Story Reader / エターナルユニヴァース / 霧に啼く挽歌 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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宿命に追われ

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ロラン卿の権威を借り、αはあらゆる関門を越え、聖女の下へとたどり着いた

女爵が復讐の成就を祈り、跪いたその時――腰にある鞘がじわじわと熱を帯び始めた。その刀は、常に彼女の殺意と共鳴している

子よ。あなたの望みを話してごらんなさい

肩を揺らして腹を押さえるαは、痛みをこらえているかのように見える。しかし、天を突くような高笑いが響き渡った

私の望みは「死」

ジョヤ·ニヴィリア――あなたの死を望むわ

まあ大変……取り憑かれてしまったのね

その名を聞いてなお、聖女は動じなかった。彼女が聖具を掲げると、信徒たちが進み出た

ショールが滑り落ちる。頭を上げたαの異色の瞳は宝石のように輝き、獣の角には薔薇色の光が滲む。紅に染まる白い髪の先が、炎のように舞い上がった

女爵様でしたか。本来ならばここであなたを裁くべきではありませんが……その魂はあまりにも邪悪と深く結びついています

聖具から光が放たれ、密室に風が生まれた。聖女の衣は翻り、シャンデリアは炎のように揺れ、ピアノは見えぬ手に奏でられる。遠くでは子供の泣き声が響いていた

至高の名を代行して命ずる――魔鬼の名を告げよ。それにより祓われるであろう

ジョヤ·ニヴィリア――13歳の時、窃盗が親に知られ、屋根裏に軟禁されたのち、深夜に家を放火して逃亡。その後、記憶喪失を装って修道院に潜り込んだ

至聖の実を代行して命ずる――魔鬼の名を告げよ。それにより赦されるであろう

ジョヤ·ニヴィリア――19歳の時、修道院の帳簿を偽造して利益を得ていた。発覚後は院長を陥れ、全ての罪を押しつけた。院長は調査中に絶望したのち自死……ジョヤは逃亡

聖女は冷笑を浮かべ、聖具をαの背に叩きつけた。針が突き刺さり、薬剤が流れ込む。その瞬間、αは狂った獣のようにもがき始めた

やがて力を失い、床へと崩れ落ちる。黄金の光に包まれたその姿は、百合や子羊といった祭壇の供物のようだった

至美の証を代行して告げる――この者はもはや手遅れ……火刑のみが魂を清めることができましょう

目の前の女が消えれば、自らの秘密も再び「秘密」となる。必要とあらば、この場にいる者全てを道連れにしても構わない

火を放つ前、聖女は身を屈め、耳元で囁いた。それは毒蛇が舌を震わせるような、掠れた声だった

死ぬべきなのはあなたよ。新しい服も買えない親、私の目をまともに見ようとしない院長、金儲けのことしか頭にない調査団と同じようにね

どうしてあなたたちみたいな厄介者が、次から次へと現れるのかしら……私だって手を汚したくはない。でも、あなたたちがそうさせるのよ

見なさい、私の背後に立つ神像を。あの御方はいつも私の味方。どんな危険に見舞われても、私はその度に逃げおおせた。祈れば許してくださるの

……いいえ、私は許さない

αは目を見開き、手にした刀を聖女の胸へ突きつけた

女爵に薬など効くはずがない。先ほどの一幕は、罪を吐かせるための演技――αは罪人の自白を、その耳で聞きたかったのだ

神があなたを許すことを、私は許さない

後退する聖女の裾を、女爵が押さえつける。追い詰められた聖女はとっさにローブを引き裂いて逃げ、蔦に侵された異形の下半身が露わになった

ホールに絶叫が響く。民衆が一斉に扉へ殺到したが、信徒たちは扉を固く閉ざした

聖女は蔦を絡ませて壁を這い上がり、逃げようとしていた。しかし女爵が1歩、また1歩と詰め寄り、蔦を斬り落としながら逃げ道を断っていく

なぜ、そこまでして私を追い詰めるの?

異種なら、人間よりも妖異である私たちと同類でしょう?

答えはなかった。女爵は宙へ跳び、刀でその心臓を貫き、聖女を壁へと磔にする

私を殺したところで、あの連中があなたに感謝するとでも?

