ギギィ――!!!
キィ……
指揮官、こちらです……
ルシアは移動中も警戒を怠ることなく戦い続けている。冷静な視線で周囲を確認し、侵蝕体を次から次へと切り倒していく
どうされましたか、指揮官。私について来てください。さあ、早く
……
……すみません、指揮官。今の私は、少し……変でしたよね
意識海の偏差が……起こり始めているのかも……
指揮官……
了解しました
指揮官との交流は意識海を安定させる効果があると、聞いたことがあります
……
ですが……今の状況では指揮官の身に危険が……
……わかりました。私は指揮官の後衛に徹しますね
束の間の安寧から、ようやく目的地へと到着した――廃墟の影に隠された場所だ
影の中には不服そうにしている少年と、
何かしらに戸惑っている小柄な少女が立っていた
ルシア、酷い怪我です……!それに指揮官も……!
私は大丈夫です。痛覚信号を遮断したので、まだ任務は続行できます
そこまでするなんて……
まったく度しがたいですね
ですが、私たちは無事生き残りました
結果論ですよ。ルシアは激しく破損して、最重要である僕たちの指揮官も危険に晒した。リーフまで戦闘不能の状態です。
リーフも……?
ごめんなさい、さっきの一撃で出力したエネルギーがフロート銃の許容限界だったみたいで……コアが焼き切れてしまいました……
で、でも、演算能力は提供できますし、情報支援も可能です!
はぁ…………
リー、その手はどうしたんですか?
手?
ああ、フロート銃のコアを都市電力ネットワークと接続した時に焼けただけです。外観だけの影響なので気にする必要はありません
リーさん……
そうだ、指揮官――
もしかしたら必要になるんじゃないかと思って、血清をいくつか拾っておきました
どこで拾ったのかは聞かない方がいいですよ?恐らく、ご想像の通りですから……
……とにかく、ルシア。侵蝕体の襲撃は乗り切りましたが、このありさまです。作戦の練り直しを推奨しますが
一旦状況を整理しましょう。私たちの任務は、15号都市の奪還
侵蝕体の掃討後に工兵部隊が始動し、15号都市を地球奪回戦線の新拠点とする計画です
リーの言う通り、今の私たちの状態は芳しくありません。まずは付近の補給小隊と合流するべきでしょう
更新したマップによれば、近くの教会を通過するのが合流ポイントへの最短ルートです——まずは教会へ向かいましょう
う……!!
教……会……
どうかしましたか?
いえ、なんでもありません。既視感を覚えただけです……
時々……こうなるんです……
人類の思考を模倣したのが意識海システムです。思考の混乱が生じるのは、別に珍しくありませんが……
さまざまな戦地を渡り歩いてきたことが原因では?あなたは戦闘経験が豊富ですからね
経験豊富なのはあなたも同じでしょう、僕たちの指揮官殿?
経歴におかしなところはありませんが、どうにも腑に落ちません……
……まあ、詮索するのも野暮ですかね。誰しも隠したい過去のひとつはあるでしょうから
リー……
私はもう大丈夫です。行きましょう