Story Reader / Affection / ナナミ·芒星ノ跡·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ナナミ·芒星ノ跡·その5

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遠くから塔の鐘の音が聞こえてくる

想像の中でさえ、あなたはいつも無意識に世界を修正している……

神が自分に残した時間は少ない。つまり「宝物」を見つける時間も残り少ないということだ。この世界でナナミを覚えているのが自分だけだとしても、早く彼女を見つけないと

祝典の人混みの中を必死に探して、ついにこの世界で数少ない移動手段――バイクを見つけた

[player name]先輩?

バイクの持ち主がエンジンをかけようとしていた時、視線の端でこちらを捉えたのか嬉しそうに振り返った

ここの郵便配達員です。そんなことよりも、あなたがドラゴンを倒したのをこの目で見ました!あの巨大で凶暴で恐ろしい伝説のドラゴンを倒すなんて……信じられません!

彼はそう言いながら両手でドラゴンの形を作った。興奮のあまり声が震えている

「ナナミ」という人を探してるんですか?ちょうど配達で色んな場所に行くので、一緒に乗っていきますか?

手紙が届く場所には必ず受け取る人がいる。ある程度の規模の集落である可能性も高い……賑やかな場所が好きなナナミなら、人の集まる場所にいるかもしれない

どうされますか?

でこぼこした道路をバイクで駆け抜けていると、興奮した郵便配達員が話しかけてきた

何年もバイクで郵便配達をしていますが、自分を格好いいと思ったのは初めてです。まさか、後ろに大英雄を乗せているなんて!

ええ。ご存知の通り、以前は通信ネットワークがありましたが……人類の科学技術はドラゴンによって滅ぼされ、今の郵便配達はバイクライダーが担っています

彼は話しながら誇らしげにアクセルを回した

港です。ここからは船の方が早いですから

最後にナナミを見たのは出航している姿だ。もしかしたら、海で彼女を見つけられるかもしれない

つまり、そのナナミとやらが「答え」を探すために「騎士」を連れて出港したと?

船長は不思議そうに目を見開いた。「勇者」の口から、意味不明な話が出てきたことに混乱しているようだ

それはおかしな話だな。答えなんて知らないが……この世界に大陸はひとつしかいない。ドラゴンの襲来以降、海を航行する船は俺のしかない

彼は困ったように肩をすくめたが、それでもナナミを探すのを引き受けてくれた。こうして船はほぼ全ての航路を進んでいった

しかし、海はまるで青い砂漠のようで、うねる波以外に何の手がかりもなかった……

再び陸地に上がったバイクは、自分を乗せて山と谷を越え、かつてドラゴンに破壊された城郭にたどり着いた

先輩がドラゴンを退治したあと、一部の住民がかつての故郷に戻ってきたんです

人々は勇者の到来にまず驚き、次に困惑した表情を浮かべ、そして涙を浮かべながら固い握手をして「ナナミという女の子」を必ず見つけると誓った

ドアをノックして挨拶し、ナナミのことを訊ね、別れを告げてドアを閉める。郵便配達員と家々を回り、同じ行動を繰り返した

しかし、ナナミに関する情報は何も得られなかった

大丈夫です、先輩!次の場所へ行きましょう!

再びバイクで出発し、いくつかの集落に立ち寄ったが、やはり誰もナナミのことを知らなかった

黄ばんだ地図を頼りに、郵便配達員と黄金に輝く華やかな都市に到着した

ここは機械体が築き上げた街です。その機械体は、かつて人類と一緒にドラゴンと戦い、人類を守る「騎士」と呼ばれていました

結局、人間の創造物ですから……人間に忠実というより、人間に対して善意を持っています

覚えてる限りはないですね。機械体と人間はとても仲がよく、私にもスナイパーライフルみたいなロボットの友達がいますよ

お客様です!お客様がいらっしゃいました!

郵便配達員と話していると、可愛らしいロボットが近付いてきた

ようこそ、ラブハートコミュニティへ。ここは人間のために作られた心温まるコミュニティです。あなたがたは観光しにいらしたのですか?

