Story Reader / 外伝シークレット / EX05 迷境ノ疵 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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EX05-4 廃地ヒッチハイクガイド

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……ひぃ……

また来たのかい?

うん、左後ろ……

まずは隠れよう

ロランとラミアは、近くにふたりが隠れられるほどの崩れた壁を見つけ、昇りきっていない朝日の影に身を潜めた

…………

ロランの予想通り、数体の侵蝕体が彼らが先ほどいた場所の左後方に現れた

数は多くない。その足取りは乱れており、一見するとどこにでもいる放浪する侵蝕体だ

数時間前――具体的にいえば、夜が明けたあとだった。ロランはとくに具体策のないまま、「既知の手がかりに沿って捜索する」ことを決め、ラミアとともに出発した

そこから物事は始まった。彼らが出発した時から、一定時間が経過するごとに、奇妙な放浪する侵蝕体の群れが彼らの捜索ルート上に現れるのだ

放浪する侵蝕体たちは繰り返し、ロランとラミアの行く道に出現する。侵蝕されるような対象は何もない区域なのにもかかわらず

ちょっと手を下せば容易に片づけられる数ではあったが、ロランは何かひっかかるような異常を感じた

そこでロランは試しに、彼らに向かって手を伸ばすと、群れの先頭の侵蝕体を方向転換させようとしてみた

――しかし、何も起こらなかった

(どういうことだ?この機体の問題なのか、それとも……)

ただの放浪侵蝕体じゃん……直接、やっつけられないの?

それをしてどうなる?

おかしいと思わないか?侵蝕体たちは、どこにいても私たちを見つけだして、攻撃を仕掛けてくるような感じだ

侵蝕体の出現が不自然な区域にもかかわらず、こちらがあえて変更したルートにもかかわらず、だよ

(へっ?それはこの前の……あれ、道に迷ったんじゃなかったんだ)

ひぃっ!

あいつらが何をしたいのかわからない……単に偵察したいだけなのか?

(だとしても斥候なら、もう少し力のある者を寄越すはず。もしかして、私たちにルートを変更させることが当初の狙いか……?)

(まあいい、また現れたらラミアに制御させよう。今はまだ、私に侵蝕体を制御する力がないことを知られるべきじゃないな)

じゃあ、さっさと掃除しようか!

あちらがなぜわざわざ弱い侵蝕体をけしかけたのかは不明だが、ロランは、魂のない者にここで時間を無駄に使いたくはなかった

まだ状況が把握できていないラミアを率いて、ロランは隠れていた壁から飛び出した。頭の中には、すでに練られた計画がある

――!――!

ロランとラミアが共闘したことで、あてもなく彷徨っていた侵蝕体たちはあっという間に一掃された

足下に倒れた侵蝕体の残骸を見ても、ロランに勝利の喜びはまったく湧かなかった

あまりにも頻繁すぎ、あまりにも簡単すぎたからだ

(……おかしい)

どうしたんだい?

(こんな無意味な偵察、一体何が目的だ?)

(私たちを殺したいのか、あるいは別行動させたいのか。それなら、相手の望みは叶いそうもないな)

昇格者にとって消耗戦は意味がない、人間の戦闘とは違うんだからね。相手が侵蝕体を制御できるとしたら、それすなわち彼らも同類ということだろうね

ということは、紛れもなくあちらさんは、こんなやり方でこちらを倒せるとは思っていないだろうね。一緒に戦えば、あるいは……?

(要するに何か別の目的があって、意図的に仕組んでいると?)

そうならば……何のためなんだ?

……面白いな

ひぇ……何ひとりでぶつぶつ言ってるの?私にもわかるように話してくんないかなぁ

同じ場所に留まる時間が長すぎたせいか、ロランが話している間に、またしても侵蝕体たちが現れ、ふたりに襲いかかってきた

ひぃ……

……またおいでなすったね?

