Story Reader / 本編シナリオ / 10 永久列車 / Story

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10-4 アディレの商品

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さて、早速ですが取引を始めましょう

深刻な状況に置かれた列車は折りに触れ激しく揺れるが、アストンという男は微塵の動揺も見せない

悠然とグレイレイヴンに歩み寄り、慇懃な礼をよこしてきた

そういえば先ほどの構造体も「取引」と言っていましたが……どういう意味でしょう?

何の予備知識もなく、ここにおいでになったのですか?

商人にとって、商取引より重要なことはございませんよ

どうやら、まったくもって状況を把握されていないようだ……

では、簡単にご説明申し上げます

私どもの知る限りでは、空中庭園の部隊が宇宙ステーションでの作戦時にある「重要なもの」を取りこぼし、それがこの列車に落下した

その通りです。ですから、是非私たちと一緒にそれを……

いえ。いたしませんし、させません。私どもと取引をしていただくまでは

あなた方の探し物は、私どもにとって極めて重要な「商品」ですから

異重合コアが「商品」!?……正気か!人間にとってあれは百害あって一利なし、だぞ!?

とにかく、こちらの条件は単純明快です。我々を空中庭園へお連れいただきたい

……なぜですか?

おわかりのはずです

遥かなる宇宙の空中庭園は、今最も安全な場所です。もちろん、我々を生かしてくれるこの列車も悪くはありませんが……

真の安全を手に入れるには、空中庭園に行く他はありません

いかがですか、空中庭園の指揮官。取引してくださいますか?

では、権限をお持ちの方にご連絡をお願いいたします。早急にお返事をちょうだいしたいのですが。さもなければ……

ははは!案の定だ。こちらも好都合というもの

商品は昇格者にお受け取りいただこう

待ちなさい。お返事をお待ちするという話になっていたではありませんか……

ここまで沈黙を守っていた指導者が、男の言葉に対して突如反駁する

おわかりにならないのなら、口を挟まれるな。空中庭園は――到底、昇格者には及ばないのです

ヒース様。ジャミラ王女はアディレ商業連盟の現指導者です。アディレの一員として、敬意を払っていただきたい

ちっ……これは失礼いたしました

あなた方の事情はわからないが……昇格者のお仲間ということか?

ビジネスに敵も味方もございません。私どもが今こうしてる間にも、この列車は着々と昇格者との取引場所へ向かっているのです

私どもは商人、取引によって利益を得ることを目的とする者。商人にとっては、空中庭園であろうが昇格者であろうが、同等の取引相手にすぎません

お聞きになられたように、ヒース様がご提案された取引相手は昇格者です。それに対して私は、選択肢を増やそうとしたまで――

ええ。あなた方がご快諾くだされば、列車もパニシングが溢れる危険な場所に「納品」しに行かずに済みます

聡明な空中庭園の皆様にはおわかりいただけるでしょう。明らかなWin-Winの状況ですよ

無論、取引成立の暁にはあの方々の一員として加わるつもりでおりますよ。今の時代、「自由に出歩ける」ということの商品価値は絶大です

ふん、昇格者になれる確証はないだろ!

お前たち平民の戯言に耳を傾ける者はいない

――――

おそらくは、異重合コアが……

どうやら、後部の平民車両が侵蝕体に襲撃されたようですね

なっ……では、ここも危険なのでは!?早く前方の車両へ逃げなければ……!

ヒースの言葉に、他の貴族たちも恐慌状態に陥った

目の前の指導者を無視し、なりふり構わず前方の車両目がけて走っていく

……ひとまずは、退避した方がよさそうですね

ジャミラ様、私について来てください

……うん

……あのアストンという男の方が、よっぽど指導者然としていますね

呑気に観察している場合ではありません。指揮官……

はい、全力を尽くします!

リーと私で前方の侵蝕体を牽制します。リーフは後方で救助を

ソフィア、お願いできる?

わかってるよ

え、俺は?

……ジャミラ様。少なくとも人前では構造体を使わないよう、お諌めしたはずですが

常羽、あなたは行ってはいけません。こんな時に構造体が出払ってしまっては、貴族派たちがまた騒ぐでしょう

ちぇっ……!