Story Reader / 本編シナリオ / 26 クレイドルパレード / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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26-20 融合する仮面

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…………

ぼんやりとした影の後を追ったラミアは、山のように大量の監視機器が積まれた制御台があるのを発見した

彼女はモニターを立ち上げて唯一使えるプログラムを見つけ、その使用説明を呼び出した

それ以外に日程表も発見した。日程表は手書きの文字や印字で何度も修正されており、非常に読みにくい

黒野カナの備忘録!

1.▃▆▁▂▄▁と鬼ごっこをする。監視カメラのない場所じゃないと、すぐ見つかる

監視カメラのない場所なんてない

2.▃▆▁▂▄▁は監視カメラの中にある

(▃▆▁▂▄▁は必ずママから産み落とされる運命の死者。外の人たちは、彼のデータはとっくになくなったと言ってる)

(▃▆▁▂▄▁が言うには、彼は古い友人と生命の木を見るためにここに来ている)

(▃▆▁▂▄▁は助けてくれる。▃▆▁▂▄▁が見てくれる。彼以外、私はママと姉さんしか信じない)

いいえ、パパも信じてる。パパは私たちを守ってくれる

3.研究員を殴らないこと。「女王蜂」システムのテストに参加するポイントをためないと。ポイントをためないと。ポイントをためないと

明日が来なくなる。もう時間がない。テストをクリアしないと、ポイントが補充されない

【命を貸す。生体異化実験に素材を提供する。それがここでの主なチャージの仕方】

私たちは生体異化実験の素材ではない

4.「女王蜂」システムのテストに参加しないこと

自分を制御する。人を殺さない。ママに操られてはならない

姉さんはママの子供じゃない。彼女だけが制御されない

5.冷静を保つこと

冷静なんか保てる訳がない!

いつか科学が進歩して、「感情の安定度」と「意識データの安定度」と「生命の木の適応性」との間に、互換性なんて一切ないと判明したらどうする?

テストをしない。テストをしない。テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

テストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしないテストをしない

…………

狂気じみた文字がびっしりと書かれた備忘録から顔を上げ、ラミアはモニターを見た。そこには「テスト」に関するお知らせが映し出されていた

ポイントの使用と補充のお知らせ

4月1日より、全ての栄養剤の調味料、娯楽と知育用品は、ポイントで交換する必要がある

ポイントは各自が訓練を終えたのち、実験に参加することで獲得可能責任者が初歩的な判断を下したあと、テストが与えられる

テスト後、結果に基づいてポイントを配布する

テストって……一体何のこと?

実験体テストの監督についてのお知らせ

CB103が女王蜂システムのテストに参加した際に不具合が発生研究継続のため、新しいクティーラの候補者を早々に選別する必要が生じた

黒野ヒサカワ教授の研究によれば、意識データ化は実験体の感情の安定度と関連がある

監督は実験体が感情テストを行う際、以下の点に注意:

1.テストの設問は思考を促すだけのものにし、実験体が設問を熟読することで感情を抑制するのを避ける

2.検測装置を完璧に装着しているかをしっかり確認すること。これは最も正確な指標にするためである

3.設問の得点は単なる事前評価であり、実際はモニターのフィードバックも加味して評価を行う

4.点数が低すぎる実験体は生体異化実験基地へ送る

こんな装置を身につけないといけないの?

彼女はしぶしぶ装置を持ち上げ、使用説明通りに自らの体にセットした

……うう、なるべく冷静を保って……

私はこの世界で最も幸福である。ここにいれば、私の全ての希望は満たされる

0点

-5点

検測デバイスの曲線グラフが正確にラミアの心理を反映しているのを見て、彼女は乾いた声で笑った

嘘をついてもお見通しってことね……どうせ点数は事前評価なんだから、正直に答えてみるか

どんな課題も練習も私は難なくクリアできる。管理者が残した任務も簡単にクリアできる

0点

-5点

も、もういい加減にしてよ……

いつも楽しくない

-5点

0点

生きているだけで大変なの!それ以上求めないでよ!

いつも眠れない、またはよく目が覚めてしまう

-5点

0点

ふぅ、この質問は簡単ね

私は偉大なる救いのために、死者から新生を育むことも厭わない

0点

-99点

…………

なんだか……気分が悪くなってきた

死から命を育むことで幸せを感じる

0点

-99点

クティーラに関わった人は……本気で「はい」と答えないと、殺されるの?

死から命を育む以外のことに興味がない

0点

-99点

……

まだ100問以上あるのを見て、ラミアはめまいを覚えた

カナ……テストが終わったよ。私のポイントがまだ残ってたから、あなたが前に言ってた船の模型のパーツを買ったよ……

模型……?

ねえ……どうしていつも人のことばっかりなの?自分が欲しいものはないの……

……私はただ、カナとママの喜ぶ顔がみたいだけ

私たちが喜ぶ……?

彼女は目を伏せ、悲しみを隠そうと話題を変えた

……そんな状態で、どうやって模型をここに持ってくるの

サービスロボットに……あ、来た

サービスロボットが模型のパーツが入っている箱を休憩室のテーブルに置いた

……ありがとう

カナは苦笑いしながら翼をパタパタとさせたが、何を言うべきかがわからない

カナ、どうしたの?テスト結果が悪かったの?

テスト?ああ……あれね……

結果はよかった、よかったから……あと1時間で、私はクティーラになる

おめで……

今からこの模型を作ろうか!あと1時間で私は行かなきゃいけないから

相手の祝いの言葉を、カナは遮った

作るって……どうやって?