機械体は困惑して首を傾げた

素敵なお名前ですね。ですが、データベースを検索した結果……現在ここにいるたくさんの人間の中に「ナナミ」という名前の記録はありません

次に、バイクはエンジンの轟音を響かせて廃墟の都市にやってきた

ドラゴンに襲われる前は、ここが私の家でした

郵便配達員は黙ったまま、空っぽの家の中を案内した。時折立ち止まって、懐かしそうに破れた日記帳や写真を見ては、それらを全てバイクの後部にあるボックスに詰め込んだ

行きましょう、先輩……ここにはもう誰もいません

山、森、城、雪原……太陽が西へと沈み、郵便配達員と世界中を探し回ったが……

それでもいない。どこにもいない

夜が訪れても、終末の廃土には灯りがない。果てしない闇を照らすのは瑠璃色の星空だけ

星がキラキラと瞬き、まるでこちらにウインクしているようだ。すると突然、ナナミに言われた言葉を思い出した……

「指揮官がどこに行っても、星はいつも空から指揮官が進む道を照らしてるよ」

疲れがピークに達したのか、視界を埋め尽くす星々がふたつの形を作っているように見えた。ひとつはピストル、もうひとつは卵のような……

星が散らばり、また新たな形を作り出した――

可愛いおどけた顔だ。髪をひとつに結び、両目には十字の星が輝いている……

星が散らばり、また新たな形を作り出した――

片手でピースをしている笑顔だ。髪をひとつに結び、両目には十字の星が輝いている……

信じられずに何度も瞬きすると、まるで自分を揶揄うかのように星空は元の姿に戻った

え!?何か言いましたか?風の音がうるさくて聞こえません!

え!?誰が……どこに!?

自分の言ったことは人間の理解の範疇を超えており、郵便配達員の頭は疑問でいっぱいのようだ

ナナミは空にいる。彼女は宇宙に「答え」を探しに行ったのだ。地上にも海の上にもナナミの姿がないのなら、残る選択肢は宇宙しかない

今日の星空は綺麗ですね!

晴れ渡った夜空の下、自分を後ろに乗せてバイクを走らせながら、郵便配達員は嬉しそうに大声で叫んだ

しかし、ナナミが空にいるとわかったところで、どうすればいいのだろう?科学技術が失われたこの終末で、空に飛ぶどころか通信さえも確保できない

それにしても、今日の仕事は楽でしたね!今後数日分の手紙も一緒に配達できましたし!

先輩のお陰で、いつもよりバイクのスピードが上がったからですね!

バイクのスピードが……いつもより上がった?

思い返すと、自分と郵便配達員は正午に出発して、広大な海を巡り、バイクで山を越え、数えきれないほどの集落に立ち寄り、人けのない荒野も探し回った……

……1日で、世界の隅々まで探し回ったということだろうか?

メーターがどうかしましたか!?

郵便配達員はわけがわからないという顔をした。目盛りが刻まれたメーターには針がない

このバイクはメーターを超えたスピードで走り、目の前の景色はほとんど一塊となって見えた。しかし、この世界の構成が、その奇妙な光景を当然のこととして受け入れさせていた

もし、これが神が自分とナナミのために作った物語の世界なら、一般的な物理法則に縛られる必要はない

ナナミも、指揮官と一緒に覚えてる

1位の賞品はこれだけ?じゃないよね?だよね?

ナナミ

指揮官!!ダメ!!!

この世界はナナミの願いに応じて変化する。ナナミの願いに応えるのであれば、自分の願いにも応えるはず

先ほど自分が望んだのはナナミを見つけることだった。だから、バイクは非現実的なスピードで世界中を走り回った

それなら次は……

必死に星空を脳裏に焼きつけ、宇宙へ飛ぶ姿を思い描く……

必死にナナミの姿を思い浮かべ、宇宙で彼女を探している場面を思い描く……

しかし目を開けると、体は郵便配達員のバイクに跨ったままだった

そうじゃない……「媒介」が欠けている。この世界を走り回るためにバイクが必要ならば、星空へ行くのに必要なのは?

バイクに乗ってるナナミって、伝説の宇宙騎士みたいじゃない?

先輩もご存知なんですか?宇宙へ飛び出し、究極の答えを探し求める伝説のスーパーヒーロー!

世界でたったひとつの宝物――あなたの宇宙騎士ベルトは、このボックスに入っていますよ!

