Story Reader / 叙事余録 / ER15 あたたかな余光 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER15-9 逝く者去る者

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メンバー宿舎休憩室

エゼット

……カムイ、どう思う?母さんは来るかな?

3人はテーブルを綺麗に整えた。カムイはカトレフにプレゼントがきちんと置かれているか確認させている。アジャールは楽しげなふたりを見ながら、心の中の不安を口にした

――大丈夫、俺は信じてる。母さんはきっと来る

「バキッ――!!」

ドアの音が響き、3人が目を向けるとオーディンリーがいた。壊れたドアノブを握りしめ、申し訳なさそうに床を見つめている。その背後でエウリディケが密やかに笑っていた

うっ、えっと、その、部屋に入るのは久しぶりで、ノブをどっちに回すか忘れちゃって。何度かちょっと回しただけ

――こんな壊れやすいとは思わなかった!ちょっとひねっただけなのに!後で新しいのを買ってくるから

ようやく全員が集まりはしたが、また妙な沈黙が流れた

……母さん、父さん、ごめんなさい

まずカムイが一番に沈黙を破った

この前……あんな態度で話すべきじゃなかった

オーディンリーは近付くと何も言わずに、カムイとアジャールの頭を優しくなでた。彼女の後ろにいたエウリディケは、黙って隅に立っていたカトレフをそっと引き寄せた

謝らなきゃいけないのは私たちよ。あなたたちに心配をかけたわ

あなたたちのために何もかも準備しておこうって思いすぎて……あまりにも焦りすぎたの。かえって逆効果になって、いろいろ考えが足りなかった

母さん、じゃあ、あのバーリーコーン計画は――

……もう少し考え直してみるわ。それでいい?まだいくつか危険がありそうだから

――でも約束する。今回は絶対に隠さずに、ちゃんと本当のことを言うから

アジャールはなおも言いつのろうとしたが、カムイに引っ張られた

……母さんと父さんの性格は知ってるだろ?今はまだ絶対に賛成しないよ

大丈夫さ、時間はある。もしかしたら、俺たちがもっと強くなれば、ふたりの態度も和らぐかも

……そうだよな、わかった。こだわり続けても、無駄な争いを繰り返すだけだしな

まあいい。これからの日々はまだ長い……

……ふたりとも、何をこそこそ話してるの?お祝いしてくれるんじゃないの?

オーディンリーはエウリディケの方に歩き、彼の手から箱をひとつ受け取ったついでに、おとなしく立ったままのカトレフの頭をなでた

ほらこれ、持ってなさい。前に小型の通信機が欲しいって言ってたでしょ?あなたたちの言った通りに改造しておいたわ

オーディンリーが手にした箱をテーブルの上に置き、蓋を開けると、小型の機械が中から飛び出した

ご主人様、こんにちは!!私は!クッキーです!!

権限設定!!完了!!クッキーはカムイ、アジャール、カトレフの!!共用通信機です!!

これ、たくさん、しゃべる

ええ、あなたが言う希望通りにプログラムを設定したわ。うまくいったでしょ?

わぁ!本当にクッキーって名前なのか!?へへ、その名前、いい感じだ

……名前はお前がつけたんだろ、カムイ?

他に何かいい名前があるのか、アジャール?今なら、カムイと相談して修正できるかもしれないぞ

……嫌だ。それに、なんで母さんの誕生日なのに、俺たちにプレゼントをくれるんだ?

――どうしたの?欲しくないの?じゃあ、もう要らないわね

あ、欲しい欲しい!!ほら、カトレフがあんなに喜んでる。絶対に手放さないと思うよ

うん、気に入った

ほら、気に入ったなら――

「ウ――ウ――」

言いかけた約束の言葉は、突然鳴り響いた警報音に遮られた。皆が警戒しながらそれぞれの通信機を見つめている

――最高レベルの警報だ!

第1防衛線、第1防衛線!!何が起こったの!?

オーディンリーの通信機器からザザッという雑音が響き、接続した。相手の声の背後に騒がしい音が混じっている

ザ――ッ!侵▇▄█▅蝕体――ザ――ッ!突破!!

基地▇▄▆▃本部に――ザ――ッ█▄▆接近中!!

オーディンリーは急いで各防衛線の図面を確認した。外周のいくつかの防衛線はすでに陥落しており、大量の暴走した侵蝕体がエゼット本部を目がけて押し寄せていた

クソ、なんでいきなりこんなに多くの侵蝕体が突然押し寄せてきたの――援軍は!?

……世界政府からの先ほどの知らせでは、援軍にいくつか予想外の問題が発生し、予定より遅れて到着するとのことだ

――今は彼らを頼れない

オーディンリーはすぐに外周での戦闘に向かう準備を始め、3人の少年もそれに続こうとした

あなたたちは行かないでいい!!

オーディンリは急いで彼らを止めた

他の子供たちを避難室に連れていって。あそこは安全だから

――ふたりはどうするの?どうして一緒に来ない?

