ユートピアの実験室では、ピークマンが満足そうな表情で目の前の「サンプル」を見ていた
……
まだ多少の欠陥がある。アリサには遠く及ばないが……まあ合格ラインというところだろう
何といってもアリサは比類なき……唯一の作品だからな
意識融合の進行度は?
選別した意識を融合しているところです……23.45%、33.63%……
モニターのゲージがゆっくりと進んでいる。融合された構造体たちは激しく反応していたが、しばらくすると動かなくなった
軽度の拒絶反応が見られましたが、ほとんどの意識は無事に融合できました
続けてくれ
は……はい
研究員の手は少し震えていた。ふたりのオーロラ部隊の隊員が現れ、「シャーレ」を開けて動かなくなった構造体を外に引きずり出した
ピークマン博士……こんなこと、本当に正しいのでしょうか?
もちろんだ
成功すれば広大な新世界に行ける。命は歩みを止め、死も苦しみも意味をなさなくなる
我々は……そこでより高次の力に触れることができるのだ
ですが、それを証明できる理論的根拠はまだありません……
愚かだな
ピークマンは怒った様子もなく、鷹揚な口ぶりで話し続けた
かつて私は昇格者について研究をしていた。彼らが昇格ネットワークに選ばれた理由のひとつに、安定する意識海を持つことが挙げられる
ならば安定した無数の意識海をひとつに融合し、その中で一番強い意識が昇格ネットワークに接触すれば……
まるで目の前にその光景を見ているかのように、ピークマンは笑顔を見せた
人間の進化の未来は、なにも構造体だけではあるまい?
わ……わかりました
狂暴な実験体の姿を通して、研究員もピークマンが思い描く壮大な神話を見たように思えた
続けるんだ。もう時間がない
保全エリアに残る構造体に任務を伝え、近くで動ける小隊に支援を頼む等、全ての手配を終えたリーが車で待っていた
指揮官、準備完了です
――指揮官!
指揮官、た……ただいま戻りました!
グレイレイヴン、ルシア、帰隊いたしました!
ルシアは丁重に敬礼をしてみせた
ご安心ください、指揮官。私は大丈夫です
こちらを見つめる少女の瞳には、以前と変わらぬ忠誠と勇気が宿っている
はい
ウィンターキャッスルの戦いが終わったあと、何度か慌ただしく見舞いをしただけで、ほとんど彼女と話す機会がなかった
全て修理が終わっています
指揮官、私が不在の間……ご迷惑をおかけしました
リーやリーフ、指揮官に伝言をお願いしたいのです
私は必ず帰ります……どんなに時間がかかっても
少女はその約束を果たした
久しぶりの再会なのだ、彼らには語りつくせないほど積もる話があった。だが今、懐旧に浸るような時間はない
はい!
指揮官、ご命令を。私はいつでも戦えます
皆さんで……また一緒に集まれて、本当によかった……
出発前に合流できたのはタイミングがよかったですね。では……
了解!