Story Reader / 本編シナリオ / 41 遺志継ぐ帰航 / Story

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41-19 帰校式

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学校記念日パーティ会場

2160年6月20日

ファウンス士官学校

今夜のパーティは学校の講堂で開かれる。カサンドラは2年前、連合政府との予算の駆け引きに「勝利」し、強引に天井を宇宙ドームに改造させた

ドーム全体は曲面投影スクリーンになっており、軌道上の天文台のデータをリアルタイムで受信し、実際の星空を頭上に投影することができた

今夜の投影はひときわ鮮明で、ドームの端から端まで銀河が広がり、目を凝らせば木星の4つのガリレオ衛星まで見えるほどだった

うふふ、見たでしょ?これが私の言っていた宇宙ドームよ!

連合政府の連中は「無駄」「予算の浪費」「軍事施設の基準不適合」なんて言ってきたけど。私、言ってやったのよ。あの子たちは塹壕みたいな教室棟で何年も苦労してきたって

だから星空の下でご飯を食べさせてあげたっていいじゃない。で、どうやって彼らに勝ったかって?

ドミニクを脅して、17回も連続で苦情を入れたじゃないですか、理事

お金持ちのやることは「苦情」って言わないの。あれは正当な主張よ

彼女は長い髪を掻き上げた。彼女の指先には、今日のために小さな電飾がぐるりと巻きつけられ、頭上の星空と呼応するようにピカピカと光っていた

とにかく、今日は学校記念日なんだから、全員思い切り楽しんで!

パーティの音楽が鳴り始める頃には、講堂はすでに満席だった

1期生以外に、各期の卒業生代表や教官、研究員、理事会のエンジニアまで招かれていた。長テーブルの上でカトラリーが輝き、料理はゆらゆらと温かな湯気を立ち昇らせていた

そして、誰もがホール中央のふたつの席へチラチラと視線を向けていた

……

ルシアは学校から贈られた礼服を着ていた。すっきりとしたラインで、胸元には小さなファウンスの校章。彼女はフォーマルな服に慣れておらず、何度も袖口を引っ張っていた

隣にいる[player name]の礼服も同じデザインで、色味は少し濃い。その人その人の胸には、先月の平和維持任務で授与された新しい勲章があった

ジョアンが向かい側から身を乗り出し、口元を隠しながら囁いた

ルシア、服の襟が曲がってる

曲がってないわ

曲がってるよ、ちょっと左に――

こういうデザイン、ってさっき言ったじゃない……

その時、[player name]が手を伸ばして、ルシアの襟元を整えた

…………

ルシアは少し顔を傾け、されるがままだった

ふふふ

……何、笑ってるの?

いやいや!何でもないの!

オフェリアがジョアンの隣に腰を下ろした。今日の彼女は制服のスカートに着替え、長い髪を下ろしている。いつもポニーテールで腰に手を当てている彼女とは、まるで別人だ

ほらほら、ふたりをジロジロ見るのはやめて。隠し撮りしてるパパラッチみたい

隠し撮りなんてしてない!ただ……見てるだけよ……

見るって、何をよ。別に今日から付き合いだしたわけじゃなし

でも、今日は特別じゃない!だって今日は――

シーッ……

オフェリアは手にしたグラスで口元を隠しながら周囲をさっと見渡し、ルシアと[player name]がこちらに注意を払っていないことを確認した

わかってるわよ、ちゃんと準備してある

じゃあ、本当に……ふたりふたりとも……?

うわわっ、それってつまり――

静かにしなさいよ。聞かれたらサプライズにならないでしょ

ジョアンはコクコクと頷き、両手で口を押さえたが、目はニンマリと三日月のように細くなっていた

そういえば、今夜はドミニク先生が初めての点火実験をするのよ。そっちのチームはそのこと、知ってるよね?

零点エネルギーリアクターのこと?知ってるわ。でも、行かない。こっちの方がラボよりずっと面白そうじゃない?

実験なんて永遠にいくらでもあるけど、友達は……会える機会がどんどん減っていくかもしれないし

アデレーネは隅の席で、数人の若い在校生たちと一緒に座っていた。彼らは今、彼女が指導している教え子たちだ

オフェリアはグラスを手に近付いた

どうしてそんな遠くに座ってるのよ?