……よく聞いて。あなたたちは先に避難室に行って。他のメンバーを救出したら、戻ってきてあなたたちと合流する

……

わかった。アジャール、カトレフ、行こう!

3人はオーディンリーの約束の言葉を聞いて、彼女に言われた命令を実行するため、ようやくその場を離れた

外部の騒乱は徐々に内部に波及しつつあった。エゼット基地の建物の中ですら、カムイたちは時折震動を感じ、微妙なパニシング濃度を感じ取っていた――敵が近付きつつある

速く走れ、もっと速く!!

――カムイ!今お前が連れているのは何組目だ?

最後の1組だ!カトレフが中で人数を数えてる!!

全員、揃った、不明者、なし

彼らを一番奥に退避させろ!もしさっきみたいに突然侵蝕体が現れたら、また誰かが怪我をする!

……母さんと父さんは?精鋭部隊が誰ひとり戻ってこない!!

呼びかけても反応がない――行こう!彼らがいるのは廊下だ、直接向かって支援する!!

支援ってなに【規制音】言ってんのよ!しっかり隠れてろって言ったでしょ!!

オーディンリーは重い音を立てながら隔離扉を閉めた。ふたりが廊下で侵蝕体と対峙していた時、突然、カムイが叫びながら駆け寄り、他のふたりの子供たちも後に続いた

そのため、少し焦りながらも彼らは最終的にはなんとか協力し合い、無事に避難室の前まで撤退することができた

――母さん、他の人たちは?こっちに向かってる途中?

もし支援や協力が必要なら、俺がもう1度外に――

うっ!?痛っ!!

オーディンリーはカムイの頭をバシンと叩き、彼の前に立ちはだかった

彼らはもうすぐ来る。あなたはじっとおとなしくしてなさい!勝手に動かないで

……オーディンリー

エウリディケと目を見交わしたオーディンリーは、彼の目に浮かぶ合図を理解し、数秒ほど黙り込んだ。しかし、すぐに気を取り直し、背後の3人の少年たちに命令し始めた

……ほら、ちょうど彼らから連絡がきた。すぐ到着するって

あなたたち3人は先に避難室に入って、皆を奥に避難させて。前のスペースは彼らのために空けておいて

一緒に来ないの?

皆で入ってしまったら、誰が外の人を迎えに行くのよ?いいから早く入って。間に合わなくなる

……じゃあ、俺が一緒に迎えに行く。アジャールとカトレフは残って避難担当だ

駄目――!!3人とも、全部避難室に入ってなさい!言うことを聞きなさい!!

子供たち、もう間に合わなくなる。誰かが中で他の人たちを守らなければ

約束する、彼らを迎えに行ったらすぐに戻る。約束だ、決して約束は破らない

いいから!さっさと入って!!全員が安全通路に集まっているんだから、もう何も心配することないでしょ?

少年たちは顔を見合わせ、最終的には指示に従い、中で人々を避難させることに決めた

中にいる人々を安全に誘導したあと、彼らは一緒に避難室の入口に戻ったが、扉はすでにしっかりと閉められていた

アジャールはハッとしたように、駆け寄って扉を開けようとしたが、びくともしない――扉はすでに外からロックされていた

カムイ

母さん――母さん!!父さん!!早く入って!!

カムイは唯一の防護ガラスの前に駆け寄った。彼はガラスに張りつき、手で何度も叩きながら、彼らの注意を引こうとした

カムイ

――母さん!!父さん!!何してるんだよ!?

……どう、エウリディケ

ロックは完了した。今から、この扉を開けることができるのは、俺たちふたりと世界政府だけだ

外部からの侵入さえなければ、ここは……もう誰も開けることはできない

カムイ

――何言ってるんだよ?一緒に入るって約束したのに!!

開けて――早くドアを開けてッ!!!

……カムイ、アジャール。そして、カトレフ

オーディンリーが近付き、その手をガラス越しにカムイの手に重ねた

これは母さんと父さんの……最初で、そして……最後の嘘

心配しないで、世界政府の援軍が向かっている。援軍が到着すれば、あなたたちは大丈夫よ

侵蝕体はもう通路の外側まで突破してきている。でも怖がらないで。私たちが外で守っている限り、避難室は絶対に安全だから

万が一のことがあれば……エゼットは、あなたたちに託す

絶対にエゼットの信念を忘れてはダメ。私たち全員が守り、戦ってきた、最も大切な信念だということを忘れないで

……私たちのために悲しまないで。カムイ、アジャール、カトレフ

これは別れじゃない。私たちはいつもあなたたちとともにいる、永遠にね

エゼットは、あなたたちに託すわ……だから、これからはもう泣かないでね、いい?

……私たちは永遠にあなたたちを愛しているわ、そして

オーディンリー

ごめんね

オーディンリー

……

オーディンリー

防護ガラスの遮断壁のスイッチは内側にある。忘れずに……それを見つけて、押すのよ

カムイ

……できない!

