――飛行要塞の稼働データの解析、成功です!
ギアが唸りを上げながら回転すると、外周の飛行要塞が動きを止め、中央の要塞にドッキングして奇妙な形状へと変化した
アシモフさんからの暗号キーで飛行要塞の中央制御システムにハックしました。周りの小型飛行要塞の動きを変え、中央要塞の周りに固定しています
これでどの小型飛行要塞からでも、その場を突破すればそのまま中央要塞に突入できます
エコーの位置情報を見るに、彼女は少し離れた別の小型飛行要塞にいるようだ
救援が間に合ってくれるといいのだが
ユートピアの小型飛行要塞
エコーは物陰に隠れ、ゼエゼエと息を切らしていた
ユートピアは……大きすぎる
ユートピア付近の無数の小型飛行要塞は次々と編成を変えていた。敵を最速で倒しても、扉を開けばまた別の小型飛行要塞の敵が待ち構えている
どうすれば……
後ろに立つ鎧も消耗しているようだったが、彼女は優しくエコーの肩に手を置いた
まだ休憩してる場合じゃないよね。姉さん
皆が一緒に頑張ってるんだもの、こんなところでぐずぐずしていられない
彼だっていつか逃げ道がなくなるわ……大地が必ず夜明けを迎えるように
体力の配分を考えながら次の包囲網を突破した時、甲板が突然激しく揺れ始めた
あちこちであわてふためく叫び声が上がっている。オーロラ部隊の隊員たちも何が起こっているのかわからないようだ
彼らよ……!
疲れ切ったエコーの目に輝きが戻る
――彼女の依頼がようやく実現した
グレイレイヴン指揮官が、彼女と姉が手に入れたデータから暗号キーを入手し、ユートピアの小型要塞を制御したのだ
今なら……
姉さんは少し休んで
鎧はエコーの頭をなでながら、声なき会話をした
そう……じゃあ行きましょう
疲労困憊していたが、彼女の目はまるで銀河のように輝いていた
ユートピア
中央制御室
ユートピア中央制御室
ピークマンは目を細めて目の前の実験体を眺めた。隣の研究員はわき目もふらず、記録に没頭している
意識融合度56.24%……67.23%……
灰色の空白がゲージでゆっくりと赤く染まっていく。激しくもがいていた構造体が、「シャーレ」の中で動かなくなった
拒絶反応、残留意識は62.15%です
十分だ
残りのサンプルは?
あと3人です
だがまだ……一番重要なのピースが足りない……
主人格だ
主人格のない意識海は、まとまりのない砂のようなものだ。確固たる意志を持つ主人格の導きがなければ、あの高次の力には触れられない
残念だ……
彼は首を振りながらモニターを見た。そこに映し出されているのは、戦闘中のエコーと鎧だった
アリサ……セシリア、このふたりならどちらでも、この実験を完璧に仕上げられる
でも……これはこれでいい
ピークマンはうっすらと笑った
まさかこんなに早くプランBを使うことになるとはな。しかし……
彼はゆっくりと手袋を外した