暴雨が降り続いていた
機体機能を極限に稼働させたことで、ビアンカは周囲にうっすらと白光を放っている。彼女の至るところで、赤潮が徐々に消滅していった
さようなら、セン
ひとつひとつの別れの言葉は、死へと近付く弔いの鐘音のようなものだ
「逆転」装置が星のような光を放つと、最後の悲鳴とともに、巨大な怪物は暴雨の中で絶命した
セン……
昔から、あなたはいつもそう
不愛想で、口では「粛清部隊はただ空中庭園の刃物にすぎない」と言っておきながら、いつだって十分な調査の時間を空けてくれていた
まったく気にしていないように見せながら、いつだって最も危険な任務を引き受けていた
今度だって……同じようにしたのですね?
ビアンカは巨大な怪物の隣で片膝を地につきながら、怪物のまだ閉じられていない目をじっと見つめていた
最後の最後まで、私たちを守ろうとした
はい、彼女はずっと赤潮の中のパニシングと、海の底で誕生した異合生物を呑み込んでいました……
命尽きるまで
……いいえ、彼女自身の選択です
ビアンカは小さくため息をつき、立ち上がって「逆転」装置を最大出力にした
「逆転」装置の働きで、怪物の巨大な体が徐々に無数のパニシングへと化し、空気に溶けるようにして消えていった
さようなら、セン
彼女は「命」の出自を選べなかった。だが、「死」の帰路を選ぶことはできた
パニシングがだんだん分解されていくにつれて、1枚の光沢のある欠片が、センの残りの躯体からぽろりとこぼれ落ちた
これは……
……フォン·ネガットの言葉を信じないこと、センを殺して、異重合の欠片を持っていって
少女の顔が、少しずつ死んだ「怪物」と一体化していく
……私が誰なのか知る必要はないし、重要じゃない
彼女はここを去りながら……一体何を思っているんだろう
暴雨は波を打ち砕き、祭壇を呑み込んだ
……異重合の欠片?
ビアンカは少し困惑していたが、反応する間もなく、パニシングをまとった光沢のある欠片が補機に呑み込まれた
はい
女性構造体が振り向くと、純白なウィンプルに焼けた跡があった
彼女はビアンカだが、もう元の「ビアンカ」ではない
彼女は他者に押しつけられたレッテルの束縛から解放され、彼女だけのシンボルに融合した
……行きましょう、指揮官