バイクのボックスから取り出した宇宙騎士ベルトは、微かな光を放っている……

星空に最も近い場所といえば天航都市ですね

耳をつんざくようなタイヤの音とともに、バイクは天航都市と呼ばれる場所で止まった

郵便配達員の案内で、高い塔のような建物に向かった。最上階へのエレベーターは動いておらず、自力で登るしかなかった

ハァ……ハァ……

頂上に着いた時、郵便配達員は肩で息をしていた。目の前に現れたのは、空に向かってどこまでも伸びる壮大な軌道だった

街を見下ろすと、ほとんどの建物が風化して錆びつき、街の通りには残り火のように揺れる灯りが点々としている

この街が世界で最も空に近い都市、天航都市です。そしてここは……

彼は自分たちが立っている場所を指差した

天航都市の中で最も空に近い場所――「天国の橋」です。機械体が築き上げた宇宙船加速軌道で、天国のように美しい星空へ繋がっています

ですがドラゴンの襲撃で、飛行できるものは何も残っていません。全て壊されてしまいました

宇宙船もないし、軌道と呼べるものはもうありません。今やただの展望台です

ここに来て何を?

……あの女の子は天航都市にいるんですか?

宇宙に行くんですか!?

彼は驚きのあまり数歩後ずさった。完全武装したマスクの下の表情は見えないが、さぞかし面白い表情をしているのだろう

しばらくして、彼は大きなため息をついた

なぜナナミが宇宙にいるとわかるのか、飛行機なしにどう行くのか、宇宙での呼吸はどうするのか、ナナミはどの惑星にいるのか、どのように探して戻るのか――

……訊きたいことが山のようにあります

口に出したのは、その言葉だけだった

……正直に言うと、先輩はおかしくなってるんじゃないかって思うこともありました

でも、こんな無茶に付き合ったのは……先輩なら奇跡を起こせるんじゃないかと少し期待したからです

ナナミという女の子も、きっと奇跡を待ってるんでしょうね

そうですか……さすがは先輩です。ナナミという女の子は、あなたの大切な人なんでしょう?

この世界の誰もが「ナナミ」の存在を知らなくても、この世界で彼女を見つけられなくても、先輩は奇跡を起こすべく前に進み続ける

彼女もきっと、その奇跡を待ってるんでしょうね

宇宙騎士ベルトが入っている金属製のスーツケースを取り出し、ロックを解除した。銀色の「ミニ発射装置」は星の光を受けて輝き、宇宙船模型が静かに点火の瞬間を待っている

それを腰に近付けた瞬間、発射装置の両側からシュッという音とともに伸縮性のあるベルトが伸び、しっかりと自分に固定された

IGNITION SEQUENCE START

ベルトが重い金属音を響かせ、中央から眩い光を放ち始めた。完全武装した郵便配達員は姿勢を正して、こちらに敬礼した

10

先輩、どうかご無事で

9

両側からモーターの回転音が聞こえ、ベルトがそれに合わせて何度も光った。この磁気浮上式加速軌道は、自動的にベルトにエネルギーをチャージしているようだ

8

街の灯りがひとつひとつ消えていき、天航都市のエネルギーは外から内へと天国の橋に流れ、更に腰のミニ発射装置へと注ぎ込まれた

7

全ての光が消え、夜空の下の世界は暗闇に包まれた……ナナミを見つけるのは、具体的にどうすればいいのだろう?

6

指揮官がどこにいても、ナナミは駆けつけるよ!

5

4

チャージが完了し、腰に巻いたベルトのライトがカウントダウンとともに次々と光り始め、自分の体が天と地の間で唯一の光となった

3

2

天国の橋が徐々に上に傾き、空の上へとまっすぐに伸びていく

1

0

足下から凄まじい推進力が噴出する。まるで発射準備をする宇宙船のようだ。その力に押されて空へ飛び出し、天国の橋の向こうへ全力疾走する――

ALL ENGINES RUNNING

宇宙船模型をベルトの発射装置に押し込むと金属トリガーが噛み合い、純白の光が体を覆う光子回路に沿って胸元から噴き出した――

宇宙船模型をベルトの発射装置に押し込むと金属トリガーが噛み合い、純白の光が体を覆う光子回路に沿って胸元から噴き出した――

金属トリガーが噛み合い、純白の光が体を覆う光子回路に沿って胸元から噴き出した――

LIFT OFF

白い装甲が全身を覆った。目の前のガラスが宇宙船の前面窓の役割をし、右下に飛行速度を表示している

郵便配達員の驚きに満ちた視線の中で、自分の体から長い加速軌道が作られ、虹のような色とりどりの弧を描いて空に向かって飛んでいく

濃い雲を突き破り、太陽のように眩しい光を放ち、暗く広大な大地を照らし出す

7.9km/s……11.2km/s……16.7km/s――窓に表示された数字がどんどん上がっていく

地球と太陽の束縛を振り切って果てしない銀河へ飛び出し、忘れ去られた少女を探すのだ