カムイ

ふたりの後ろの扉――もう壊されそうだ!!出してくれ、一緒に戦わせてくれ!!

――母さん!!――父さん!!

「バンッ――」

カムイの叫び声が一瞬消え、血がガラスの表面に飛び散った。幸い、防護ガラスが彼らを守り、血が降りかかることはなかった

カムイ

母……さん?父さん……

彼は呆然とその場に立ちすくんで、動けなかった。隣で必死に扉をこじ開けようとするアジャールとは対照的だった

カムイが本能的に武器を取って突進しようとした時、背後に立つ人々の姿がガラスに反射した――外には出られないのだ。目の前で起きた全てを無駄にはできない

そのあと、アジャールも足掻くのを諦めた。彼は顔を覆って地面にうずくまり、低い声で泣きながら、震える声でカムイに頼んだ

アジャール

カム……イ……閉じてくれ、遮断壁を……

もう、見たくないんだ……

もう聞きたくない……もう、これ以上見たくないんだ……

カトレフはひざまずいてアジャールを抱きかかえ、アジャールの耳を塞いだが、彼自身もこらえきれずに涙を流していた

皆、心の苦しみと痛みを直視できず、カムイが遮断壁を閉じることを望んだ。響く殺戮の音。怒号、絶叫、警報が、彼らの掠れた祈りや嘆きをかき消している

「ガタン!!」

カムイはぐっとスイッチを押し、遮断壁を閉じた

カムイはそれからしばらくの間、アジャールとともに部屋に閉じ込もって過ごしていたことを覚えている

彼らは何度も両親と一緒に録画した映像を見返していた。訓練、遊び、記念日。見終わればまた再生した。永遠に結末を迎えない物語のように

そこにいる両親は完全で、何事もなく、生き生きとしていた

血が流れることもなく、傷つけられることもない

彼らは映像が現実だと思い込むことを選んだ。まるでオーディンリーとエウリディケがまだ生きているかのように

小さい頃、カムイは暗闇が苦手だったことを覚えている。いや、怖がっていた

子供の頃、彼はいつも泣いて誰かに添い寝してもらい、寝る時は必ず灯りをつけたままにした。彼は暗く湿ったものを嫌った。そこは、道も他の人も見えず、自分も見えないから

彼は暖かく自分を照らす昼間の陽光が一番好きだった。その下では、全てをはっきりと見ることができた。愛するもの全てを

オーディンリーとエウリディケを失ってからの日々が、逆に彼がこの恐怖を「克服」するきっかけとなった

真っ暗な部屋に、録画再生機器の光だけがあった。彼はぼんやりと座り、両親が映るスクリーンを見つめていた。まるで地下で生活していた人が、ようやく太陽を見たように

両親は戦い、訓練していた。カムイは立ち上がり、彼らの動きを真似た――無意識に両親の足跡を探し、そこに自分の足を置き、彼らのような太陽になろうとした

しかし彼は足をもつれさせ、激しく地面に倒れ込んだ

彼は暗闇の中で這い回り、こんな環境で生き抜く術を学ばなければならなかった。カムイの暗闇に対する敏感さは、その時に「克服」された

カムイはもがきながら立ち上がったが、すでに機械は停止し、彼らの姿を見ることはできない。彼は目を閉じて彼らに関する全ての記憶を思い起こし、得意の真似遊びをした

前進

後退

逆行

そしてついに見失った

彼の手ではない、誰かの1本の手が差し伸べられ、カムイは無意識に自分を委ね、相手が引っ張るに任せた

彼はその部屋を出て、得ること、失うことを繰り返して経験した現在へと戻った

……[player name]?

大……丈夫

……ああ、あんたの言う通りだ

どうであれ――今となってはもうすぎたことだ

彼らはもう……いない

よく考れば、もうずいぶん昔のことなんだな

ただ思い出しただけで、その過程をもう1度体験したみたいになってた

失って、見つけて、また一瞬で失ってしまう

カムイは再びモニターを見つめ、ファイルのページをオーディンリーとエウリディケの写真が見えるまで、下にスクロールした

彼は何年も更新されていないこの2枚の写真を見つめ、かつての彼らの姿を懐かしもうとした

――!?

突然、画面に点滅する警告灯が思い出から引き戻した。カムイは即座に監視画面を呼び出したが、多くの監視装置は故障している。しかし資料室周辺のいくつかは稼働していた

侵蝕体がここに侵入してきた!

画面の隅に2体の侵蝕体の影がさっとよぎった。彼らは資料室周辺の通路を歩き回りながら、明らかにこちらの方向へ向かってきている

休息は終わりだ。ふたりは侵入した侵蝕体の痕跡を追う準備をすぐさま整えた。しかし、なぜかカムイは少しためらったあと、再び画面をじっと見つめ続けていた

――気のせいだろうか?でもあの動きは……

たいしたことじゃないんだ、ただ――

行動にいくつか不自然な特徴がある。偶然じゃなく、習慣的な行動っぽい感じの

あの特徴……なんだか、見覚えがあるんだ