驚影の秘密1
公式記録上の「休眠」時間中に空中庭園フォーラムの人気投稿を頻繁に「チェック」したり、匿名でさまざまなゲームのハイスコアに挑戦したりしている。驚影の秘密2
他人の技術レベルを評価する基準にコードの「優雅さ」も含まれている。見た目が乱雑なコードであれば、ロジック的に正しくてもコーヒー味の電解液を飲んだ時のような表情を見せる。驚影の秘密3
毎日のウォーミングアップとして定期的にカレニーナの端末データベースを解析している。同時にカレニーナが日誌に自分の悪口を書いていないか確認している。驚影の秘密4
理論知識はしっかりしているのだが、楽器の演奏は不得意。編曲の際には音声サンプルや合成音を用いることを好み、特徴や表現の軸として扱っている。驚影の秘密5
端末内にて高度に暗号化された電子クマを飼育しており、キャッシュファイルに全ての餌やり記録や交流ログを隠している。それを根気よく解析すると、ログの正体が実はある人間の観察記録なことがわかる。驚影の秘密6
工兵部隊のローテーションに配属されたばかりの頃、清掃ロボットの音声認証パスワードを「明日の休みを許可する」に変更したことがある。痕跡は一切残さなかったが、筆頭容疑者として基礎設備メンテナンスのローテーションから外された。驚影の秘密7
必要なデータのバックアップを保存しておくために、空中庭園の外に個人用サーバーを設置する計画を立てている。しかし物理的な観点から適切な設置場所が見つからず、今のところ実現には至っていない。驚影の秘密8
監視装置を全て切った状態かつ完全にひとりきりの時に自作曲を歌うことがある。何度もチャレンジするが、どれも満足できずに一度も録音して保存したことはない。今でも密かに練習を続けている。驚影の秘密9
自分用の「最終合意」を用意している。起動条件は未定、効果も未定、未作曲の「終結曲」に関して以外は現在も改定を続けている。起動すると何が起こるのかは、誰にもわからない。驚影の秘密10
彼女にとって編曲もまたモジュール化した思考で構築できる代物であり、特別なアプローチを持ったプログラミングのひとつである。驚影の秘密11
人間だった頃も構造体になった今でも、紅茶の産地、収穫年、水質の違いを正確に判別できる。ただし最近は味覚の経験でなく成分分析に頼ることが多い。それに気付いて以来、彼女は茶葉の良し悪しにこだわりがなくなり、ティーバッグの紅茶でも妥協できるようになった。驚影の秘密12
ある時期の彼女は感情的な思考を軽蔑しており、定期的にディスクをデフラグするかのように自らの思考を主導で「整理」していた。不要な感情のフィードバックを意識海の奥底に圧縮することで、ロジック的な思考を維持しようと試みたのだ。その行為はことに気付いたスターオブライフに停止を命じられるまで続いた。