鉱坑の深奥
鉱坑の深奥
アシュリンは服の裾をぐっと掴み、指揮官とともに歩いていた。蛇行する鉱坑は地震による崩落であちこち地形が変わっており、入った時に残した目印も見つけにくくなっている
残された目印をたどり、一時的な安全区域を見つけると、指揮官は端末を操作するために座り込んだ
これは……何?
短い道のりの間に、女の子はもう人間を怖がらなくなっていた。好奇心を露わにして、隣から覗き込み、人間の手の動きを見ようとしている
連絡……
へぇ……
彼女はわかったようなわからないような様子で覗き込んだ
じゃああなたはそれで、リーフに、連絡する?
うー……信号?
彼女はトトトとその辺りを走り、上に向かってそれっぽく両手を振った
信号をちょうだい!
そう言うやいなや、パニシング濃度が急激に上昇した
身を翻してギリギリで女の子を連れ戻した瞬間、異合生物が1体、分かれ道の反対側から飛びかかってきた――
!!!
子供は目をみはり、呆然としている
鉱坑に銃声が鈍く響く。異合生物の爪が顔の横を掠め、ひと筋の血の跡を残した
なぜだ、ここに異合生物が現れるはずは――
まだ途中だった通信に構う余裕もなく、子供を抱きかかえ、まだ探索していない別の通路へと走り込んだ
走っている途中、通信が意外にも繋がった
……指揮官!?
ホワイトノイズは相変わらず激しいが、リーフの声が端末から聞こえ、かろうじて何を言っているのかがわかった
指揮官……!今……どこに……いらっしゃるんです……?
異合……生物……?
端末には、リーフの後ろにぼんやりと立つ女性が映っている……その人物はモリノア?どうしてここにいるのだろう?
位置……共有……して……
リーフは必死に呼びかけている
子供を抱えて銃で異合生物を撃退しつつ、端末で位置を同期するのは、どうしても無理がある
リーフはこのメッセージを受け取れていないようで、端末に近付き、何とか声を聞きとろうとしていた
異合生物を一時的に撃退し、周囲の環境はひとまず安全になった
指揮官……お怪我は?
リーフの焦りが画面越しに溢れ出しそうなほどだった
……指揮官……ご心配なく……
…………
すぐに合流しま――
通信が突然途切れ、同時に異合生物が飛びかかってきた――
切れた通信に構う余裕はなく、指揮官は拳銃を抜き、身を翻して敵に立ち向かった
湿った空気が充満する中、リーフとモリノアは鉱坑の奥へと手探りで進んでいた
……危ない!
地面は何度も振動し、リーフが素早くモリノアを引き寄せた途端、尖った岩が彼女のすぐ近くに落下した
!
あ、ありがとう……
モリノアはショックから立ち直れないままリーフの後に続いた
鉱坑はいまだに揺れ続けている。リーフは震源を特定しようとしたが、正確なデータは得られなかった
まだ揺れていますね……恐らく応力集中による誘発地震です
だ、だったらどうすればいいんです?アシュリンはまだ中にいるのに……
誘発地震の震源は比較的浅いので、大きな揺れは起きないはずです……先へ進みましょう
彼女は、一瞬光っただけの指揮官の位置を見て、だいたいの方向を把握していた
この先で右に曲がって、
リーフは唇を噛み締め、更に足を速めた
3つ目の分かれ道を回り込むと、指揮官たちが滞在していた可能性のある、最初の安全区域が現れた……
リ、リーフさん!あっちに……何かが!
戦闘的直感が視覚モジュールより先に異合生物の気配を察知し、リーフは素早く鏡輪を構え、よじ登ってきた異合生物を斬り裂いた
なぜ……ここに異合生物が現れるはずはないのに
