赤いローブを纏った来訪者は、警告を無視して前へと進み出た。リーフは雷翅を放ったが、刃は霧を裂くようにすり抜け、相手の体を虚しく貫いていく
幾重にも重なった、数えきれない声。判別もつかぬ音が混ざり合い、人ならざる低い響きとなってふたりを取り囲む
願いを取り戻すなど、無駄なこと……
未来に希望を抱き、故郷に未練を残し、ともにいることへ執着する限り、この深紅は影のように付き纏う。お前たちはいずれ必ず、望んだもの全てを失うことになる
もう諦めろ。我々の一部となり、ここに留まるのだ。大切な者とともに眠り、永遠の冬に沈むがいい……
1歩踏み出し、リーフと肩を並べる。そして、彼女の手を強く握った
如何なる存在であっても、私たちから選ぶ権利と勇気を奪うことはできません
銀髪の少女は、まっすぐに顔を上げた。苦界で松明と雷光を掲げ続けてきた彼女は、もう迷わない
ここの真の創造者として、「スノードーム」の舞踏会へご招待いたします
私と[player name]で証明しましょう。たとえあなたが全ての力と絶望を連れてこようとも、私たちの世界を砕くことはできないと
言葉は交わさず、リーフと見つめ合う。その瞳の奥には揺るぎない自信が満ちていた。彼女はこちらを励ますように、そっとウインクする
こんなことが……許されるはずが……
無貌の影が激しく揺らぐ。声と言葉が乱れ、仮面の奥で争いが起きているかのように錯綜したのち、やがて安定した
傲慢な人間どもよ……応じよう
我らを呼べ。さすれば、約束を果たしに現れよう……
その姿は、現れた時と同じように虚空へと消えた。禍々しい力に歪められていた視界も、ゆっくりと澄み渡っていく
ひとまず退きましたね
急いで準備しないといけませんね
「その美しさが、如何なる悲しみにも侵されないほど強くなるまで」……教授が言っていた通りです
行きましょう、指揮官。あなたと私の心に思い描く、本当の楽園を築くために
宮殿の門前
「スノードーム」世界
氷柱や霜花が茨に変えられた時、急激に成長したのでしょうか?道がすっかり覆われていますね……
舞踏会を開いて客人を迎えるのですから、道や庭の第一印象が重要です
もう少し剪定しましょう。できれば、特別なデザインを取り入れたいですね
銀髪の少女は考え込み、人差し指で唇をトントンと叩く。そして、何か思いついたように目を輝かせた
指揮官、片側ずつ剪定しませんか?お互いのデザインは完成するまで見ないこと。終わったら同時に振り向いて、最後のお楽しみにしましょう
これをお使いください
銀髪の少女は鏡輪を召喚した。花弁のような4枚の刃が目の前で組み合わさると、即席の「ハサミ」となった。軽やかな音を立てて、本物のハサミのように開閉している
この世界のルールを少し変えました。今は鏡輪もあなたの命令に従うので、剪定のデザインを心に思い描いてください
では、始めましょう
「園芸アシスタント」たちに囲まれながら、担当する茂みへ向かい、イメージを描く
湖畔の白鳥の彫像と、リーフの装いが脳裏をよぎる。すると「ハサミ」が意のままに動き出し、目にも止まらぬ速さで枝葉を整えていった
あっという間に、生き生きとした白鳥の植栽が完成した。翼を広げて飛び立とうとするもの、首を優雅に曲げて佇むもの。宮殿の建築様式とも見事に調和していた
以前、リーフがくれた羊型のクッキーが脳裏をよぎる。すると「ハサミ」が意のままに動き出し、目にも止まらぬ速さで枝葉を整えていった
あっという間に、生き生きとした子羊の植栽が完成した。花と葉でできた白い毛並みは自然で、雪の上で丸くなって眠るものもいれば、元気よく跳ね回るものもいる
まだ手つかずのようで、視線をリーフの背中に落とす。滝のように束ねられた長い銀髪が思案に合わせて軽やかに揺れ、思わず見入ってしまった
……指揮官、バレバレですよ
銀髪の少女の耳先に、ほんのりと赤みが差す
今回は許してさしあげます
今からは集中してくださいね?
そう言って、リーフは「ハサミ」を操り始める。こちらの構想もだいぶ形になってきた
湖畔の白鳥の彫像と、リーフの装いが脳裏をよぎる。すると「ハサミ」が意のままに動き出し、目にも止まらぬ速さで枝葉を整えていった
あっという間に、生き生きとした白鳥の植栽が完成した。翼を広げて飛び立とうとするもの、首を優雅に曲げて佇むもの。宮殿の建築様式とも見事に調和していた
以前、リーフがくれた羊型のクッキーが脳裏をよぎる。すると「ハサミ」が意のままに動き出し、目にも止まらぬ速さで枝葉を整えていった
あっという間に、生き生きとした子羊の植栽が完成した。花と葉でできた白い毛並みは自然で、雪の上で丸くなって眠るものもいれば、元気よく跳ね回るものもいる
私もできました
振り返ると、銀髪の少女は小さく咳払いし、1歩横へ退いて作品を披露した
茂みは、可愛らしい小動物たちの形に剪定されていた。カエル、足の長い猫、子羊の3匹が、小さなカラスを囲んで踊っている
私の心にある優しさと温もりは、グレイレイヴンがくれたものです
彼女は道の中央へ歩み出て、両手で四角いフレームを作った。そして、きらきらとした瞳でこちらを見る
指揮官、こちらに来てください
動物というテーマは同じでも、表現が異なっています。ですが並べてみると……ちゃんと調和されていて、互いに引き立て合っています
そうですね
アイデアが次々と湧いてきます……この宮殿で、ひとつずつ叶えていきましょう
柔らかな指先が、こちらの手の平へ潜り込む。そのまま彼女は階段へと駆け出した。まるで伴侶と連れ立って帰る小さな鳥のように、弾む足取りで
かつて彼女は言った――家とは、住む場所のことではない。愛する人の傍こそが、家なのだと
けれど、ふたりの想いを全て包み込めるほど大きく、扉を閉めれば世界がふたりだけになるほど小さな「愛の巣」を、誰が望まずにいられるだろう
壁のレンガは、ストロベリークッキーとホワイトチョコのどちらがいいと思いますか?
