うまく、いった……?
ルシアの最後の一撃が命中すると、集噛体は苦悶の叫びをあげ、その攻撃も明らかに鈍くなった
異重合コアに大ダメージを与えても、完全に停止させられないのか……
集噛体のいびつな咆哮に呼応するかのように、異重合コアの破損部位が見る見る修復されていく
完全に消滅しない限りは自己修復し続けるみたいです……軌道異合体の時の方法は通用しません……
完全に消滅させない限り、自己修復し続ける……
同じ異重合コアから生まれたものでも、軌道異合体とは性質が違うようですね
ええ、おそらくルナが修復能力や戦闘能力の源になっていると思います。ガブリエルも「最も重要なピース」だと言っていましたし……
つまり……その「ピース」をどうにかしない限り、集噛体を倒すことはできない、ということですね
やはりそうですか……
誰もがその言葉の意味をわかっていた。皆の沈黙をよそに、ルシアは刀を力強く握りしめた
指揮官……聞いていただきたいことがあります
私は構造体です。人類が地球を取り戻すための刃です。そして昇格者は私たちの敵です
つまり、ルナを助けることは、敵を助けるということ
ですが……
ルシアは息を大きく吸い込むと、覚悟を決めたように右手を胸に当てた
根拠もありませんし、荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが……私はルナを信じたいんです
ルナは今なお……孤独を恐れて、手を握ってもらたがっているあの時のルナだって、私は信じているんです
全てを思い出してから、ずっと後悔しています。あの時、ルナの手を取らなかったことを。私にあと少し勇気があれば、私があと少し強ければ……
でも、過去は変えられません。私にできるのは前に進むことだけ
進み続ければ、戦争を終わらせられる。敵対する双方を助けることができる――あるいは、ありもしない回答を求めているだけかもしれません
そんな甘い考えを持つ私を……指揮官は、今でも信じてくださいますか?
指揮官……ありがとうございます。こんなにもわがままな私を信じてくださって
握りしめた拳が少し緩んだ。ルシアは肩の力を抜いて、頭を上げた。いつもと変わらない、毅然とした顔
……ありがとうございます、指揮官
でも……都合のいい考えだってわかってるんです。ごめんなさい、ずっと……こんな私につき合わせてしまって
そう言うルシアの顔には、ある時を境によく見せるようになった笑顔が張りついている。強がった、精いっぱいの笑顔
私は……自分のわがままに皆を巻き込むのが怖いんです。ですから、どうかここを離脱してください
私にはルナに会って、確かめたいことがあるんです……ルナが本当に記憶の中のルナなのか、自分自身の目で確かめたいんです
そしてもし、ルナがもう昔のルナではなかったら……覚悟はできています。これ以上ルナに人を傷つけさせたくはありませんから
でももし、助けるか、滅ぼすかの二択を迫られたら……
やはり……助けたいんです
首尾よく頭部にたどり着き、ルナを引きはがすことができれば、集噛体の力がかなり弱まると思います。そうすれば倒すこともできるでしょう
……そもそも、やたらめったら破壊するだけが方法ではありませんよ
リー……
それに僕が同じ立場でも、自分の家族を信じます
たとえ構造体になったとしても……血のつながりというのは、身体が変わったくらいで消えるものではありません
それを戦う理由にするのは、当然のことじゃないですか?
ですから、グレイレイヴンの一員としても、僕個人としても……あなたの選択を支持します
私も……いつだってルシアを信じています
だってルシアは強くて、優しくて……
リーフ……
ガブリエルが言っていたように、飲み込まれたルナが集噛体に完全に消化されてしまったら……何もかもおしまいです
そして今、集噛体を止められるのは私たちだけ
ですから、どうかルシアも強がらないでください。たとえどんなに困難でも、皆で一緒に立ち向かうべきです
ルシアは微笑むと、リーフに向かってうなずいた。こうしてグレイレイヴンの皆が再び肩を並べた
もうすぐ集噛体の行動能力が回復します。急ぎましょう
はい、皆さんのために……全力で援護します!
集噛体の身体をのぼって、できるだけルナの居場所に近づきましょう
この先は完全に敵の射程内です。指揮官、指揮をお願いします
グレイレイヴン、任務開始します