安全区域に到着した?
あと300m!
200m!
間に合わない!
つかまって!
ヴァレリアが八咫の手をつかむと、八咫の体は宙を舞い、ヴァレリアを安全区域に向けて投げ飛ばした
そして、八咫は近くの壁を蹴って反動を利用し、前方に突進した
――ふたりは安全区域に転がり込んだ
シヴァ!侵入プログラム解除を緊急起動!
了解!
八咫とヴァレリアの姿は自律警衛が追いつく前に、バーチャル空間の中へと消えていった
…………
……以上が任務の過程でした
侵入に追いつけなかったのは、私たちの責任です
いや、君たちは任務をやり遂げた
え?
君たちは侵入者のバックアップだ。侵入者が任務を達成できない場合、彼が取りこぼしたものは君たちが回収しなければならない
……
……え、私たち、バックアップだったの?
任務を成功させるための手段だ
…………
何か問題でも?
ターゲットは一体、誰なんですか?
…………
現時点では「テストが必要な友人」とでも言っておこう。他のことは聞かない方がいい
わかりました、ではもうお聞きしません
彼は君に何を話した?
……特に何も
……そうか
では資料の回収任務は、引き続き君たちに任せたぞ
しかし私たちは彼を見失いました、再び情報を探すとなると……
情報を探す必要はない。彼はまだ情報部の資料室にいるはずだ。そこにはゲシュタルトと直接接続できる端末がある
時間的に彼はちょうど今、侵入を解除したばかりのはず。彼が使用する臨時端末は認知補正に時間がかかるからな
今なら突き止められるだろう。座標は送信しておく
……了解です
無駄口を叩かないのは君の最大の長所だな
……はい、私は何も聞きません
ヴァレリアは何も質問せずに、身を翻してその場を離れた
(……質問をしないことは、本当に正しいのだろうか?)