指揮官、ルシアとリーフの支援申請が許可されました
今回の申請許可は異様に早いですね
何か新しい情報は?
これほどギリギリの局面においても、まだ表に出せないことがある
非常に厳重な防御網を張り巡らせているので、大まかな場所しかわかりません
居場所は広大なエリアのどこかです。3つの小隊を出動させても、具体的な方向すら見つけるのに時間がかかる
彼らを見つける前に……資料が破壊されてしまわないかが心配です
ルシアとリーフの到着までまだ時間があります。その間に僕もユートピアの方向を調べ続けます
間に合うといいのですが
保全エリア内部
比較的安全な場所で、ビクビクせずに済むという状況は久しぶりだった
おどおどせずに堂々と動けて、突然保全エリアの掲示板に手配書が張られる心配もなく、追っ手が急に現れることもない……
保全エリアのテントの中に立っていたエコーが窓を開けると、一筋の日差しが入ってきた
窓の外ではグレイレイヴン指揮官がリーという構造体と何かを話し合っている
何をしてるの?横になってなきゃダメじゃない
入ってきたのは昨日手当をしてくれた補助型構造体だ
ここには構造体用の医療物資が少なくて、あなたの損傷を完全には治せないの。だからちゃんと休まなきゃ
彼女はそっとエコーを寝かせると、損傷が酷い部分を検査した
意識海以外に、補助循環システムにも中程度の損傷あり。以下の部品の交換が必要……
彼女は交換部品の場所を記録しながら、ため息をついた
え?痛みを全然感じないの?痛覚モジュールが故障したのかしら?
昔は……痛かったんです
ずっと小さかった頃、まだ「アリサ」と呼ばれていた頃だった
転んで泣きながらお父様と呼べば、父はいつも仕事の手を止め、彼女を膝に抱いて慰めてくれた
でも……その後……いつから痛みを感じなくなったんだろう?
セシリア姉さんが死を選んだ時?
「ノート」を見つけた時?
ライナとはぐれた時?
それらの痛みは、体が傷つくよりももっと痛かった……
今は……慣れてしまったのかも
……
補助型構造体は痛ましそうな顔で何かを書き留めたあと、穏やかな表情に戻ってエコーを見た
これからは、そんなことにはならないから
空中庭園には他の勢力の構造体を収容した例もあります。アシモフさんは凄腕だから、きっとあなたの意識海を修復してくれるはず
アシモフさん?
空中庭園科学理事会の責任者で、首席技術者でもある人よ
彼は数々の素晴らしい研究をしているの。きっと助けてくれるわ
優秀な方なんですね
だから安心してね。これからのことは空中庭園に任せればいいから
今は、ちゃんと休むのが先決よ
寝てしまえば、もう痛くないから
彼女はエコーが寝たのを見届けると、静かに部屋を出た
入り口がロックされた音を聞いて、エコーはそっと目を開けた
空中庭園……悪くなさそうね……
でもごめんなさい。私には、そこに行く機会がなさそう
壁から武器を取ると、エコーはこっそりと窓から出ようとした。しかし窓を開きかけた時、後ろから唸り声のような聞き慣れた物音がした
姉さんは……ここに残ってほしいの
鎧は低く唸り、エコーの頭をそっとなでた
空中庭園はいいところみたい。科学理事会というところが凄そうだから、姉さんはここに残っていれば……
▂▆▆……
うん、わかった
じゃ、一緒に行きましょう
これは私たちがやらなきゃいけないから
グレイレイヴンの指揮官はまだあの構造体と何か話しており、ふたりの行動に気付いていなかった
誰にも気付かれず彼女は姉とともに、初めて「安全」と感じたこの保全エリアを去った
空中庭園は一気呵成にユートピアを攻撃したくとも、まだ正確な位置がわからず足踏み状態だった
ユートピアはいくつかの飛行要塞で構築された空中拠点だ。もし気付かれて衛星から測定できない場所に移動されてしまえば、二度と見つからないだろう
でも……もしエコーが発信器を持ってユートピアに行くなら?
彼女は自ら黒夜を照らす松明になるつもりだった
それは彼女が背負うべき枷であり、彼女が背負うべき血に塗れた罪だった
これは彼女たちの戦い、彼女たちの――
審判の道なのだ
道の先に何が待ち受けているかはわからない
でもこの道を歩む彼女は、少しずつ「正義」と「秩序」の本質を理解し始めていた
誰かが彼女に正義を教え、誰かが自由へと導いてくれ、誰かが沼から引き上げてくれた
その経験があっただけでも彼女にとっては幸せなことだった
姉さん、行きましょう
▄▃……
彼女はずっと忘れられない、だが一度も連絡したことのない番号に発信した
……アリサか?父さんの助けが必要になったか?
他の実験体の資料がいるのか?それとも……
ユートピアに戻りたいんです
……やっとわかってくれたのか?私のアリサ、やはりお前は最高に素晴らしい
戻りなさい。ユートピアに、父さんの側に
私たちはこれで本当の、本当の家族になれるんだよ……
彼は忙しかったのか、場所を送ってきただけで通信を切った
今から戻ります、お父様
正義の音色は常に、この大地で響き渡る……たとえ嵐に空が覆われようとも、いつか必ず太陽の光が地面を照らす
あなたを見つけ、あなたを裁き、あなたと一緒に……地獄へ堕ちる
リーとの相談を終え、エコーの様子を見ようと振り向いた時、焦った様子の補助型構造体の姿が視界に入った
休眠してたはずなのに一体どこへ……!私のせいだわ、隣の病人を見に行かなければ……
テーブルの上には1枚の紙が置かれていた
「ユートピアの基地の場所は私が見つけます。その代わりに姉さんの面倒をお願いします」
だが、エコーに「姉さん」と呼ばれていた鎧はどこにもいない
「姉さん」が妹をひとりで行かせるはずない
彼女たちは直接ここへ降下しますが、準備時間を入れても……あと25分はかかります
あの歪んだ、この大地に存在すべきではないユートピアを終わらせる。出発の時だ