担当する学生たちがこっちにいるから

勝手に座らせておけばいいのに

教官は学生と一緒にいるべきよ

学校の記念日なのよ。今日のあなたは教官じゃなくて、卒業生

オフェリアは彼女の隣に座り、もう片方のグラスを彼女の前に差し出した

…………

1杯飲もうよ

私は……

何?昇進するからって、皆の顔を立てないつもり?

アデレーネはグラスをちらりと見て、またオフェリアを見た

……1杯だけ

アデレーネは頭を仰け反らせて酒を一気に飲み干した。オフェリアは彼女の外骨格を装着した右脚をチラリと見た

最近はどう?まだ痛む?

痛くはないわ。ただ天気が変わると少し感じるくらい

……ずいぶん軽そうに言うのね

実際、そんなにたいしたことじゃないもの

700mの高さから落ちたのが、たいしたことない?

任務目標は達成したし、人質も無事に撤退できた

…………

彼女は酒をごくりとひと息に飲み、グラスをテーブルにドンと置いた

いい加減にしなさいよ、わかってるの?

ええ、何度も聞いたわ

もう二度とそんなことはしないで。皆、本気で心配してるんだから

アデレーネは答えなかった

ア·デ·レー·ネ!

……気をつける

オフェリアは、その言葉が「守れるか保証はない」という意味だとわかっていた

だが、今日は言い争う気分ではなかった

パーティはとても和やかだった。恐らく、皆が暗黙のうちに何かを待っていたからだろう。普段は真面目な人でさえ、どこか肩の力を抜いていた

2年間の経験を語る者、後輩に過去の武勇伝を語る者、グラスを手に旧友と杯を交わすためだけに会場を歩き回っている者――会場中に乾杯の音が響いている

ルシアと[player name]は長テーブルの中央に並んで座っていた――優秀卒業生代表の席だ。礼服は皺ひとつなく、校章はドーム天井の星の光を反射し、微かに輝いている

彼女の皿はほとんど手付かずだった。彼女は時々口を挟んだりしながら、ずっと[player name]が隣の人と話しているのに耳を傾けていた

テーブルの下の彼女の右手は、無意識に礼服の内ポケットにある何かを触っていた

[player name]の左手も同じような動作をしていた――ふたりとも、同じような動作をしているとはお互いに気付いていない

しかし、ジョアンは気付いていた。そして、ふたりがぴったりの「タイミング」を待っているように感じていた

すぅ……

彼女は深く息を吸い、自分の端末を握りしめて席から立ち上がった

皆さん――!少しよろしいでしょうか――!

ホールのざわめきが次第に静まっていった

実は昨夜、ラボから連絡を受けたんです……

彼女の声は震えていた

「王冠」質点の第3段階の解析が、無事に完了しました

会場は、ドーム天井の投影の低い唸りが聞こえるほど静まり返った

これまで技術的改良を重ねてきた結果、ついに、ついに、適合のハードルを実行可能な範囲まで下げることができました

ゲシュタルトはすでに全世界規模の適合スキャンを完了しています――

彼女はルシアと[player name]を見た

世界中の兵役適齢人口で、「王冠」質点に完全に適合する意識構造を持つのは、たったふたりだけでした

それは、あなたたちふたり、ルシアと[player name]よ

会場は一気に大きなどよめきに包まれた。驚きの声を上げる者、拍手する者、何もわからず、場の空気に呑まれて興奮する者もいた

ルシアは[player name]を見たが、何も言わなかった

彼女は端末画面を皆に見せた。画面には、重力場干渉モデルの模式図が表示されている

もし「王冠」が正常に稼働すれば、人類は局所空間の重力場に直接干渉できるようになる。簡単に言うと――空間を折り畳めるようになるの

星間航行に制限はなくなり、人類はプロキシマ·ケンタウリやシリウス……もっと遠くにも行ける。極端な話、過去に干渉して、歴史をよりよい未来へ導くことすら可能になる

彼女の声は次第に大きくなっていく

16年前、ドミニク先生が宇宙からの信号を受け取った時、先生はすでにこの道を見ていたんです。私たちはこれだけの年月を費やし、これだけ多くの人の努力を積み重ね……

ようやく、ここまで来ました

彼女の目には涙が滲んでいたが、その表情はまぶしいほどの笑顔だった

ルシア、[player name]