(これも同じだ。同じ方向から来た。確認するためにぐるりと半周遠回りした甲斐があった)

荒地の果てから、ふらつきながらこちら側に向かってくる侵蝕体たちを見て、ロランは心の中である決意をした

ラミア、あいつの動きを止めておいて

なぜロランが自分でやらないのかはわからなかったが、ラミアはとりあえず言われた通りに行動した――

しかし、侵蝕体の動きは止まらなかった。というよりも、侵蝕体に何の影響も与えなかったのだ

……へ?

……やはりそうか

昇格者たるラミアの持つ逆制御が効いていない。つまりそれは、相手も同じく昇格者の力を使っているということだ。しかも、より高次な力を――

(それが確認できた今となっては、これらの侵蝕体は、あちらからの「ある種のメッセージ」と理解するのが妥当だろうな)

ただ単に制御不能な工場、なのかもしれないよ?

(それでは昇格者であるラミアと私がなぜ、侵蝕体を制御できないのか……その説明がつかない)

どうやら、もうすでに自分なりの答えがあるようだね

恐らくね

じゃあなぜ行動しないんだい?ためらう理由はないように思うけど

(……多分、私に必要なのは、まさに今のひと言なのかもしれない)

それが君の欠点だね

(……チッ)

じゃあ、私たちは――あえて、罠に飛び込んでみるとしよう

………………?

こちらが探しているものは、スカベンジャーや空中庭園の誰かを捕まえて聞き出せるようなものじゃない

一番簡単な方法はもちろん、ガブリエルさんに訊くことだけど……彼が見つかるとは思えないし

慈悲者との会話で、ロランはαがあの戦闘を生き延びた事実を知った……それならば、恐らくもうガブリエルは死んでいる

それじゃあ……あの「劇」の黒幕を探しに行くしかないな

ひえ……彼らを探しに行くっての?

でも、どうやらツイているようだよ。探す前に、彼らの方から私たちを探しに来たんだ――この侵蝕体たちこそ、その証拠さ

丁寧に送り届けてくれたチャンスだ、みすみす逃す手はないだろう

……ちぇ、わかったわよ

ラミアはしぶしぶながらロランの考えに従う意を示した

じゃあ、彼らが来た方向をたどって、この侵蝕体たちの源が何を指し示すのか――それを探ろう

「Fortis Fortuna Adiuvat(幸運は勇者に味方する)」

荒地と廃墟の中、ロランとラミアは侵蝕体の群れが向かってきた方向へとしばらく歩いた

侵蝕体たちは依然として突発的に出現し、ふたりが前進するにつれ、その頻度は増していく

しかし、それはロランを興奮させた――それは、彼の「侵蝕体は意図的にある場所から派遣されている」という考えが間違っていない何よりの証拠だからだ

これから……何が起こるかな

(誰かが先陣を切り命令を下す、なんだか昔に戻ったような感じ……)

(これなら、生き残る可能性も大きくなるかな……うん……)

ロランとラミアは歩み続けた。しかし、現れるはずの侵蝕体は姿を見せなくなっていく

500m、1000m、2000m……

常に一定の頻度で現れていた侵蝕体が、ぱたりと現れなくなった

これは何を意味するのだろう?ロランは考えを巡らせずにはいられなかった

侵蝕体が現れなくなったのは、相手が初期の目的を達成したからだとする。では次は――

その時、いきなり空を駆けるエンジン音がロランの考えを中断させた。そうか、あるいは――

……これだったのか?

ロランとラミアはすぐさまエンジンの音を追った。そのエンジン音は、ある方向で低くなり、徐々に聞こえなくなった

その方向に向かって、ロランとラミアはいくつかの倒壊したビルを飛び越え、音が消えた場所にたどり着いた

ビルが崩壊した狭間に、空中庭園のマークが入った輸送機が停まっていた

うぇ……これって空中庭園の輸送機だよね?なんで単独でこんなとこに来たの?

単独で現れたなら、乗っているのは物資や設備ではなく、多分――

3つの人影が、輸送機の遠くの交差点で忙しなく動いている

――任務を遂行するために来た、執行部隊だ

あなたたち、何をしてるの?

静けさを破って、ヴィラはホログラムを消し、端末を閉じた。そして振り返って、ふたりのチームメイトに話しかけた

扉は押せば開くものよ、そこまでする必要があった?