彼らは更にあなたを嫌悪し、恐れ、恨むだけ。せっかくの安寧を壊された、とね

真の英雄を嫌い、偽りの聖女を崇める。ほんの少し甘い餌を与えれば、全てを差し出す……それが人間よ

死になさい

あなたの罪は、他の誰とも関係ない。審判に来たのは、ただ――

女爵はローブから1枚の金貨を引き抜いた。唇を噛み、滴る血を金貨に塗りつけ、聖女の額へと貼りつける

金貨を見た瞬間、彼女の呼吸が乱れた。逃げ場のない死の圧力が迫る。今日の清算は古き歳月の中で予告されていた

命の終わりの淵にて、ジョヤはようやくその名を思い出した

ル……ルシ……

名は最後まで紡がれず、微かな息となって消える。聖女は喉を締め上げられ、滞った血が湿った窒息をもたらす

私はα

血をもって契り、金をもって命を買い取る……この名において、あなたを裁く

ジョヤ·ニヴィリア――地獄へ堕ちなさい

24歳の時に詐欺罪で逮捕。出獄後は組織に仕え、シスターの名を借りて子供を誘拐。全ては「異種」計画のため

943人の子供、生存者はごく僅か。一番幼い子は1歳になったばかり、最年長でも14歳に満たない

実験の本質は子供を霧の中へ投じること。極限の苦痛の中で霧化し、その中でごく僅かな個体だけがより高い耐性を示す

その一部は、更に実験を続けられる。人間の理性を保ったままの怪物――異種が生まれるまで

組織は「血の選別」と呼んだ。選別されるのは進化した人間か、それとも堕ちた怪物か……私は何度も考えた

答えは明白――怪物よ。神の権能を掌握せんとする妄想は、結局贋作しか生み出せない

あなたは孤児に「お母さん」と呼ばれるのが好きだったわね。幼き命を積み上げ、金の山を築く慈悲深い母よ……彼らに会いに行きなさい。地獄で彼らを育てるがいいわ!

炎に焼かれた魂たちが口付けを求めて這い寄ってくるわ。ほら、泣き声が聞こえるでしょう?

αはゆっくりと暁光を引き抜いた。傷口から溢れ出たのは血ではなく、無数の糸――女爵が眉を寄せたその時、背後から蔦が伸びてきた

蔦は力を溜め、女爵の心臓めがけて襲いかかる。気付いた時には、すでに眼前に迫っていた。女爵が身を翻すと、蔦は肩へと突き刺さる

戦況は一変した。αは即座に刀を肩へ突き立てると、残った蔦を断ち切る。そして瓶の口を噛み開け、刀を抜きながら後ろへ跳躍した

その動きに合わせ、琥珀色の酒が戦場に流れた。蔦は空中で狂ったようにうねり、αの影を追い続ける。だが彼女はあまりにも速かった

着地した女爵はランプを拾い上げ、幕に火を放った。瞬く間に広がる炎は暴走する聖女に燃え移り、彼女の最後の抵抗を完全に焼き尽くした

聖女様が殺された……

神への冒涜だ……

信徒たちはαに襲いかかった。その動きは走る姿勢から四つん這いへと変わっていく。体は硬直し、目は虚ろになる。人から獣への変異は、何の前触れもなく始まった

こいつら、霧の怪物に変異したぞ

ったく、ここで待ち伏せしてたのか?まあ霧はないし、逃げるか

信徒たちは鬱陶しいが数は多くない。民衆は女爵の背後に集まり、この場から逃げ出そうとしている

向こうの扉に向かって。そこに信徒はいないわ

炎はなお燃え広がり続けていた。息苦しい熱気と圧迫感に追い立てられ、人々は何度も扉へ突進する。やがて鉄の扉が開くと、民衆は一斉に押し出された

混乱の中で婦人が倒れ、幼子の骨が地に散る。彼女は這い寄り、それをかき集めようとした

やめて、踏まないで!

私の子が泣いてるじゃない……聞こえないの!?聖女様……

聖女の名を口にした瞬間、婦人ははっと凍りついた。押し寄せる民衆、這い回る信徒――そして、炎に包まれた樹状の霧の怪物を見た

この狂気に侵された世界は、すでに霊視の境界へと近付いていた。婦人は呆然とした表情のまま、見知らぬ者に腕を引かれて連れ去られた