Story Reader / 本編シナリオ / 35 ビヨンド·ザ·シー / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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35-15 彼女の別れ

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海島の街

海島の街

海島の街へ

錆びた案内標識が壁に固定されている。見た感じではもう長らくメンテナンスされていないようだ

この道では過去に崩落事故が起きていたようで、周りに砂利と建設廃棄物がたくさんあり、かろうじてふたりが通れそうな小道を誰かが拓いた痕跡があった

赤潮が見え隠れしながら小道から広がってくる

ビアンカは長剣を手にし、こちらも銃を構えている。ふたりは慎重に前に繋ぐ道を探索していた

端末の着信音が高らかに響く

指揮官殿?こんなところで電波が届くのでしょうか……

……指揮官!?指揮官ですか!

私は今、位置情報を特定できないエリアにいます。ここは大量の海水があり、異合生物も大量にいます

それより指揮官、ご無事ですか!

ルシアに先ほどの事件を手短に話し、現在の大まかな位置情報を共有した

海の小島ですか……

わかりました、指揮官。ここの異合生物を片付けてから、島に向かってそちらと合流します

指揮官も気をつけてください。一刻も早く合流を急ぎますから

ルシアの安否を確認したあと、ふたりで通路の向こうへと進み続けた

赤潮の痕跡は……ここから更に明確になっていますね

ええ、確かにその可能性も……

出口はすぐそこです

岩壁の後ろを伝わってくる水の音が徐々に大きくなる。どうやら出口はすぐそこだ

これは……

補機に搭載している「逆転」装置から放たれた微かな光が、前方の道を照らしてくれた

道がだんだん狭くなり、石段が未知のエリアへと続いている

ここの案内標識を見た限り、そのようですね

「海洋博物館最下層に作られた通路は、最も近い街へ続く道です」

「街は近くの島に建設され、島に祭壇が設置され……」

後半の文字が読めません、指揮官殿

もう海洋博物館は危険だ、離脱して考えよう

前に進めば進むほど、道の両側の景色がますます不気味になる。連なる石柱は天へ一直線に伸び、長い年月の間にできた水垢と赤潮の痕跡が、石柱の下部にこびりついていた

指揮官殿……

ビアンカはこちらを後ろに庇い、補機で前方の状況を確認している

…………

補機が共有してくれた情報で視界が徐々に広がっていき、島中央の景色が一望できた

石柱は鋭利な魚の骨のように、夕暮れに染まった天へ向かって屹立し、周りに散らばる廃墟はかつての繁栄と栄光を物語っている

でも今、重要なのはそれではなかった――

祭壇の中央に、四肢が歪んだ「怪物」が佇んでいる。重力で胴体が垂れ、補機の動きに気付いたらしく、その瞳が少し焦点を合わせ、探るような視線のビアンカと目が合った

彼女だ……「怪物」の残された意識の欠片は、今もこの視線に親しみを覚えていた

かつてこの視線の持ち主と幾度も任務を遂行し、危険な挑戦を何度も何度もクリアしてきた……

かつてこの視線の持ち主が泥にまみれて、罪の沼にはまりながらも心に希望を満たしているのを、隣で見ていた

殺戮すれば罪悪感を伴います。毎回そうする度に真っ黒な罪悪感に心が染まっていく

人はよくこのような罪を外因のせいだと、この間違いだらけの世界のせいだと決めつけて、パニシング爆発にその責を押しつけます

でもあなただけは違う、ビアンカ

「怪物」は意識海に浮かぶ些細なシーンに疑問を持った。本能によるものか、または残された何かしらの記憶なのか、彼女は焦って周囲の赤潮とパニシングの造物を吸収する……

でもあなたは責任をパニシングに押しつけず、世界が悪いとも考えない。かといって、自分が無実だとも考えない

鮮血と埃でその手はもう汚れているのに、魂はいつまでも純白な光を放つ……

やっぱりあなたです、ビアンカ

その友人は微笑みながら、姿勢を正した

だから……

階段の果てに向かって最後の1歩を上ると、緋色の祭壇は穏やかな海面へと静かに変化した

青い髪の「怪物」はこの祭壇、この海域の赤潮を吸収しながら、徐々に大きくなったその体が歪んでいく

隊長、来てくれたんですね

待って……

ビアンカの瞳がぎゅっと収縮する。彼女は怪物の呻き声を聞いた途端、瞬時に何かに気付いた――

その疑問は怪物の鋭利な切っ先で解体され、歪んだ長い腕がまっすぐビアンカの肩へと振り下ろされる

ニヤニヤと笑いを帯びたような囁きに、耳を刺すような咆哮が入り混じる

今回の……私の任務遂行はいかがでしたか

ビアンカは相手の攻撃を回避した瞬間に、懐かしい姿を目にしたような気がした……

血まみれの顔をしたセンが自分の前に立ち、意外にもその表情は穏やかな笑顔だった

壮大な月光が祭壇に降り注いでいる――