Story Reader / Affection / ルシア·逆冠·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ルシア·逆冠·その7

――――!

α

――――!

白い光

激烈な白光が、視界を呑み込んだ

その瞬間、意識海に存在していたはずの全てが、まるで最初からなかったかのように掻き消えた

王座

視界の端から、αの左腕が襲いくる。ほとんど本能的に、右手の刃で受け止めた

次はαの右手の一撃

死力を尽くし、動力甲の出力を最大にして僅かに右へ身を捻ると、αの右手の攻撃軌道を逸らす。そのまま前方へと踏み込んだ

ドンッ――

左肩をαに打ちつけ、彼女を後方へと退かせる。ふたりの間の距離が僅かに開いた

即座に体勢を立て直し、刀を構える。どの方向からの攻撃にも最速で応じられる姿勢。深く息を吸い、足取りを安定させる。絶対に倒れるわけにはいかない

なぜなら、αの次の一撃がすでに迫っている……

意識海

キィンッ――ガンッ――

名状しがたい轟音。精密な金属が砕ける悲鳴のようでもあり、重い鉄槌が大地を穿つ音のようでもあった。ひとつひとつの音が意識の最深部まで、脈拍と同調して響き渡る

彼女たちの攻撃から溢れ出る衝撃波が見えない刃の波と化し、あらゆるものを破壊し、切り裂いていく

さあ、私にひれ伏しなさい。この剣で無用な枷を断ち切り、この世で最強の力となるのは私よ

αよ、あなたは雑音に魂を蝕まれている。感傷に溺れ、弱く脆い……!

この身の真なる主にふさわしいのは……私!

咆哮が終わらぬうちに、「影」は再び弾け飛んだ。封刃刀がαの左側から斬りかかる

……思い上がりもはなはだしいわ

αは刀を左手で逆手に持ち、「影」の一撃を受け止めた。刃と刃がぶつかり、火花が散る

「影」の口元に冷ややかな笑みが浮かぶ。スピードと気勢が一段と高まり、左手で腰後から小刀を抜くと、切っ先をαの顔面へと突き立てた

これで終わりよ!

この一撃でαに致命傷を与えれば、彼女はただちにαの意識海を支配し、己のものとすることができる

意識海を戦場にしたこと……それが最大の過ち!

しかし刃先はαの眼前で止まった。僅か数寸の距離が、今はまるで永遠の彼方のように遠い

α

ふん。掴まえたわ

αの右手が「影」の小刀をしっかりと掴み、循環液がαの手に沿って滴り落ちる

――!?

バンッ――

αが右手に力を入れると、小刀は彼女の手の中で簡単に折れた。彼女の全身から烈火が燃え上がり、異なる色の瞳を照らし出すその姿は、まさしく羅刹だった

たかが残影の分際で……誰が直視していいと言ったの?

αは左手の刃で美しい軌跡を描き、「影」に向けて斜め下に斬りつけた

ここに来れば、私に挑む資格が得られると?

循環液が暗紅色の花のように影の身体から噴き出し、咲き乱れる。「影」は力なくその場に崩れ落ちた

この瞬間、「影」は悟った。αは想像を遥かに超えた狂気を孕んでいる

それは理性を失った暴走ではなく、全てを焼き尽くす覚悟を抱いた醒めた狂気だ。その炎は、α自身をも巻き込んでいつか焼き焦がすだろう

この意識海に燃え上がる炎は、αがほとんど自害に等しい方法で意識海を沸騰させている証だった

それは、この場のあらゆる意識を、区別なく攻撃する

「影」は身をよじるようにして後退し、この場から逃れようとした

正気なの!?

