……全テヲ、大変化ヲ起コシ、父、起コス
機械体とは思えない機敏さで、エンブラは暗闇の中を駆け抜けていった
途中の路上の穴も楽々と飛び越え、触発された地雷が後ろで爆発した
「真実の狭間」、到達デキレバ……
サフィーン学派制定による第3規則:Naraka-Loop協議により、「真実の狭間」内に異物を感知
耐荷重構造に対する爆破を開始
規則により「異物」に対し、最終裁定者――「マキャヴェッリ」を起動
異物……エンブラのことでしょうね
最終裁定者……エンブラに何をする気なんでしょうか?
……エンブラの機体には戦闘に参加した痕跡がありません
つまり、エンブラは戦争の勝利者ではない、と認識される……
機械体たちが「参加しない者」に対してとる処置は……
……急がなくては
エンブラが破壊される前に、その居場所に行く方法を探さないと
ええ、警報の「真実の狭間」に侵入した異物とは、エンブラのことでしょうから
「真実の狭間」が何かはわかりませんが……今は前に進むしかありません
学派記録――演説
……人々の命がこんな無意味な戦争で尽きるのを見たくはない
皆は人類の模倣因子を残す種であり土壌だ……そのひとつが消えただけでも、私にとっては胸が痛む
だから、代わりに機械に勝負をさせよう。心ない暴徒たちに、人類の未来のため、最後の血の一滴までを流してもらうのだ
勝った者が復活し再び大地を踏みしめる時……落伍者のことも思い出して欲しい。それが私の唯一の望みだ
……勝者だろうが、敗者であろうが、両者は学派にとってなくてはならないものなのだ
人類の文明は、模倣因子を継続するからこそ存続する。そうしなければ我々は永遠に野山に暮らし、生き物の血をすする原始人から進化できなかっただろう
……ここにいる皆が勝者になろうが、敗者になろうが、これだけは忘れないで欲しい
(少数ながら熱烈な拍手がスピーカーから流れる……)