あなたたちは恐らく、人類史上初めて――本当に星に届く人たちになるわ

先ほどよりも大きな拍手が湧き起こる

ルシアはジョアンの話を静かに聞き終えると、顔を上げた

天井に輝く広大な銀河と星々の光は何百年、何千年、何万光年という距離を越えて届いている。そして今、彼女自身の手でその光の源に触れられる可能性を告げられた

彼女は長い間、天井を見つめていた。[player name]も同じだった。並んで空を仰ぐふたりふたりの顔に、星の光が降り注いでいた

ルシアはふいに手を伸ばし、指先で[player name]の手の甲に触れた

……私たち、何も変わってないみたい

入学式の日、私たちは「曙光-III型」を見上げていたでしょ?そして今また、こうして星空を見上げている

ルシアは[player name]の方を見た。とうとう覚悟を決めたような、揺るぎない眼差しで

ルシア

[player name]、あなたに伝えたいことがあるの

ほぼ同時に[player name]も口を開いていた

ルシア

……

ふたりは呆気にとられた

ルシア

……あなたからどうぞ

ルシア

あなたから、って言ってるでしょ

ふたりは同時に礼服の内ポケットから何かを取り出し、それぞれがこっそりと背中に隠した

ルシア

……月での出来事、まだ覚えている?

ルシア

バカね、それじゃない

何百もの視線が彼ら彼らに注がれていた。ドームの星明かりがテーブルにふたりの影を落としている。その影は、重なり合っていた

ルシア

なってない。あれは地球の反射光

ルシアはその人その人を見つめ、唇を少し動かしたが、またつぐんでしまった

ルシア

あの時、「1度しか言わない」って言ったけど

ルシア

あれは嘘

ルシア

あれから、何度も言いたくなった

北アフリカでの午前3時の眠れない時間、任務前に装備を点検した時、あなたから送られた南太平洋の夕暮れの写真……酷い写りだったけど……を受け取った時も言いたかった

ルシア

「1度だけ」と言ったので

別の方法を考えた……

彼女は背後に回していた手を、ゆっくりと前へ出した

ルシア

えっ?

向かい合ったふたりはどちらも精巧な小箱を取り出した。驚きが、言葉にしがたい感情へと変わる。笑いたいような、ため息をつきたいような、言葉にならない複雑な感情へと

ジョアンは今にも泣きそうで、オフェリアは笑いをこらえて顔を真っ赤にし、アデレーネの口元はキュッと動いた――普段の彼女からすれば、それは満面の笑みに等しかった

[player name]、私と……

会場のどこかで誰かが手を叩き出し、それを皮切りに次々と拍手が重なっていく

誰もが大きく口を開け、歓声を上げようとした――

だが、その明るい笑い声は全て喉の奥で消えた

頭上で轟音が響いたのだ

ドームの天井に目に見える速さで四方へ亀裂が走った。蜘蛛の巣か稲妻のような亀裂は、本来存在してはならないものが、その亀裂から押し入ろうとしているかのようだった

散れッ!!

ドォォォン――!

ドームのガラスは無数の破片となって砕け散り、照明の中で鋭く光を反射した。その様子はまるで、逆さに降きつける吹雪のようだ。照明は数回瞬き、そして完全に消えた

暗闇と同時に押し寄せてきたのは、異様な霧だった

割れたドームの亀裂から、白い霧が滝のように流れ落ちてくる。霧はホールのあらゆる扉や窓、通気管からも流れ込んでいた

その霧は煙や水蒸気とは違って、質感と重さがあった。皮膚の上を冷たい絹のように滑り、膨張しながらテーブルや食器、地上の光さえもを呑み込んでいく

悲鳴も、ガラスの割れる音も、その全てが次第に濃さを増す白い霧に吸い込まれ、歪められ、遠のいていった

何が起こってるの――!!

彼女が本能的に誰かを掴もうと伸ばした手が、オフェリアの袖に触れた

逃げて!ジョアン!ここは崩れる!!

ほんの1秒前まで、彼女の目の前では、ルシアと[player name]が互いにリングケースを差し出し、驚嘆と歓喜が入り混じった、やや呆然とした表情を浮かべていた

けれど、そこにはもう誰もいなかった

……ルシア?

ルシア!![player name]!!

彼女の声は白い霧に呑まれ、まるで綿でできた深淵に投げ込まれたかのように、音もなく吸い込まれた

ふたりふたりとも、さっきまで……そこにいたのに……

皆、落ち着いて――分散はまずい――

ホールの外から、更に別の音が響いてきた。何かが地底から這い出してくるような音だ。金属がねじ曲がる軋んだ音と、何かの電子設備の耳障りな悲鳴が混じり合っている

……うっ!

