Story Reader / Affection / ナナミ·芒星ノ跡·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ナナミ·芒星ノ跡·その2

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第1001章

蝉の声と風がそよぐ夏

騒がしい蝉の声が聞こえる。徐々に体に感覚が戻り、ゆっくりと目を開けた

指揮官。これ、いくつかわかる?

灰色の髪の少女が目の前で両手を振り、手でピストルと円を作った。彼女の指の隙間から陽光が漏れ、ゆらゆらと自分の顔に降り注ぐ

蝉の声が大きすぎるせいか、それとも日差しが強すぎるせいか……何かを忘れている気がする

ブッブーッ!73でした!指揮官、まだ寝ぼけてるんだね

蝉の声が大きすぎるせいか、それとも日差しが強すぎるせいか……何かを忘れている気がする

ブッブーッ!73でした!指揮官、まだ寝ぼけてるんだね

蝉の声が大きすぎるせいか、それとも日差しが強すぎるせいか……何かを忘れている気がする

せいかーい!目が覚めたみたいだね!

何も思い出せないが、目の前にいる少女の名前がナナミであることは知っている

少し体を動かしてみると、背中にチクチクと刺すような痛みが走った。夏は草が最も成長する季節――つまり、最も刺さる季節だ

ここは世界の終末!世界の終·わ·り·だよっ!

目の前の光景にデジャヴを感じるとともに、妙な違和感を覚えた

遥か遠いどこかで、あるいはとても遠い過去に、誰かに同じことを言われたような……

しかし、記憶が極めておぼろげだ

ここは鳥のさえずりと花の香りに満ち、生命の煌めきに溢れている。陽光さえも魂を持って踊っているかのようだ

もしこれがいわゆる「終末」であるなら、荒れ果てた廃墟より明らかに華やかだ

指揮官とナナミは、今から一緒に宝物探しの旅に出るんだよ!

カード騎士の宇宙ベルト!

さぁ、ナナミと一緒にレッツゴー!

ナナミと街の通りに出た。壮麗で美しい建物が並び、太陽光はクリスタルのように輝く建物に反射し、華麗で贅沢な光景を描き出している

蝉が絶え間なく鳴き続ける。しかし、街から聞こえてくるのは沈黙だけだ

だーれーかーいーまーせーんーかー!

「世界の終末」の街では、その問いへの返答がなくて当たり前だ。しかし――

電子アナウンス

宇宙騎士アーケード版v1.0が正式リリース!宇宙騎士を操作して宇宙を旅し、文明を救う答えを見つけよう!

電子アナウンス

クリアしたプレイヤーには宇宙騎士ベルトが当たるチャンスも!お見逃しなく!

音声認識の放送装置がナナミの叫び声に反応したようだ。振り返った彼女の瞳はキラキラと輝き、今にも駆け出していきそうだ

宝物だ!任務目標、出現!

とっさにツッコミを入れるとナナミは微笑み、こちらの手を引っ張って電子音がする方へと走り出した

その返事を聞いた少女は、何も言わずにこちらの手を引っ張って電子音がする方へと走り出した

電子アナウンス

まもなくゲームがスタートします。プレイヤーのおふたりは没入型シミュレーションヘルメットを着用してください

ナナミもよく知らないけど『宇宙騎士』はふたり用のゲームみたいだよ

ナナミはモニターに映っているふたつのプレイヤーアイコンを指差し、期待に満ちた瞳でこちらを見つめている

やったぁ!

