陽昏の秘密1
ビアンカの新たな姿は柔らかな印象を与え、多くの者から「聖女」と呼ばれている。だが、本人の行動スタイルはそれに左右されることなく、離反者の追跡といった原則に関わる問題において一切の妥協を許さない。同様に粛清の前に離反の理由を綿密に調査するという習慣も変わっていない。陽昏の秘密2
海洋博物館での任務を終えたあと、しばらくの間ビアンカは軽微の溺水感に悩まされていた。しかし彼女はそれを理由に海に対して忌避感を持つことはなく、後の任務においても、海水に関連する事象に対し冷静さを失うことはなかった。たとえ海の底に沈んだ人々に苦しめられたとしても、ビアンカは彼らの意志と信念を胸に、揺るぎない足取りで歩み続ける。陽昏の秘密3
蛇腹剣の刃は収束可能な構造になっており、状況に応じて無害なロープに変化させることもできる――包囲された仲間の救出から、木の上に取り残された猫の救助まで、さまざまな対象を巻き取る用途に活用されている。陽昏の秘密4
マイナーなアート映画を好んでおり、同じシーンでふたりの登場人物が3時間も話し続けるような作品でも、彼女は退屈だとは感じない。一方、彼女と一緒に映画を観ていたセンは上映後10分で眠ってしまった。陽昏の秘密5
執行部隊に比べ、粛清部隊の任務は精神的な負担が大きい。そんな中、他人の気持ちに寄り添えるビアンカの性格は多くの隊員たちの悩みを引き受ける存在となっていた。陽昏の秘密6
人の嘘を見抜くことに長けているが、それをあえて口にすることはない。むしろ、その嘘の裏に隠された事情や思いにそっと寄り添う。陽昏の秘密7
かつて趣味で書き上げた脚本を世界政府芸術協会に提出したことがある。その際の評価は、「登場人物間における劇的な対立は乏しいが、文体は穏やかで気品があり、特に心理描写においては誠実かつ繊細。むしろ小説という形式での発表を強く勧めたい」というものだった。陽昏の秘密8
鑑賞後はこっそりと映画の半券を集め、丁寧にまとめて一冊の記念アルバムにしている。陽昏の秘密9
どんなドレスもよく似合う。本人は何度も断っているが、世界政府芸術協会はさまざまなクラシカルなドレスのファッションショーへの出演依頼を出し続けている。陽昏の秘密10
意外にもジョークに対しては察しが悪い。隊員たちの「ユーモア」を理解しようと、『空中庭園でよく聞くジョーク100選』をこっそり読んでいる。陽昏の秘密11
ビアンカは滅多に口にしないが、グレイレイヴン指揮官とは初めて出会った時から正式に海洋博物館の作戦を遂行するまでの間に任務を一緒に遂行していた時期がある。陽昏の秘密12
グレイレイヴン指揮官との関係が深まってから、一度は「殿」という敬称を省略する提案をしたこともあるが、時折無意識のうちに「指揮官殿」と呼んでしまう。本人にその自覚はないが、彼女にとって敬語とは心に秘めた感情を静かに導き出すための手段でもあるのだ。