突然、彼女は手に焼けるような熱を感じた。握りしめた端末が血の色をした異様な記号を点滅させている。端末は深紅の電流を放ち、手袋を蝕み、皮膚を引き裂いた

彼女は即座に端末を放り投げた

きゃああああッ!!

ジョアンはその悲鳴に振り返った。戦術ゴーグルを装着した学生が地面に崩れ落ちている。赤く発光するゴーグルの光は硫酸のように目や鼻へと侵入し、肉を侵蝕していた

僅か数秒のうちに、彼女の頭部は溶けて血だまりと化した

!!!

身につけている電子機器を今すぐ破棄!!早く!!

一体何が起きてるの?テロ!?

ち……違う……

講堂全体が骨組みを失ったかのようで、轟音の中で崩れ落ちそうにグラグラと揺れていた。ジョアンはオフェリアに手を引かれ、呆然としたまま外へと駆け出した

振り返って背後の異様な惨状を見た瞬間、彼女の胸に強烈な予感が走った

まさか……零点エネルギーリアクター!!

零点エネルギー?何のこと?

ドォォォン――!

広場に整然と並ぶ訓練用戦術機甲が、不気味に蠢いていた。装甲板は生き物のように反り、裂け、そして再び組み上がる。四肢は構造を無視するように歪に曲がっていく

荒れ狂う血管のような深紅の電弧放電が関節から噴き出し、コックピットのガラスが砕け散った。装着する者もいないのに、機甲は勝手に立ち上がった

もしも……零点エネルギーリアクターが電力網に接続された瞬間に、何かが電力網を伝って拡散したんだとしたら……だから電子機器が……!

いいから!走って!

アデレーネは折れた金属製のテーブルの脚を拾い上げ、重さを確かめると、そのまま手に握った

右膝に鈍い痛みが走っていたが、その足取りに迷いはなかった

総員、高知能武器を放棄!電子機器に一切触れるな!

近くにいる者同士でスリーマンセルの臨時チームを編成!使えるものは何でも武器にせよ!

ラジャー!

講堂の外の回廊に武器庫はない。だが、ファウンスの学生にそれらは必要なかった

長テーブルの脚や椅子の背もたれの鋼管が武器としてへし折られた。ディナー用のナイフを握る者、陶器の花瓶を叩き割り、最も鋭い破片を手にする者もいた

ほんの20秒足らずで、ホールにいた全員が武装を終えて立っていた

倒れた警備用ロボットに旧式の手榴弾がある!各チームひとつずつ持て。独断で使うな

各小隊、私に続け!プリズム広場へ撤退する!

イエッサー!!

――ギィ!!!

来い、化け物!!

最初の侵蝕体が側面の通路から這い出し、そのまま学生たちの隊列へと突進した――6本のスチールパイプが一斉に振り下ろされる

3人が正面で迎撃し、ふたりが側面を封鎖、ひとりが後方を警戒する。これは標準的な6人体制の近接制圧陣形で、ファウンス1年生の必修科目だ

こいつ、死なない――!

殺す必要はない!構造を破壊して動きを止めろ!関節部分を狙え!

第2波の侵蝕体が押し寄せた時、学生たちは自発的に交互掩護の撤退陣形を組んだ。前列が交戦、後列が偵察と10歩ごとに前後を交代し、負傷者を隊列に引き入れながら進む

彼らは、こんな状況を限定されてどう動くべきかを教えられたことはない。だが、どんな状況であっても動けるように、ファウンスで教わっていた

グォォオ!!!

――うぐっ!!

ニヤの左腹を巨大侵蝕体の尾が貫き、彼女は崩れた石柱に背中から叩きつけられた

ニヤがやられた!負傷者の掩護を!!わあああ――ッ!

学生が鉄板を盾に突進する。だが侵蝕体が横ざまに体を振ると、鋏のような刃が飛び出し、彼の左脚をバターのように斬り飛ばした

くっ!私に構わず――行って!!

ゲホッ……ファウンスは……絶対に……

誰ひとり、見捨てたりしない!!

全員で押し返そう!関節を狙え!!

――!!!

鋼鉄の関節から灼熱の蒸気が噴き出し、取り囲んでいたふたりの学生をまとめて吹き飛ばした

侵蝕体は鋏を高く振り上げて1歩踏み出し、目の前で倒れている男子学生めがけて振り下ろした

ガンッ――その一撃は、学生の顔を砕く寸前で止まった。侵蝕体が振り返る。石柱に縫いつけられたニヤに鉄の尾をがっちりと掴まれ、前へ進めない

――ガハッ!!

