見えた。皆、心配そうな表情を浮かべている

皆、心配して……ご無事で何よりでした

それならよかったです……

隊長、西側の拠点の問題が解決したので、すぐこちらに直行しました。空中庭園に申請した物資は明日到着します。再建チームは明日から作業を開始できます!

浄化塔が無事に再稼働したことも確認できました。およそ2時間後には、浄化塔は元の出力まで回復します

そうか。他の予備の分離機配列も調べておけ。セクターCの3号と6号の運行パラメータにちょっと問題がある……

なんだ?

わかってるよ!背後霊かよ、ずっと同じことをブツブツ言いやがって!

そうですよ、隊長。指揮官の仰る通りです。ここからは私たちにお任せください。無事に任務を完了させますから

……そうか。じゃあ、あとフィルターのメンテナンスも……

オレは……

……

お手上げだな……わかったよ

じゃあ、任せたぜ