ナナミとともにヘルメットを被ると、目の前の光景が一瞬で変わり、果てしない宇宙に移動した

これはふたり用の宇宙冒険VRゲームで、プレイヤーは宇宙を旅するリアルな感覚を体験できる。壮大で美しい宇宙の景色を一望できるのは当然のこと……

わぁ、もうあんなに小さい……ナナミ、すっごく遠いところまでプカプカしちゃってるんだね

浮遊しているナナミが振り返った先には、徐々に小さくなっていく地球があった

『宇宙騎士』で体験できるのは、宇宙の美しい景色だけではない。宇宙空間特有の暗闇と無重力も体験できる

ただ、この宇宙空間をひとりで遊泳する大きな孤独に耐えられる人は少ないだろう。もしかしたら、これが『宇宙騎士』がふたりプレイである理由かもしれない

よかった!指揮官がそばにいて

少女は満面の笑みを浮かべてこちらの手を掴み、ぐいっと引き寄せた

文明を救う答えを探す旅とは、仮想の宇宙空間を飛び回り、キラキラと輝く星のような光の点を集めることだ

宇宙騎士は英雄主義的な言葉に聞こえるが、ゲーム自体はのんびりした宇宙旅行のようなもの

果てしない星の川を漂流する中で「答え」と呼べるような星の光は数えるほどしかない

多くの時間はただ目的もなく進み続けるだけだ

どのくらい漂っていたのかわからないが、突然握られていた手が離れ、暗闇に包まれた

一点の光もなく、この世界に自分ひとりだけが取り残された

指揮官!ナナミはここだよ、ここにいるよ!

耳に伝わってきた声は聞き取れないほど小さいが、それでもその一点の光をしっかりと掴んだ

宇宙はゆっくりとしたリズムで、道に迷った騎士を夢の中に引きずり込む

空間が激しく揺れ動いた――

指揮官!!!

高い場所から墜落する感覚に襲われ、思わずヒュッと息を呑んだ

こちらが目を覚ましたことに気付くと、少女は揺さぶるのをやめた

握った手から温もりと優しさが伝わってくる。少女は一瞬驚いたようだったが、すぐに笑顔で手を握り返してきた。無重力感はゆっくりと消えていった

ヘルメットが壊れてたのかな?もうクリアしたのに、指揮官ってば全然ヘルメットを取らないから、まだゲームしたいのかと思っちゃった!

そう言いながら、彼女は心配そうにこちらの額をなでた

窓の外では蝉の声が絶え間なく響いている。空虚な街を見ると、宇宙で漂っていた時の孤独が再び湧き上がってきた

せっかく『宇宙騎士』のプロローグをクリアしたのに……ふたりの宇宙騎士は世界を救えたのかな……

色褪せた世界の中で、ナナミだけが鮮やかな色を放っている

少女の無邪気な顔を直視することができず、視線を窓の外に移した

簡単だよ!まず、ナナミがヘルメットのプロセッサーにリンクして、パノラマ映像生成中枢が生成したデータストリームに潜り込んでアナライズして……

小難しい話をしていることに気付いたのか、ナナミは恥ずかしそうに頭を掻いた

……後は、真っ暗な宇宙でキラキラ光る指揮官を見つけるだけ!

でも、ここでは1分しか経ってないから

「ここ」は1分しか経っていないとしても、データストリームの中での体感時間は遥かに長かっただろう……と深く考える前に、意識が現実に引き戻された

とにかく、指揮官がどこにいてもナナミは駆けつけるよ!

少女はふふんと得意げに笑いながら、手でピースサインを作り、愛らしくウインクした

電子アナウンス

ワールドランキング1位を獲得しました!おめでとうございます!カウンターにて賞品をお受け取りください!

やったぁ!!指揮官、宝物をもらいに行こっ!

しかし――

表示された「ワールド」ランキングには、自分とナナミの名前しかなかった

ゲーム機のお姉ちゃん、どういうこと!?なんでランキングにナナミと指揮官の名前しかないの!?

電子アナウンス

ワールドランキング1位を獲得しました!おめでとうございます!カウンターにて賞品をお受け取りください!

自動応答はナナミの質問に回答できず、あらかじめプログラムされた返事を機械的に繰り返すだけだった

他に誰もプレイしてないってことはないでしょ?βテストだってあったはずなのに!

電子アナウンス

ワールドランキング1位を獲得しました!おめでとうございます!カウンターにて賞品をお受け取りください!

モニターに映し出されたランキングには、最上位の1行だけにぽつんと自分とナナミの名前が並んでおり、IDは000000001だった

広いゲームセンターには絶え間なく繰り返される電子アナウンスと、いつまでも続く蝉の声だけが響いている

こんなに賑やかな世界なのに、自分とナナミ以外に誰とも交流できない

ねぇ、ゲーム機のお姉ちゃん……みんな、どこに行っちゃったの?

1位の賞品はこれだけ?じゃないよね?だよね?