ニヤは血を吐き、腹を貫く鉄の尾を伝って、少しずつ前へ進んだ。血塗れの体を引きずりながら、侵蝕体の胴体へとにじり寄っていく

ファウンス1期生、ニヤ……学籍番号374……!

彼女は腰から手榴弾を取り出し、血に染まった歯で信管を引き抜いた

明日へ――!!

ドォォォン――!

静まり返った水面に石を投げ込むように、爆発音がそこにいる全員の耳を震わせた

ニヤの行動は、戦場にいる全員に、自分が腰に何を携えているのか、自分の体で何ができるのかを電撃的に思い出させた

侵蝕体が引いては寄せる鋼鉄の波のように湧きあがる。金属の軋む音が四方八方で響き渡った

2度目の爆発音が響いた

<size=40>1期生ハニフ、学籍番号264</size>

<size=40>彼は右腕を切断されながらも、最後の力で信管を引き抜き</size>

<size=40>近くの2体の侵蝕体へと突っ込み、自爆した</size>

<size=40>3度目、1期生ビーバー、学籍番号197</size>

<size=40>4度目、2期生シルカ、学籍番号367</size>

<size=40>…………</size>

<size=40>手榴弾の爆発音が、次々と混沌とした戦場にこだました</size>

<size=40>彼らはファウンスに教わった全て――自分自身すらも利用し、仲間のために唯一の活路を切り開いていった</size>

突破した一行が1階へたどり着いた時、隊列は目に見えて縮小していた

このまま1階の訓練エリアを抜ければ、開けたプリズム広場へ出られる。そこなら屋内戦の不利な状況を打ち破れる

皆が出発しようとしたその時、ジョアンはこっそり隊列の最後尾に残り、ひとりで反対方向へと歩き出した

ジョアン!どこへ行くのよ!

……

ジョアンは立ち止まり、しばらく迷ったあと、ゆっくりと振り返った

「王冠」がまだ実験棟にあるわ。取り戻さないと

正気!?外は怪物だらけなのに!

もし「王冠」まで乗っ取られたら、どれほどの災厄になるかわからない……それに、16年分の研究も、皆の努力も、全部が無駄になる

どれほどの犠牲の上に「王冠」があるか……オフェリア、あなたは環大西洋育ちでしょ?私よりもよくわかっているはずだわ

私は何としても、ルシアと[player name]の手にこれを渡さなきゃいけないの

…………

オフェリアは怒鳴りかけたが、結局何も言わなかった

あなたじゃ、蚊の1匹すら殺せないもの。私も一緒に行く

彼女は右肩の包帯をきつく締め直し、大きく息を吸うと、薄暗い後方へと歩き出した

待って

アデレーネ……?

アデレーネは立ち止まってジョアンとオフェリアの方を眺めたあと、自分の傍らにいた副官に向き直った

皆を連れて広場に向かい、主力部隊と合流して

……教官たちはどこへ?

「王冠」がまだ実験棟の中にある

3人では危険すぎます。私たちも一緒に

だめ、あなたたちは広場へ向かって

アデレーネ教官――

「王冠」もファウンスも、どちらも失えない。こちらは3人で十分。外の「あれ」は待ってはくれない。広場には進路を切り開く人間と、負傷者を守る人間が必要よ

彼女は背後の負傷した学生たちを見やり、それから副官を見た

ここ数年の実戦経験は、私よりあなたの方が多い。あなたなら、ここを突破して皆を導ける

教官たちはどうするんですか?

私たちが行くべき場所へ行く、あなたたちも同じよ

副官はほんの一時黙り込み、それから小さく頷いた

どうかご無事で

もちろん

副官は身を翻し、隊列に向かって声を張り上げた。人々は隊列を整え、訓練エリアの方へと進んでいった

オフェリアはアデレーネが歩いてくるのを見て、辛辣な言葉を準備していたが、結局は「フン」と鼻を鳴らしただけだった

……その膝で、まだ走れるの?

問題ないわ

ふん、どうだか

顔を上げたジョアンは、目の前に立つふたりの戦友を見つめるうち、涙がこみ上げた

ありが――

時間がない、行こう

3人は実験棟へ続く廊下に駆け込んだ