ファウンス入学初日
キャンパスでは歓迎のプロジェクションが至るところに掲げられ、ファウンスの校歌が講堂の上空にまで響いていた
こんにちは。君も入学手続きに来たの?
これが入学の資料フォームだ。端末できちんと記入するんだよ
……はい
紫色の瞳の少女は、面倒くさそうに書類を受け取り、背を向けて立ち去った
あっ……こんにちは!君もファウンスの新入生だね!
アハハ、もうファウンスの制服を着てるのに?今年は面白い新入生が多いみたいだな
気さくな先輩は微笑みながら、先ほどと同じ書類を取り出した
これが入学の資料フォームだ。端末できちんと記入するんだよ
記入時の注意事項を簡単に説明し、先輩は去っていった
入学……手続き用の資料フォーム……
なぜだろう、目の前が少しぼやけている気がする
周囲の笑い声やざわめきが徐々に遠ざかり、キャンパスの景色が不明瞭な建物と重なり合った。白い霧が立ち込め、赤い結晶が高く鋭い音を立てた……
ごしごしと目をこすった。昨晩は興奮して眠れなかったせいか、目がしょぼしょぼしている。でも大して問題はなさそうだ
一瞬、周りの景色がぶれたように感じ、パチパチと瞬きして目を凝らした。特に異常はない
君、何か手伝おうか?何となくボンヤリしてるようだったけど……
しっかりしたこちらの返事を聞いて、先輩は手伝いが必要そうな別の新入生の方へと歩いていった
『ファウンス士官学校入学必須入力フォーム』
名前:________
おかしい。どうして、存在しない番号や名前が浮かんでくるんだろう?
首を軽く振り、端末で記入を続けた
性别:________
学籍番号:________
学籍番号は……確か、検査報告の資料封筒に書いてあった。あれはどこだっけ……
古びた資料封筒がリュックから少しのぞいていた
ちょっと通ります
急いで申請書類を提出しようとした少女と、うっかり肩がぶつかった。封筒が手から滑り落ち、どこからともなく吹いた風のせいで、書類が辺り一面に散らばってしまった――
検査報告書の右上の、手書きの番号が目に飛び込んできた――
931206――
どうして……手書きの番号なんかが……
わざと崩して書かれたような「9」が、傷跡のように長々と伸び、全てが静寂に戻った
雷鳴が轟く
周囲は真っ暗でジットリと湿り、心臓の鼓動が耳元でドクドクと鈍い音を響かせている……
ここは……
霞んだ記憶が走馬灯のように次々と再現される。カイウスは激しい苦痛を伴いながら、粉々に砕かれたあと、再構築される過程を経験しているようだった
視線が彼女の意識と重なり、逃げようとする足取りが次第に速くなっていく……
皆さん初めまして、ルシアと申します。機種番号BPL-01、紅蓮。グレイレイヴンの隊長です――
以後、よろしくお願いします……!
機種番号BPN-06、異火。リーといいます
以前は……まぁ、今はもうグレイレイヴンの一員ですし、やめておきましょう。武器は双銃を使用しています
戦闘も戦術も、僕にお任せください
次は私ですね……えっと、リーフと申します。補助型です
以前はホワイトスワンにいました……使用武器はフロート銃です。皆さん、よろしくお願いします
これが――新しいグレイレイヴンだ
時にはグレイレイヴンの記憶であり、時には……
来月もまた育成センターに行くのか?最近はずっと任務続きなんだ、少し休んだ方がいいんじゃないか?
あれからもう何年も経つ。あの子だって成長してた
クティーラ計画?中止されたあの?あんなデタラメのおとぎ話みたいな計画、今更調べて何になる?
あの紫髪の昇格者のチビ、俺を殺さずにただ四肢をブッたぎってガラクタの山に捨てやがったんだ
それから……
僕の願い、僕たちが待ち望む未来は、一寸先も見えない暗闇の、その先にこそあるんだ
希望とは、どんな苦境にあっても必ずその夢を実現させるものなんだ!
「ノアン」という名は覚えているのに、それ以外のことを覚えていない?
グレイレイヴン指揮官。空中庭園に別の「本当の僕」がいるって言いたいんだろう?
そして……
「自分ひとりだけの意志じゃない」
「――文明の意志だ!」
断片的な幻影が幾度となく打ち砕かれ、再び再構築される。錯綜した記憶が「卵」の中で次々と現れては消えていく
痛みは優しく包み込まれ、再び孵化する
しかし……
この「物語」は、ひっそりと運命の結末を変えた
ふぅ……
こんな冒険をするのは、本当に久しぶり……
目くらましが成功した小さな喜びが、一瞬だけ彼女の意識を満たし、長らく続いていた平淡な日々にひとつの波紋を広げた
次は……
本をそっと開き、巨大なクジラが記されているページをめくった
もうすぐね……
人差し指がページの上をなぞると、金の糸が緩やかに動いた
時間は静かに4月1日へワープした
フォン·ネガットが立てる計画は決してひとつだけではない。本の投影には、芽生え始めた小さな木が赤潮の中に深く根を下ろす様子が映し出されていた
抜け目のない代行者はいくつもの逃げ道を用意し、すでに別の区域にも新たな生命の木を配置していた
小さな生命の木は、薄暗い拠点の中で不気味な赤い光を放ち、その胸にゆっくりと脈打つ赤い卵を抱えている
だが彼は、その中の「意識」がすでにすり替わっていることに気付いていない。「グレイレイヴン」の視線は、まだ孵化していない「カイウス」にしっかりと宿っていた
そして……
海底のゆりかごが天と地をひっくり返し、巨大なクジラが水面から飛び出した
なんて……見事な「物語」
彼女は興味深そうに、そして期待を込めるような目で、本のページを眺めた
あなたたちは、本当に無限ループを解く鍵を見つけられるのでしょうか……
「ドクン――」
赤い卵が再び命のリズムを脈打つ
物語はすでに結末を変えていた。海底でのパレードは、決して見捨てられた者たちだけのものではない
「我々」は、死をもって道を切り開く――
しかし、「我々」が願うのは、続く命と、その先にある明日だ
死は、決して最後の幕引きではない
「死」の果てには、「希望」に満ちた明日がある
いずれ火は再び燃え上がり、グレイレイヴンの紋章も、明るい陽の下で再び輝くだろう