指揮官、ここにいらしたんですね。……良かった
廊下を歩いている指揮官に、ルシアが駆け寄る
指揮官、その……この間は突然申し訳ありませんでした
ありがとうございます……
機体が突然、不具合を起こしたんです……
その、指揮官の手に触れたら……なぜか鼓動が加速してしまって。……いえ、鼓動という言葉は適切ではないのかもしれませんが……
とにかく、意識海に突然、整合化できない波動が現れて……
同じ波動が以前の機体のデータにも存在していましたが、ずっと無視されていたようです……
こんなにも激しい波動だったなんて……。そもそも私、どうしてあの時「手を繋ぎたい」なんて言ったんでしょうか
以前の私は、指揮官にそんなこと言わなかったはずですよね?
え、ほ……本当ですか?ですが、どうやっても関連記録が見つかりません。指揮官……私をからかっているわけではありませんよね?
そうですよね……記憶の再編の際に生じたエラーか何かでしょうか……
正直なところ、過去の自分に適応しようとするほど違和感を感じてしまって……それでおかしな行動を取ってしまうのです
指揮官と手を繋いだこともそうですが、カレニーナにも……
その時も同じような状況でした。自主訓練を終え、機体のメンテナンスに向かおうとしていたのですが……
ルシア、もう逃がさねえぞ!今日こそ決着をつけてやる!
絶対勝ってやるからな!
ええ、構いませんよ
チッ、やっぱり逃げる気かよ!だが、そうは……ハ?今なんつった?
え?
カレニーナの要望に真摯に応じたつもりだったのに、カレニーナは少しの間黙って私を見つめていたかと思うと、怒ってどこかへ行ってしまったんです……
やはり、以前のように拒絶するべきだったんでしょうか?
そうなんですね……やはり私、皆のことを理解できていないんですね
思うままに、ですか……。指揮官はいつも無理難題を仰る……
つまり、指揮官以外のデータについても、時間をかけて理解する必要があるということ……
指揮官の周りは優秀な人ばかりだし……早く元の私に戻らなくちゃ、指揮官はきっと去ってしまう……
ルシアは不安げな表情を浮かべ、ブツブツと呟いている
……ええ、そうですよね……私はなぜ、こんなにも不安になるんでしょう?おかしいです……