第1071章 真夏の隠れんぼ

またしても奇妙な感覚が襲ってきた。軽い耳鳴りがする。それからまた、うるさい蝉の声――隣にいるナナミはしつこく何度も質問していた

ゲーム機のお姉ちゃん、本当に1位の賞品はこれだけなの?

真夏の太陽が眩しくて目に焼きつくようだ。陽光の下でナナミの体もキラキラと輝き、少し透けて見えるような気がした

電子アナウンス

……

電子アナウンス

大変申し訳ございません。本日、ショッピングモールは休館日でございます。スタッフに出勤指示を出しましたので、しばらくお待ちください

およそ10秒後、ショッピングモールのサービスロボットが次々と現れ、自分とナナミの周りに集まってきた

お客様、宇宙騎士をクリアされたのですか!?初めて見ました!

他にも面白いゲームがたくさんございますので、どうぞお楽しみください!

追加の賞品はこちらに――

なーんだっ!みんな、ナナミと隠れんぼしてたんだ!

街全体が徐々に賑やかになってきた。自由に行き交うフライングカー、あちこちに浮かぶバーチャル窓、そして道路を埋め尽くすロボット――まるで先進的な都市のようだ

蝉の声は喧騒に掻き消されていった。ナナミは楽しい雰囲気に引き寄せられ、ゲームに夢中になっている

こんにちは

青白い顔の青年は帽子を取ると、こちらに軽く会釈をした

青年は静かに微笑み、その突飛なニックネームを気にする様子はなかった

青年は微笑んだ

美しい世界だと思いませんか?

黄金に輝く陽光、限りなく繁栄する都市、科学技術が発達したスマートな世界……

確かに素晴らしい世界です。しかし……

鋭いですね

とある大災害の後、この星の住人であった「人類」と呼ばれる生物は絶滅しました

その災害には英雄がおらず、彼らは全滅の結末を受け入れるしかありませんでした

機械は彼らの創造物として生き残りましたが、それもごく一部だけです

私たちは人類がかつて<phonetic=黄金時代>最も輝いた時代</phonetic>を再現しました。しかし、それも意味のないこと……彼らを蘇らせることはできませんから

あなたとナナミという名の少女は、私たちがお迎えした最も特別な存在です。お会いできて光栄です

そよ風が蒸し暑い空気を運んできた。青年は隣で遊んでいる灰色の髪の少女を見て、再びこちらに視線を向けた

残念ながら

彼は簡潔に答えた

「そうじゃない」

理由はわからないが、心の声が自分に叫んでいた

おぼろげな記憶の中に、彼の答えとは相容れない結論が隠されているようだ

もし自分が何かできれば……

そうかもしれませんね

青年は肯定も否定もしなかった

ですが、あまり「色褪せていない」終末は、想像を絶する重みを伴うかもしれません

……

ただの推測なのでお気になさらず。それよりも、宇宙騎士の賞品は少し離れた場所にご用意しています。お客様にはご足労をおかけすることになりますが

ゲームセンターを後にして、ナナミと街を散歩した。ナナミは「宝物」の宇宙騎士ベルトを嬉しそうに抱えている

終末の中で草木が芽吹き、万物が蘇り、知性ある機械体が終末以前よりも輝かしい人類文明を再現した

都会の夜空は晴れ渡っている。ネオンの光が入り乱れて輝き、眩しい光が空のキャンバスを埋め尽くし、星は見えなかった

この繁栄は自分のものじゃない……

ナナミにもわかんない

彼女は小さな声で答えた。そしてしばらく考えてから、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら目の前に回り込んできた

指揮官、今どんな表情してるか知ってる?ゴーヤより苦~い感じ!

少女は眉をひそめてこちらの表情を真似て、軽やかに笑った

彼らが世界を救ったかどうか、ナナミは知らない。ナナミにわかるのは……

指揮官のゴーヤ顔を救わなきゃってこと!

彼女の両手で頬を持ち上げられ、無理やり笑顔を作らされる

指揮官が心の底から笑顔になれる世界がきっとあるから

だって、ナナミ……

時間の流れが徐々に緩やかになった。少女の唇が微かに動いたが、その声は都会の喧騒に掻き消されていった

ネオンの光が眩しく輝き、彼女の姿がだんだん霞んでいく……