そうだった、私たち、両手すら自由に動かせないんだ……あの時、どうしてあなたに模型が綺麗なんて言ったんだろう……

私、あなたを怒らせちゃった?

違う!そうじゃない……

彼女は長々とため息をつき、船の模型の完成形をしみじみと見つめた

じゃ、こうしよう!サービスロボットに作ってもらおうよ!

……でもそれじゃ……

恨むなら、私たちの手を奪った人を恨むべきでしょ。船に罪はないし。もちろんあなたもね!

……うぅ……

サービスロボットが箱を開け、少しずつ模型を作っている間に、カナはそっとXX003に近付き囁いた

知ってる?ママが後2回、女王蜂システムを再稼働させたら、みんな死んじゃうの

え?

……彼らはね、なんとかママの攻撃性を刺激しようとしてるけど、そのせいでママは弱っちゃって……

……誰も避けられない運命だよね。私もそう

どうしてあなたは自分の幸せを理解できないの?

あなたはCB107の子で、ママから生まれた訳じゃない。だから女王蜂システムの制御を受けていないでしょう……

それどころか、研究員たちのポイントではもう明日を買えないの。すぐに誰かが調べに来るわ

あの方がそう言ってたの?

ううん、彼から調べる方法を訊いて、自分で調べたの……

だからね……ママは全てが終わる前に、彼らに復讐しようとしているの

彼らを皆殺しにしてね!!!

あの方の言う通りだわ。そんなに復活したいなら、研究員たちが自分で生命の木になればいいのよ!

それって素敵よね!ハハハハ!!自業自得、当然の報いじゃない!!

未来のために女王蜂システムを全力で進めようとするほど、世界の終わりがどんどん近付いてくるのよ!!!

私たちが死んでも……あなたはひとりでも生き残ってね

……イヤよ。どうして?

あなたはCB107の子でしょ、翼も両方ある。外へ飛んでいけるのよ?

……どうして私を一緒に連れていかないの?

だって、できないもの

私たちだって死にたくない……ここから逃げて、外の世界を見てみたい……外の世界もここみたいにごみ溜めなのかなって

でも私たちはもうそんなこと、できない……

あなただけなら、私、助けられる……

あなたはクティーラになれないでしょう?それはいいことなの……あなただけでも、生きて欲しい

……でもあなたたちがいなくなったら、私はどうすればいいの?

これから、私は誰の笑顔を見て生きればいい?

大丈夫、あなたは……

船、デキマシタ。黒野カナ、次ノ予定マデアト5分デス

…………

もう行かないと

カナは苦笑いしながら頷き、サービスロボットとともに休憩室を出ていった。彼女だけが明るい部屋の中に取り残された

あの時、XX003は自分が船を運ぶ水になりたいと思った。こんな風に、船が衝突するまいと避けていく岩礁のように、ここに取り残されたくはない

……私……どうすればいいの……

クティーラは完璧なママだから、私は怖くない。私はクティーラになることを恐れない

……ひとりにしないで……

でも私にはその資格がない。似たようなコピーにしかなれない

???

カナを返して!!

……ママ……

忘れていた記憶が……

彼女はもがきながらも、カナと同じ顔で母に向けて微笑んだ

狂気に陥っていた女性はその笑顔を見て、自分が唯一深く愛した子かと一瞬ためらったが、すぐにまた激情にかられた

???

……カ……ナ……

そうよね。通用しないよね。カナは片翼しかないし、髪の毛もママがちゃんと手入れしてたから

でも大丈夫……

???

大丈夫、大丈夫よ……ママ……

彼女の世界にはママとカナしかいなかった。カナがもう戻ってこない今、ママのために自分を捧げて何が悪い

少女は常にズキズキと痛み続けていた翼を、自ら引きちぎった

???

私なら……カナになれる

他人の希望を実現させることだけはできる

だから、見捨てないで

肩まで伸びていた髪は、鋭い翼で切ればいい

???

ほら……カナと……一緒でしょう?

……

目の前の女性はぶるぶると震えながらも少し冷静になったようで、彼女の頭にそっと手を置いた

???

カナ……カナ……

大丈夫。私があなたの願いを実現できないなら、私があなたになればいい

???

うん、私よ……ママ……誰も死んでないよ……

価値のない傍観者はすでにおらず、世界には価値のあるクティーラとカナしか残っていない

???

……無事で……本当に、よかった

だ、だから……もう一度……笑って

――あなたもずっとそうやって生きてきた、そうでしょう?

過去と現実の雑音が混ざり合い、混乱したラミアの意識海に流れ込んできた

――あなたも同じ疑問を持っている、そうでしょう?

なんで、なんで私が私のままだったら、誰も受け入れてくれないの?

――私たちの意識は希薄すぎる。孵化できないの。だからひとつになれば……ひとつに融合すれば……

……教えて……私は誰……

――なりたい人になれるわ

ラミアの体にセットした装置のコードが赤色の臍帯となり、彼女と卵を繋げている

その時ようやく彼女は理解した――このテスト、この装置は最初から意識融合をするためのもので、全ては罠だった

……!!

クティーラの鋭い悲鳴が高潮のように彼女のいる部屋へ押し寄せ、正気を失う寸前のラミアを更に溺れさせようとしている

その悲鳴を聞きつけ、大量の異合生物が押し寄せる

制御室は全て取り囲まれ、退路もなければ今はリンクもない

押し寄せた異合生物の攻撃性は高く、最初にラミアを包囲したものとはまったく違う。どうやら明確な指令を下されているようだ

異合生物の波が床から湧き上がった赤潮と混ざり合い、ラミアの両足に触れた

考える間もなく、彼女の意識は緋色の海へと引きずり込まれていった