Story Reader / 本編シナリオ / 22 紡がれる彩華 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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22-6 『雪のある風景』

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巨大な扉が開き、また閉じた

これまではためらいなく入っていたが、今回は皆、かなり慎重に進んでいる

ふぅぅぅぅ……

金属の壁は薄い霜に覆われている。トロイは武器でコンコンと叩き、地面に落ちた破片を拾って確認し始めた

……

特に妙な成分は入っていない。単に低温のせいで固まっているだけです

ここは雪をテーマにした世界みたい

辺りを見渡すと、思った通り温度調節器があった

制御盤はないですね。強引にシャットダウンするしかないか

強引にシャットダウンって、まさか……

ライナは弓を引き絞り、送風口に向かって矢を放とうとした……

???

お待ちください、お待ちください!

突然、掠れた声が響いた。ライナはすぐに声の方向へ弓を構え直した

どうか装置を壊さないでください。展示館のコレクションが破損してしまいます

目の前に機械体が突然現れ、全員が互いの様子を探りあった

どうか手荒なことはおやめください。私はただの使者です

自分の身分を証明しようとしたのか、機械体はその場で屈み込むと、全身のパーツを次々と展開しだした

パーツがゆっくりと組み直され、見たこともない装置となり、更にその上にランプが現れた

「ランプ」の光はゆっくりと人間の輪郭、あるいは人間のようなホログラムを浮き上がらせている

初めまして、空中庭園からの客人たち

声はその機械体ではなく、展示館のスピーカーから流れている……

あの、あなたは?

私はこの街の……一時的な管理人で、この街の稼働を維持するための機械体です

なら、さっきの彫像は……

これら展示館を守るためのセキュリティガードです。先ほどの攻撃は本意ではありません

どういうこと……?

管理人さん、私……

まず自己紹介をしましょう。私はセルバンテスです

それと……あなたがアイラさんですね?

セルバンテスのホログラムがアイラに近付き、興味深そうに彼女を見つめた

……私のことを知っているの?

まあ、そうです。あなたがここにいるということは、私たちの計画は半分は成功したようなものです

計画が……半分は成功……

ちょっと待ってください、ウィリス参謀総長が言っていた信号って、もしかして……

警戒を解いていただけますか。私はただ、皆さんをこの街にご招待したかっただけなんです

さっきの「歓迎パーティ」のこと?「お優しい」ホストなんですね

セルバンテスは釈明をしなかった。そもそも釈明する気もなさそうだ。彼はただアイラの目をじっと凝視したあと、他のメンバーに目を向けた

なるほど、これはまさに……

セルバンテスが一行を見まわしている間に、シルカはそっとライナに近付いた

ライナ、彼の本体の居場所がどこかわかりますか?

あの機械体を私に任せてくれれば、どこで彼がコントロールしているのか、逆探知できるかも

ふたりが小声でこそこそと話していると、セルバンテスがいきなり話の矛先をふたりに向けた

申し訳ないが、それはやめていただきたい

私はあなたたちに対して悪意などありません。もちろん、完全に信じてほしいとも思っていませんけどね

今のこの街の状況は少し複雑ですが、ある程度私が望んだ局面でもあります

……セルバンテスさん

本当に私たちに対して悪意がないなら、素直に答えてほしいのだけど

あなたの計画って何なんです?

ハットの下の深紅の瞳がアイラを見つめた

しばらく考えこんでいたセルバンテスが、ゆっくりと口を開いた

今は……あなたたちにこの芸術館をしっかり見てもらいたいだけです

特にあなた、世界政府芸術協会のアイラさんにね

私?

予想外の言葉に驚いたアイラは更に詳しく訊こうとしたが、セルバンテスが先に口を開いた

「同業者」としてのお願いです

私はここに、私が見た全て、失った全て、経験した全てを封印しました

それとこの「コンステリア」、理想の中だけに存在する未完成のこの街が、黄金時代の終焉に何を経験したかもしれません

世界政府芸術協会なら、かなりの興味を持つでしょう

あなたが全てを見て、私に答えを教えてくれるのを願っているんです

ついでに、私もこの小隊が全力を尽くす姿を見てみたいのです。それは、考慮に値する体験になることでしょう

では、この機械体とともに展示館の内部を存分にご覧ください

そう言い終えてセルバンテスのホログラムは消えた。がらんとしたロビーには展開したパーツを折りたたみ、本来の姿に戻った機械体だけが残った

皆さま、どうぞこちらへ

こちらへって……行く訳ないでしょう

……ちょっと待って

彼の言う通りにしましょう

……本気ですか?

アイリスウォーブラー成立の理由のひとつは、黄金時代の資料を回収することよ

あのセルバンテスという機械体の言葉が本当なら、彼はコンステリアの内情を知っていることになる……なら私たちは、彼からその情報を手に入れなきゃ

……

そうね……彼の言う通りに行動しないと、さっきみたいな激しい戦闘を何度も強いられるかもしれないし

私たちはそもそも戦闘が得意な小隊ではないし……ここは慎重に進んだ方がいいと思います

それにこの展示館、かなり面白そうじゃない?調べる価値はあるわよ

わかりました……世界政府芸術協会ってそんな感じなんですね

指揮官と隊長がそう言うなら、異論はないです

でも、警戒するにこしたことはない……

うわああ!これってまさか黄金時代のムルマンスク港に停泊していた、最大のモーゼ級砕氷船のレプリカ?それともまさか……

ライナの言葉も聞かず、アイラは両目を輝かせて展示館内のコレクションに見入っている

ま……待ってくださいアイラさん、ちゃんと陣形を組んで進まないと――

探索はあのふたりに任せて、私たちは周囲を警戒しましょう

はぁ……

ライナは頭が痛んだのか、眉間をもみながらふたりの後を追った