だが、αはまるで深淵より這い出た悪鬼だった。その後をぴたりと追い、次の瞬間には「影」の眼前に迫った

私の意識海は、出入りを自由にしていないの

炎を纏った手が、「影」の喉元をきつく締め上げる

逆巻く火の粉がふたりを死の螺旋へと巻き込み、互いの身体を狂おしく舐め尽くしていく

意識海そのものがαの怒りを帯び、もはや一面の火の海だ

灼けつく激痛の中、焔の波を貫いてαの低い声が響く

あなたが意識海に足を踏み入れた瞬間から、結末は決まっていた

ここは……あなたのために用意した墓場よ

αは「影」を前方へ放り投げて刀を収めると、気を鎮め、抜刀の構えを取った

燃え盛る炎は一瞬にして掻き消え、温度は急降下し、意識海には氷晶すら結び始めた

αは静かに息を吐き出すと、音もなく小刀を抜いた

ガキィン――

その瞬間、万物は色を失った。あらゆる色彩と音が根こそぎ奪われ、世界は静止したモノクロの無声映画になった。ただひとつの例外を除いて……

αと、その刃

次の瞬間、αはすでに「影」の背後に立っていた。彼女の攻撃はすでに終わり、ゆっくりと小刀を鞘に収めた

その時、止まっていた時間が再び流れ出す。「影」の身体に突然、無数の鮮やかで残酷な真紅の花が咲き誇った

……それは、紅き小刀が刻んだ斬痕だ

αは小刀を収めた。背後では「影」の体が一瞬で崩れ、霧散する

彼女の視界に錯綜とした光と影が走る。すぐにそれが「影」の記憶だと悟った

ヴェンジの裏切り……

空中庭園との対峙……

ルナの喪失……

昇格ネットワークの完全受容……

グレイレイヴンとの交戦……

渓谷で迎えた結末……

「影」は1度として、人類への憎しみを手放してはいなかった

そして今、αは「影」の本質を理解した。彼女はヒイロとは違い、αの内なる願いから生まれたものではない

ただ純粋に、偽りの記憶を与えられた幻影

パニシング――あるいは昇格ネットワークは、これまで1度も彼女を手放そうとはしていなかった

αが霧域へ向かったあと、昇格ネットワークは機を捉え、彼女の人生を基にもうひとつの鏡像を作り上げたのだ

αは目を閉じ、黙する。昇格ネットワークとの対峙は、今もなお終わってはいない

王座

αは左足で地面を蹴り、腰を軸にして空中で体をひねると、右足を上段からこちらへと振り下ろした

半歩退き、手に持った刀で攻撃を受け止めたが、その一撃はあまりに重たかった。刀ごと腕を押し下げられ、一瞬にして正面に大きな隙ができた

この事態をすでに予期していたので、その勢いのまま後方へと退がった

ジリッ――

微かな電流と機械が壊れた音が、この瞬間、無限に増幅され、死神の晩鐘のように鳴り響く

――それは足の装甲の内部構造が壊れた音だった

激戦を経た動力甲は、最悪のタイミングで限界を迎えた

こちらの後退は、想定していた距離に届かない

αは着地と同時に体勢を整え、即座に前へ踏み込み、左手でこちらの頭を鷲掴みにした

赤色の腕装甲が視界いっぱいに迫る。まるで魂を刈り取る死神の鎌のようだ

思考が激しく巡る。だが、時間がない

視界はもはやその手で覆い尽くされ、死が今、この瞬間に具現化した

――だが、その手が出し抜けに勢いを緩めた

彼女の瞳から狂気が消え去り、その唇の端に、目を凝らさないと見えないほどの微かな笑みが浮かんだ

αの左の掌が再度、こちらの頭にそっと触れて2度ほど軽くなでると、すぐに離れた

…………

彼女の態度はどこか和らぎ、かつての冷酷さは影を潜めている

傷の深さは?

その言葉でほっと緊張を解き、αが近付いて身体を調べるのに身を委ねた

左手……折れてるわね。他は?

αは少し黙ったのち、口を開いて称賛の言葉を贈った

やるじゃない

その声は優しく澄んでおり、どこか満足げな響きを帯びていた

これ以上の言葉は必要ない。ふたりの間に通い合う深い理解が、死闘が今、完全な結末を迎えたことを告げていた。αが勝利したのだ

敵を撃破した――途端に、これまでの疲れが潮のように全身にきた。ほっとした気持ちでその場に座り、αもこちらに寄り添うようにして一緒に腰を下ろした

僅かに身を傾け、αに寄りかかって休もうとした。αは拒まなかった

……お疲れさま

彼女、なかなか手強かったのよ

そう言うと、彼女は少し黙り込んで、僅かに和らいだ声で続けた

……あなたもお疲れさま

少し驚きながら、笑って言った

αは眉を上げ、少しからかうように言った

それ、もっと冷たい態度で接してほしいってこと?

