Story Reader / 本編シナリオ / 35 ビヨンド·ザ·シー / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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35-16 異重合の欠片

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海岸線

波しぶきが赤潮を巻き込み、唸るように音を立てながら押し寄せ、生臭い風が岸辺の瓦礫を吹き抜けていく

異合生物の咆哮が風の音をかき消し、海岸では全ての人が慌ただしく走り回っていた

まだかろうじて抑えてるが、問題は人手が足りてねーことだ!

難民や赤潮の天啓の10数人を加えても、海面西区のΩ武器の輸送をカバーできるだけだ。他を手伝う余裕は……

新たに支援に来たバロメッツ小隊は?それに帰還したルシア、そして着地支援のグレイレイヴンの他2名にも、何か仕事をさせればいい

バロメッツ小隊は東区に派遣されてる。東区の海岸線に突然大量の異合生物が出たんだ、あっという間にあそこの防衛線は突破された……

待って、あそこに……

海岸の端に煙が立ち込め、数台の輸送車が轟音を立てながら、この仮設テントに向かって駆けつけてきた

空中庭園のマークがない……誰!?

……私だ

輸送車からひとり、見覚えのある姿が飛び降りた

……オブリビオン?

事態は一部のオブリビオンのオアシスにも波及した。リーと状況を確認したあと、セリカに連絡を取った

オアシスに最先端の武器はないが、約100名ほどの支援なら可能だ……彼らをどこに向かわせる?

ワタナベはニコラが署名した共同作戦通知を提示して見せた

助かる、じゃあΩ武器を受け取って60名ほど東区の支援に向かわせてくれ。残りの40名は南区海域で待機だ

Ω武器は一時的に海面の異合生物を抑えてるが、数が多すぎるんだ……

カレニーナは心配そうに周囲を見渡した

海面に!あれはストライクホークと……

絶え間なくドローンを使って海面を探索していたドールベアが突然、頭を上げた――

粗末な木板が繋ぎ合わされて小舟になり、まるでモーゼが紅海を分けたかのように――

ビアンカがその小舟の前方に立っていた。輝くような白い光を発する陽昏の機体が、進む先々で海水の中の赤潮を次々と退けていく

指揮官とビアンカよ!

指揮官っ!

フン、[player name]の狼狽した姿が見れると思ったのに……残念だわ

ほぼ「戦死」と思われたグレイレイヴン指揮官とビアンカが再び姿を現し、キャンプ内には一瞬の歓声が上がったが、すぐにそれは消え去り、皆は再び絶え間ない戦闘に向かった

簡単に状況を共有したあと、一同は岸に上がった

……大体こんな感じです。我々は海洋博物館に潜入しましたが、結局何も得られず、ただ赤潮の痕跡を追って別の排水口を見つけただけでした

しかし、カムが「地下通路」の案内板を見つけました。通路自体は見つからなかったものの、私たちはこの島が海洋博物館の近くにあると推測したのです

この小舟を組み立ててから、私たちは島がある可能性が高い方向をたどって探し、ちょうどビアンカと指揮官に出会いました

とにかく、おめーら全員無事で何よりだよ!

次は……

カレニーナの視線が周囲を見渡し、ほぼ全ての人が海面の変化に気付いていた――

陽昏の機体はパニシングを「払拭」できる、勝利の天秤が傾き始めている!

この情報は確実に戦場に希望をもたらした。同時に空中庭園からの更なる支援が四方八方から駆けつけてきた……

反攻の時が、ついに訪れた

恐らく昇格者とセンの抑制が失われたため、海面から突如として大量の異合生物が現れ、彼らは本能に従って海岸線を上がり始めた

凶暴に潮の流れを利用して浅瀬に押し寄せ、目に入る全ての生物に容赦なく噛みついた――

うっ……まずい……

すでに傷ついた構造体は、異合生物の波状攻撃を避けられそうにない――

その時、ひと振りの長剣が凛とした光を放ちながら、異合生物の体に突き刺さった

下がってください!

あ……ありがとう……

Ω武器の稼働がピークに達するにつれ、海面の赤潮は一時的に制御され、異合生物は兵士たちの排除によって徐々にその数を減らしていった

おかしい、異合生物の数はこんなものじゃ……

セン?もしかして……粛清部隊の副隊長のセン?

彼女は海洋博物館で失踪したはずでは……

センは昇格者と最後まで戦い、殉職しました

代行者と昇格者は彼女を実験に利用しましたが、それでも彼女は自分の意識を保ち続けました……

彼女は島の祭壇で、大量の赤潮と海水中の異合生物を吸収したのです

……道理で

海岸と空の境界線が、夜明けの白さに染まり始めた

あぁ……夜明けね。この戦いも、もうすぐ終わりを告げる

しかし、戦場にはまだ私が必要なはずです、指揮官殿

私の機体は「逆転」能力を持っています。Ω武器が及ばない隅々まで処理できます……

眠る直前まで戦わせてください

指揮官殿……

ビアンカは振り返り、こちらに手を差し出し、今回の作戦中で初めての笑顔を見せた

私と一緒に、この嵐が終わる夜明けを見届けましょう

科学理事会

空中庭園

一週間後

一週間後、空中庭園、科学理事会

各方面の協力により、海岸線付近の異合生物も全て殲滅された

しかし、海は依然赤潮によって一部汚染されており、赤潮が海にどれほどの影響を与えるか、または自ら「人型異合生物」のような生物を生み出すのか、現時点では予測できない

……わかった

雑に最後に何かを書き留めると、アシモフはモニターの中央に表示された「欠片」を見つめた

異重合の欠片……まさに、科学理事会が付けそうな名前だ

科学理事会だ……見てみたいか?

