逆元装置とまったく同じ構造図が端末によって解析、表示された
投影された構造図が静かに空中で回転し続けている。それはまるで何かを嘲笑っているようにも、悲しんでいるようにも見えた
……この振り回される感じ、不愉快なんだけど
この資料以外に何か見つかったか?
壁です
アルゴリズムロックで構築されたデータウォールか?
アルゴリズムロックのコードは外側から内側をロックするものですよね。だけどその「壁」は……
内側からロックされているんです
多分、私とあなたが考えていることは同じね
お前たちがゲシュタルトに入ってから、監視と平行して、ドールベアが解除したコナンドラムデータロックの後の部分を解読し続けた
そのコードは複雑じゃないが、配置が乱れて境界条件の判断が奇妙なんだ。俺は科学理事会の内部データベースで検索し、類似のコード配置を見つけた
「全感覚模擬装置」を覚えているか?
ナナミが空中庭園にいた時、「開発」したあの「装置」だ
ナナミが書き出した複雑なもつれた毛糸玉のようなコードを見たことがあるが、そのコードはしっかりと機能した
彼女が完成し、科学理事会の一部のメンバーがその「装置」に魅了された。エネルギーと武器の開発が基本のこの時代に、「全感覚」の概念に言及した者はほとんどいない
装置の背面に添付されていた体験報告によれば、確かにある研究員は体験後に「文字の色」を見たと主張している
あの時はずっとただのナナミのオモチャだと思っていたが、今思えば……
灰色の髪の少女の弾けるような笑顔が脳内に浮かんだ。彼女はわざわざそんな「真剣」なことをするタイプではないように思える
曲が自分に「招待状」を渡した時の表情を思い出すと、これはそんなに単純なことではないように思えた
あの灰色の髪の少女は今、地上のどこを旅しているのだろうか?
もう長い間ナナミからの連絡はない
これから俺は「全感覚模擬装置」のソースコードを使って、最後の招待状を逆解析してみる
その作業の一部、私にもやらせてください
お前、本当にこんなしち面倒なことを自分から引き受けたいのか?頭ん中まで、何かに侵入されちまったのかよ?
……
私はただ、そのドミニクが一体どういう存在なのかを知りたいだけよ
幼い頃から崇拝もし、憎みもしたその名前が具体的な形となって、「虚構」から現実の世界に入り込んだ
彼女はその名前の後ろに一体何があるのかを、自分の目で確かめなくてはならない
近付く足音を聞いたドールベアは手に持っていたメモリーを素早くポケットに押し込んだ。ドールベアがそうしたと同時に、ニコラ司令が入口から足早に入ってきた
逆元装置の進展はどうだ?
外部インターフェースの第2バージョンモデルは安定し、スケールアウトの拡張を試しながら外部インターフェースの適応性の強化を検討しているところだ
現在のモデルでは意識海の安定性にある程度の要求があるが、実際に逆元装置を改造した際のリスクが予測できない。いくつかの不確かなデータはまだ検証中だ
そうか
私が来たのにはもうひとつ理由が……[player name]、リーフとルシアが異災区で行方不明になっている
自分が空中庭園に戻る時は、何も問題はなさそうだった。彼女たちが難民を連れて清浄地に着くまでの物資も十分あったはず……
異災区は拡大し続け、衛星通信でも原因不明の受信障害が発生している。正確にいうと――
現在、異災区で救援任務や探索任務を行っている全ての小隊と連絡が取れなくなっている