では、どちらも使いますね
指揮官がレンガに手を出さずに済むように、十分なお茶菓子を用意しておきますね
舞踏会が始まる前に、階段や廊下の位置をランダムに入れ替えたら……紅の魔導士も迷い、そのまま怒って帰ってくれるのでは?
目の前の戦術マスターに、日頃からご指導いただいていますから
褒め言葉として受け取っておきますね
出窓の側には厚手のクッションを敷き詰めましょう。ですが……私たちが寝転んで、抱き枕を置けるスペースは残しておきましょうね
髪を下ろしたら、あなたに優しく梳いてもらって……他愛もない話をしながら、気付けば寄り添って眠りに落ちるのも悪くありませんね
螺旋階段とテラスを抜け、寝室から広間へと歩く
願いが実体化したこの宮殿の隅々までを、リーフと手を繋ぎながら巡る。ふたりで「家」を築き、ともに生きる暮らしを少しずつ積み上げていく
やがて門前へ戻る頃には、宮殿は見違えるほどに生まれ変わっていた。そこかしこに、ふたりの心が重なった痕跡が残っている
氷や雪もとても美しいですが、「スノードーム」は冬に留まりすぎました。そろそろ、別の色に変える頃ですね
ですが、春を迎える前に……ずっと前からやってみたかったことがあるんです
その薔薇色の瞳に、いたずらめいた光が跳ねる。少女ははっきりとは言わず、首を傾けながら爪先立ちになり、ついてくるように合図した
3つの願いが解き放たれた「スノードーム」に、もう寒さはない。湖畔に沿ってしばらく歩くと
先を行くリーフがふいにしゃがみ込み、雪の中でゴソゴソと手を動かした
指揮官、いきますよ!
声が終わるか終わらないかのうちに、彼女はくるりと振り返る。シュッという音とともに、柔らかく丸められた雪玉が、正確な軌道でこちらへ飛んできた
反射的に腕で防ごうとしたが、粉雪が襟元へ入り込み、ひやりと冷たい
数歩下がった張本人は、もう次の雪玉を手にしている。姿勢は相変わらず優雅だが、目元に浮かぶいたずらの成功を誇る笑みは隠しきれていない
ちゃんと予告しましたよ?
身を屈めて素早く雪玉を丸めながら、視線はずっと「標的」を追っていた
リーフは笑いながら後ろ向きに駆ける。雪原の妖精のように軽やかに、あっという間に木立の陰へ隠れた
顔を半分だけ覗かせ、こちらの様子を窺っている
狙いを定めて投げる。雪玉は弧を描き、見事に木立へ命中した。雪煙が舞い上がり、彼女の銀髪は氷上に反射する陽光よりも輝く
今のはノーカウントです!現在、リーフが1点リード!指揮官、頑張ってください!
湖畔の空き地は、いつしか即席の「戦場」へと変わった。まばらな低木の間を縫い、雪玉が行き交う
雪を丸める少女の真剣さは、園芸を研究している時に匹敵する。だが、当たる寸前にはひらりと身を躱す
彼女の反撃が飛んできた瞬間、ふと閃いた。避けずに、そのままの勢いで後ろの雪の上へ倒れ込む
[player name]!
リーフは瞬時に距離を詰め、身を屈めてこちらの様子を確かめようとした
彼女の腕を掴み、ぐいと引き寄せる
きゃっ……!
体勢を崩した少女は、そのままふかふかの雪へ倒れた。長い髪がさらりと広がり、ヘッドドレスに「アイシング」がかかる。顔を上げた彼女は、唖然としたままこちらを見つめた
彼女の口元に浮かぶ小さな弧が、春の水面のように広がっていく。リーフは肩を震わせ、ついにこらえきれず笑い声を漏らした
……あははは!
本当に、力加減を間違えたのかと思いました
こんな風に雪合戦をしたのはいつぶりでしょうか……[player name]、ありがとうございます。楽しかったです
……はい
リーフは立ち上がり、ゆっくりと湖畔へ歩いていった。彼女の進む先に花々が咲き乱れ、絨毯のように遠くまで続いていく
彼女が腕を広げると、世界が応えるように色彩を増していった
舞い散る花々の中から1輪の小さな花を受け止める。言葉は交わさず、そっと近付き――その花を、彼女の髪に飾った