α

まだ終わっていないわよ

その言葉を裏付けるように、足下の地面がひび割れ始める。空は割れたガラスのように剥がれ落ち、その向こうに虚無の闇が露わになった

――世界が崩壊していく。白い霧は渦巻きながら霧散した

αは立ち上がり、伸ばした左手は刀の柄に触れる直前で止まった。彼女はこちらの、長刀を握ったまま微かに震えている手を見つめてきた

α

…………

α

こういうの、共同作業っていうんでしょう

αがこちらに、自分の手を取るように促してきた。すぐにそれに応じる

彼女の瞳にほんの僅かな笑みが浮かんだ。顔を上げた彼女はこちらを見つめると、一緒に刀の柄を握るように目で合図した

こちらの右手が刀の柄の半分を、αの左手が残りの半分を握った

真紅の刃が高く掲げられ、αと自分の意志がこの瞬間、一切の隔たりなく交わり、共鳴する

たとえ世界が砕けようとも、ふたりはともに剣を握り続ける

α

準備は?

崩落していく空間で、αの自由奔放な声がはっきりと耳に届いた

α&[player name]

ハァッッ!!!

同時に放たれた叫びとともに、長刀は天と地を貫く銀の虹となり、前方の虚空へと渾身の力で振り下ろされた

ジリッ――

空間が引き裂かれた布のように、ひと筋の裂け目を生み出す

裂け目の向こうに、旧ファウンスのプリズム広場の見慣れた光景が、久しぶりの陽光と埃を伴って広がっている

αと並んで足を踏み出した

ふたりの背後で裂け目が閉じていく。もはや白い霧も奇怪な世界も存在しない。ただ数体の侵蝕体の残骸と戦闘の痕跡だけが、ここで死闘が繰り広げられたことを物語っていた

遠くから輸送機のエンジン音が響いてくる。そろそろ離れる時なのをαは知っていた

彼女が離れたところにあるバイクへと歩き出そうとした時、胸元から何かが滑り落ち、音もなくこちらの前に舞い落ちた

身を屈めてそれを拾い上げる

それは、ふたりにとって見覚えのあるものだった。3人が写った1枚の写真だ

写真の中、穏やかな笑みを浮かべた女性が食卓に座り、その髪が風にそっと揺れている

彼女の左に[player name]、右に少し硬い表情のαが座っている。窓から差し込む陽光が食卓を照らし、タンポポの綿毛が風に乗って部屋に舞い込み、αの肩に落ちている

まるで家族のような記念写真。しかし縁から色褪せ始め、水に浸された墨のように急速に滲み、薄れ、外側から中心に向かって消え去ろうとしていた

αが振り向くと、そこには消えゆく写真と、呆然としている自分の姿があった

αの顔に驚きや未練はなく、あるのは達観を思わせる余裕だった

α

白い霧が作り出した幻影なんて、いつかは消えゆく運命よ

それに、ただの写真にすぎないわ

彼女は歩み寄り、2本の指ですでに半透明になった写真を抜き取った。そして、それをこちらの額へそっと押し当てた

コツン――

彼女はそのまま上体を前に傾け、かつて母親から与えられた、幼き日の最も親しい感触をその人の額へと重ね合わせた

ふたりの間を隔てるのは、今まさに消え去ろうとしている薄い写真だけ

αの吐息を感じ取り、αもまた、こちらの微かな動揺を感じ取っていた

α

怖いもの知らずのグレイレイヴン指揮官が、これくらいで?

束の間の触れ合いの後、αは身を引いた。額には薄く赤い跡が残り、写真とこちらの身を包んでいた動力甲は、すでに跡形もなく消えていた

α

これで……忘れない

これは、私たちだけの秘密だと思えばいい

そう言い残し、彼女は背を向けて、立ち止まることなく歩き出した

彼女の赤色混じりの白い髪が風に揺れ、タンポポの綿毛もまた舞い上がる。広場いっぱいに漂う綿毛は、まるで雪のようだ

αが振り返る

疲労困憊し、1歩踏み出す度に莫大な力を振り絞っているようだった。だがその足取りは力強く、どんな障壁をも撥ねのける意志を宿していた

この時、αはふと気付いた。ふたりの立ち位置は、かつて見た幻影と同じだった

彼女は小さく笑った。幻影は所詮、幻影にすぎないことを知っている。たとえ異なる道を歩もうとも、ふたりは常に同じ剣を握っている

彼女の声が風に乗って漂い、澄み切った響きを残しながら、次第に遠ざかっていく

α

期待しているわ、この先、あなたがもっと楽しませてくれることを……

私の……獲物