Story Reader / 本編シナリオ / 18 綺羅星の誓い / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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18-14 未来を見出すために

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意識が生まれることについて、人類と機械体の一番の違いは、人間は自分が意識を持った瞬間をよく思い出せない点にある――

――それは乳幼児が記憶することや感情を覚えた時?母体からこの世に産み落とされ、産声をあげた時?もしくは卵管で受精卵が形成され、分裂しようとした瞬間だろうか?

生物学から哲学までを内包する難題だが、機械体にとっては簡単な質問だ――

――動力に接続され、プログラムがオンになった瞬間に、まったく新しく、かつ成長する必要のない高度な知能を持つ意識が誕生するのだ

機械体なら、いつでもメモリーに保存した記憶を取り出せば、その瞬間を再現できる

人間が未来の予知をしたところで、予測不可能な因果律と時間があり、おそらく予知とは矛盾が生じる

しかし機械はプログラムで演算を行い、既知の未来に向かって正確に行動する

つまり、ゲシュタルトが演算した全ての方向へ伸びるファクターの全てを、ナナミは網羅して記憶デバイスに取りこまねばならない

ゲシュタルトの未来に対する演算は、現実世界に影響しない。だが現実世界のある分岐点をナナミが選んで進めば、そこからは無限の可能性が生まれる

自分とその分岐の先にある未来の間に、どれほどの可能性があるかはわからない。それらの可能性が同じ未来に収束するかどうかもわからない

ゲシュタルト

ナナミという個体、演算プログラムを始めますか?

もちろん……うっ

自分の限界を越える演算データが流れ込み、ナナミは一瞬苦しそうな表情になった。しかしすぐさまその負荷に適応し、その目が輝きを取り戻した

ゲシュタルト

……演算開始、世界再構築中、10%……

周りの空間が歪み、新しい……リアルな未来がゆっくりと生成された

ゲシュタルト

ナナミという個体、第3回の演算プログラムを始めますか?

はい

ゲシュタルト

……第5回演算プログラム、開始します

ゲシュタルト

……第9回演算プログラムを開始しますか?

……第12回、世界再構築開始……25%……

……31%……46%……

ナナミという個体、開始しますか……

ゲシュタルト

ナナミという個体……それは何でしょうか?

アハ……ハ、これ?

少女は微笑みながら、乗っているロボットを優しくなでた

おばあちゃんロボット、『パシフィック·ジュゲンム』という映画を見たことない?

ゲシュタルト

……リサーチ結果、人間の黄金時代末期に作られたSF映画ですね

ナナミは……そういう面白い作品をいっぱい、いっぱい見たんだ。人間は巨大ロボが――大好きみたいなの!

人間の文化では、巨大ロボットは神の力を持ってるみたいな感じで……ちっぽけな人間でも、巨大ロボに乗れば、嵐と戦う勇気だって湧いてくるんだよ

ナナミ、わかってきたかも……どうして未来で、ナナミがこの子を連れていたのかを。きっと、ナナミはパワーが好きなんだね

だからナナミはパワーを作ったんだ……じゃないと、どうしてどの未来でもナナミがこの子と一緒にいるのか、説明がつかないじゃん?面白いよね、フフッ……ね?

ゲシュタルト

ロボットは、人間という種族が運命と対抗するために作り上げた力の象徴だと――そう言いたいのですか?

ナナミという機械個体、演算があなたに基準値を超える負荷をかけていることは明白です。未来の演算を行うには、機体を交換し、外部サポートに頼るべきと進言します

ちぇっ、ホントに、ロマンのかけらもない言い方なんだから……

ゲシュタルト

ここで停止しましょう。ナナミ

ナナミは気に入ってるの!!!

ロボに触れていた少女は顔を上げた。その表情に激高した様子はなく、穏やかな決意が浮かんでいた

……本当にこの子が気に入っただけだから。おばあちゃんロボット、次の演算をお願い

ゲシュタルト

……演算開始、第36回、世界再構築……

少女は迎え入れるように両手を広げ、世界を映す球体を抱きしめた

ひとつのプログラムに

膨大なデータ

繰り返されるシミュレーション

無限のパターンを並べた2進数が、偽りの未来を生み出す

分岐が無数に枝分かれし、世界で起きうる全てのIFルートを計算する

幾千万の夢を見せられ、少女はそれぞれの未来で、世界を相手に全力で戦った

全ての未来を知ったとしても、彼女は迷わず前へと進む