都市の高台に立ったガブリエルがマップを眺めていた。マップのさまざまな場所に表示されている赤い点は、次第に街へと近づいているようだ
失敗したうえ、ネズミまでおびき寄せてしまったか……
信号遮断装置は正常に作動している。この地下施設、思いのほか使えるようだ
わざわざご足労いただき恐縮だが、ここで永遠に眠ってもらうこととしよう
ガブリエルの言葉に呼応するかのように地面が震え始めた。赤潮が地下水道を破って噴出し、みるみる広がっていく
街が赤く染まるのを後目に、ガブリエルは階段を降りた
……最後の一歩だ
075号都市廃墟、外周
こちらストライクホーク、ただいま075号都市外周に到着
周辺状況は良好、侵蝕体反応及び赤潮の反応は見られません。予定のルートで華胥の信号捜索を開始します
クロムは通信装置に手をかけて空中庭園に報告するかたわら、モニターに表示された情報を確認している
隊長、どうです?
通信状況は芳しくないな。加えて、都市に接近するにつれ、電磁波の干渉が激しくなっている。ここで一旦装備と機体の調整を行うべきだろう
……グレイレイヴンの連中もいるんですよね?
ああ、グレイレイヴンは東、我々は西からのアプローチだ。華胥の座標は5~10km範囲にしか絞れていないからな。こちらとグレイレイヴンとの距離もそれなりにあるはずだ
降下した他の小隊も華胥を探してるんでしょ?支援部隊、ワイルドアウル、ケルベロス……
都市の各方角から侵入しているはずだ
じゃあ負けてらんないな!
リーフには敵わないけど、俺たちストライクホークのレーダーだって超高性能だし。ですよね、隊長!
ハイテンションのカムイに対し、クロムは眉ひとつ動かさなかった
ゲームじゃないんだぞ。任務に集中しろ
わかってますって!俺、任務はいつも超絶真面目にやってるじゃないですか~!
言っておくが、我々ストライクホークの最優先任務は赤潮源流の捜索及びサンプルの採集であって、華胥ではないからな?
クロムは円筒形の密封装置を取り出した
これを使えば安全な距離を保ったままサンプルを採取できる。まずは赤潮を探すぞ
その時、通信の通知音が鳴った
ストラ……イクホー……ク、応答……
こちらストライクホーク。どうされました、ハセン議長
……状況は?
ハセンの声はとぎれとぎれだったが、かろうじて会話は成立した
作戦ルートに沿って赤潮及び華胥を捜索中です
君たちの任務は更新された。これ以降まずは最優先でグレイレイヴンを捜索してくれ
グレイレイヴン?何かあったんですか?
……それが厄介なことに彼らの状況を把握できなくなったのだ。あらゆる手段を講じたが、コンタクトを確立できない
つまり……
想定外の状況に陥ったのか、危機的状況にあるのか……
——あるいは任務目標にたどりついた結果、信号を妨害されているのかもしれん
現地の状況とグレイレイヴンの能力から鑑みるに、その可能性が最も高いだろう
我々とグレイレイヴンの距離は20km未満です。短波通信で連絡してみましょう
だめです……応答しない。個人チャンネルも予備チャンネルも全部試したけど
誰も応答しない
やはり直接捜索するしかないようだな
どのような状況であれ、おそらくグレイレイヴンも支援を必要としているだろう
最後に確認したグレイレイヴンの座標情報を送る。あとは頼んだぞ
了解しました
よし、急いで駆けつけないとだな!……あ!この位置、確か支援部隊の進行方向じゃないですか!?
ではまず支援部隊に状況を確認することとしよう
ストライクホーク、任務開始