…………

彼は立ち上がり、こちらを引き連れて別の部屋に向かった

異重合の欠片は密封されたガラスケース内で、奇異な色を帯びて輝いていた

歪んだ光点がこちらの意識を呑み込んでいき、金色の糸がどこからともなく広がり始めた――

重々しい心拍が胸の中で疲れ果てたように鳴り響く――

意識は虚無の大河に引き寄せられ、冷たい海の中へと沈み込んでいった

視線が「深痕」の機体を身に纏ったビアンカの手に持つ提灯に引き寄せられ、まるで何度も「既視感」で見た光景がほぼそのまま再現されているかのようだ

ビアンカは海洋博物館に入り、自分とルシアも彼女と一緒にいた……赤潮の天啓のグレースを救い、その後、ビアンカと他の皆ははぐれてしまった……

ビアンカはセンに出会った……そして静かな深海に墜ちていった

惑砂は失踪していなかった。彼はビアンカに立ち向かい、人型異合生物のセンが孵化する時間を稼ごうと抵抗したが、ビアンカに斬られ、その後……

死体と負傷者が海岸線に散乱し、鮮血と循環液、そして赤潮が海水を真っ赤に染め上げていた

「魔女」は海面で「怪物」を殺した

全ての光景は自分が「既視感」で見たのとほぼ同じだった

まるで映画のディレクターズカット版のように、自分は「もしビアンカと一緒に海洋博物館に入ったら」という完全な物語を見ていた――

これは決して「時の牢獄」だけで説明できるものではない

その全てを見下ろしていると、やがて海底は虚無に呑み込まれていった

やっと来たー!

星々の色彩が漆黒の空間を切り裂いた

じゃじゃじゃんっ!ナナミからのメッセージでーっす!このメッセージは[player name]――つまりグレイレイヴン指揮官だけが見れるよ!

瞼がいくつもの重りに押さえられているかのように重く、目の前の人影が霞んで見えた

あっ、見ちゃダメだよ!もし見たら、ナナミの魔法が効かなくなっちゃうから

これはナナミから指揮官へのプレゼント……えへへ、ちょっとだけ小さなズルをしたけどね――

でもだいじょーぶ!ナナミが指揮官の代わりにその支払い、やっておくね!だから、指揮官も絶対に言っちゃダメだからね

ナナミが指揮官に伝えたいことはね――

プレゼントの「答え」は、指揮官だけが知っている秘密の中に隠れてるから!

指揮官、まだたくさん質問があるよね!でもナナミ、答えられないの。ここにいるのはナナミの影だけだから、本当のナナミはもう銀河を自由に楽しんでるからさ~

じゃあ……そゆことだから!

バイバイ!指揮官!

星団は突然崩れて砕け、無数の金色の糸が自分の体を絡めていく――

急に目が覚め、すでに冷汗が自分の襟を濡らしているのに気付いた

……異重合の欠片が奇妙な波動を発している。お前は何を見たんだ?

言葉が唇の端にまで出てきていたが、どうしても口に出せず、答えを引き出すために今はただ質問を投げかけるしかなかった

ああ

そいつはまるで……情報を受け取るための純粋な媒体のようだ。だがその暗号化はあまりにも複雑で、俺の現在の理解レベルを超えている

唯一解析が完了したのはこの部分だけだ……

「これは……『未来』ってプレゼント」

「答え」は、指揮官だけが知っている秘密の中に隠れてるから!

薄暗い資料室、手書きのファイルコード、指先に感じる微かな痛み……

脳裏の記憶は白い霧に包まれてぼんやりしているが、この情報だけは大脳皮質に深く刻まれ、非常に鮮明だった

……?

要するに……お前は解読のパスワードを「見た」というのか?

…………

アシモフは有無を言わさず自分を検査用の椅子に押しつけると、再び頭から足まで検査した

脳波は正常、マインドビーコンにも問題はない……

一体どういうことだ

アシモフがこうも懐疑的なのは珍しい

「時の牢獄」の後遺症で全てが説明できるかもしれない、だが……本当に「時の牢獄」なのだろうか?

冷たい海水、もがくビアンカ……その全てが、虚構の物語とは思えないほどリアルだった

……お前が言ったそのパスワードを試してみる。もし再度同じような状況が発生したら、すぐに俺のところに来い

多くの疑問を抱えたまま、科学理事会を出ていった

ピピ――

端末がセリカから送られてきた報告を受け取った。軍は今回の海洋博物館での戦闘による死傷者データをまとめたようだ――予想を大きく下回る結果だった

「既視感」で見たばかりの恐ろしい光景を思い出す。死体と負傷者が海岸線に散乱し、鮮血と循環液、そして赤潮が海水を真っ赤に染め上げ、誰もが必死に逃げ回っていた……

Ω武器の適時投下と精鋭小隊の先行支援により、ビアンカとあなたは人型異合生物を島に封じ込めました……

今回の戦闘の死傷者数は予想の40~50%よりもずっと低く、恐らく表彰の対象になるかと。礼服のアイロンがけをしておいてくださいね~

事件の後、セリカのメッセージにはポップな波線記号が添えられていた

端末を閉じると、脳はすぐに習慣的に動き出し、次の仕事の重点を考え始めた

次は……何をすべきだろう?

フォン·ネガットの行方を追い、彼の愚かな計画を止める?

「既視感」の原因を追究し、その真相を解明する?

それとも……

やるべきことが頭の中で次々と浮かび、空中庭園の陽光が自身の周りに降り注いだ

因果の鎖が金色の糸で結ばれた――新たな運命となって今、足下に広がっている