Story Reader / 本編シナリオ / 17 滅亡照らす残光 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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17-22 誰も聴かなくなるまで

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もしこのエリアまで失ってしまったら、我々は隠れるところもなく、敵の攻撃に正面から晒されてしまいます

後は、任せましたよ……

必ず生きて会いましょう

…………

あの約束から、どれほど時間が経ったのだろうか?

神から庇護されるはずの教会に閉じ込められ、四方八方から聞こえる声は、全て異合生物の雄叫びだ

仲間が近くにいるのを知りながら、侵蝕体と異合生物に囲まれてしまっては、ここから一歩も動けない

連絡を試みても、通信チャンネルからは断片的な言葉とノイズが聞こえるのみだ

ああ、この世界ではいつだって、祈りを捧げても救いは得られないのだ――

朦朧とする中、彼女は自分が構造体になると決心した時のことを思い出した

寒さと飢えに苛まれ、幼い子供たちが1カ所に集まり、生きるためにお互いを騙し、傷つけ合っていた

……そう、あそこも、教会でした……

ここと同じ場所で、彼女は最後の家族を失った。今また、彼女は同じところで倒れてしまうのだろうか?

いいえ、こんなところで……ここは終着点ではない……

ルシアは刀で体を支え、苦しみながらも前へ進んだ

私たちは、まだ……

彼女の意志の炎はまだめらめらと燃えている。だがその機体は、10日も続いたこの戦いに悲鳴を上げている

本当に、もう限界かもしれない――現実と向かいあう時が来てしまったのだろうか

…………

間違っていたのだろうか?

あの時、なんとしてもリーフと一緒に帰ればよかったのだろうか?

……いいえ……

もし彼らが残らなかったら、もっと多くの人が死んでいただろう

それはルシアが、そしてグレイレイヴンの誰もが望む結果ではないはずだ

クロム隊長はこの10日間、一度たりとも戦いの辛さを口にしなかった。彼は窮地に追い込まれてからも、決して自分の選択を後悔していないようだ

もし、ケルベロスのヴィラ隊長なら?

文句を言いそうではあるが、きっと戦い続けるだろうとルシアは思った

……ヴィラ……

指揮官がアトランティスから戻る時、ヴィラは輸送機の中で、ふと過去の救援任務のことを口にしたのだった

その際、彼女は探索設備が使えないエリアに閉じ込められたそうだが、ある牧羊犬が目標を見つけてくれたと言った

そんな彼女の話を覚えていたお陰で、ルシアはリーフとあの廃墟の中で、マッチに頼って妊婦のファンティーヌを見つけられたのだ

波のように何度も襲いくる異合生物と戦いながら、彼女の意識海には、走馬灯のような記憶の欠片が現れた

私たちはもう、誰ひとり……命の灯火が消えるのを見たくありません……

他の小隊は今ここにいないが、自分がよく知るあの人々なら、きっと同じ選択をするだろうと思われた

今行方不明のバネッサもそうだ、彼女は同じ道を選んだ

誰しも、自分の守りたい人を守り、信念を持って全力で戦ったあとに、戦場に倒れるのだ

私たちは、後悔していません……

しかし、この世界が誰かに慈悲を施すことはない

目の前の敵を叩き切り、彼女は蠢く異合生物たちを見渡した

機体の損傷はすでに限界だ。逆元装置の負荷もとっくに限界を超過している。彼女は、あと10分もすれば自分は動けなくなるだろうと推測していた

10分。それしかないとしても、私は最後まで戦い続けます

心にある信念が、彼女を最後まで突き動かす

その時突然、その決意に応えるように、グレイレイヴン専用のチャンネルに、久しく懐かしい声が響いた――

リーフ

ルシアっ!!

大丈夫ですか!?どうして映像が映らないんです!?リーさんは?どうして通信がずっと繋がらないんですか!!

モニターには何も映っていない。ルシアとリーフは、お互いの顔が見えずにいた

なぜなら、音が鳴った瞬間、ルシアがとっさに端末のカメラレンズを塞いだからだ。今のこの姿をリーフに見られたくないという瞬時の判断だった

リーフの映像は……端末も破損してしまったのだろう、映像は映らなかった

大丈夫。顔が見れなくても、最後に仲間の声を聞けただけで十分だ。ルシアはそう自分に言い聞かせた

今、空中庭園ですか?

リーフ

輸送機にいます。もうすぐ到着しますから

駄目……駄目です、来てはいけません、ここは危なすぎます

リーフ

危ないって何のことですか?ルシア?

…………

リーフ

大丈夫、心配しないでください。私が帰る時、ハセン議長が話してくれた武器を覚えていますか?その開発に成功したんです!

どんなに危険でも、私があなたたちを守りますから

……その力を手にしているんです、ルシア!信じてください……

…………

……あと、どれくらいですか?

リーフ

おそらく……あ……1時間くらいです

1時間……

……それでは間に合わない

リーフ

どうしました?なぜ黙っているんですか?

結末が変えられないなら、せめて最後は彼女の優しい声を聞きながら……

リーフ……

リーフ

はい?

もう一度、歌を聞かせてください

リーフ

え?……ルシア……どうして……

カウントダウン代わりです。リーフの歌声を聞いていれば、安心して戦える気がするんです

歌声が近づいたら、近くに来てくれたとわかりますから

リーフ

ルシア……

リーフ……いつかあの歌を、指揮官にも聞かせてあげてくださいね

リーフ

…………

……ルシア……

自分の状況に気づかれただろうか?必死にこらえていても、彼女の声は震えてしまっている

ごめんなさい……飛行機の中で歌うなんて、無理なお願いでしたね

リーフ

いいえ……

……あなたの隣に行くまで、今、できることはそれだけです

歌うことで、側にいさせてください

でも、約束してくださいね。必ず自分を守る、絶対に諦めないと

私が行くまであと少し耐えてください。今回は、きっと皆さんのお役に立ちますから

……いつだって、あなたは皆の役に立ってますよ。リーフ

彼女を不安にさせまいと、ルシアは力を振り絞って笑った。その声はかすれていた

では……ここで待っていますね