おいおい、簡単に開くじゃねぇか。気付かなかったぜ

装備を下ろして。すぐ始めるから

了解

構造体たちは荷物を下ろし、ケースの中から遠隔リンクの信号強化装置を取り出した

空中庭園の執行部隊?こんな荒地に何の用だろ?

「彼女」のためか……いや、そんなはずはない

あの女性の状態を考え、ロランはすぐに頭の中の考えを打ち消した

「彼女」は空中庭園の注意を引く愚行を働くような代行者ではない

となると我々か……そんなはずはないな。私たちは現時点で何も行っていないし、「彼女」以外に存在を晒したことはない

冷静に考えると、執行部隊には自分たちと何の利害関係もない。現時点で、主な任務を当面実行できないことを鑑みると、彼らから離れるべきだろう

しかし、ここに突然執行部隊が現れたということは、その背後に自分が知りたい情報が隠れている可能性もある

(正面突破して接触する必要はない。それに「ある人」以外、私の話を聞く気にはならないだろうし)

(ただ少なくとも、この者たちが何を企んでいるのかを知ることは有用かもしれないな)

ラミア?君の出番だよ。あの者たちが何しにここへ来たのか、調べてきてよ

えぇ……私が?

私は身を隠せないし

う……うん……わかったよ

マーレイがヘルドッグに異動したんでしょう。あなたより彼らの方がずっと使えるし

ヴィラはすぐ状況を理解し、いつもの口調に戻って言った

は!?反対だ。断固反対!てか、俺をからかってるんだな?

アハ……嘘だとわかった?少しは賢くなったのね。じゃ、これで文句はおしまい。この人間はグレイレイヴンの指揮官よ

好きじゃない

21号、これは任務なの。好きじゃないって言えるのは私だけよ

……わかった

ラミアはしばらく聞いていた。しかし、ケルベロスの会話には、今回の指揮官がグレイレイヴン指揮官であること以外、価値のある情報はないようだ

そして、ケルベロスが向かう場所の方向と距離の情報を確認すると、ラミアはケルベロスから遠く離れていった

(ふぅん……どうやら、確かに何かの目的でここに来たみたい……)

(じゃ、ロランに伝えるしかないかな……)

(もし、ロランの協力を得られれば、そうなったら「あの場所」に行くことが……)

(うぅ……今は、とりあえずロランと一緒に行動しとくかな)

…………

…………

――そうか

ケルベロス小隊、グレイレイヴン指揮官

過去に接触した印象から考えると、まったくスタイルが異なる者が集まったといえるだろう

かくも奇妙な組み合わせに、ロランは同じく奇妙な関連を想起した

……ルナ様、ルナ様が目当てなのか?

彼らが何を発見したにせよ、今回の行動はルナ様と関係があるに違いない

立て続けに現れた侵蝕体が、なぜここに来てぱたりと消えたのか、どうやらその理由がわかったようだ

――彼らは正しい方向に導かれたということだ

面白いね……

誰が背後でこの全てを操っているのかはさておき、今の状況をここで調べるのは価値ある行為といえる

特に――彼が完全に目標を見失いそうになった時、突然目の前に好機が到来するとは。あまりにも偶然すぎ、危険すぎる、見え見えの罠のようだった

しかし、ロランは決して罠に怯むことはなかった。むしろ懐かしい気分すら覚える

この手がかりが彼をどこへ導くのか、早く見てみたい

そうなると、唯一残る問題は……

双方の速度だ

構造体であれ昇格者であれ、疲れを知らずに長時間の移動が可能だとしても、そもそも人間の体が基礎であることにはかわりない

ラミアが高速で先に到着することが可能だとして、そもそも今、ロランはラミアを信用していない

ならば――

30分後……

ひぃ――!重い!疲れたっ!しんどいぃぃ!

この速度で計算すると、私たちが空中庭園側よりも2時間ほど早く到着できる。これは君と私、両方にウィンウィンの結果だよ!

どこがウィンウィンだよ!ひぃ――っ!あそこに石っ!

腰に手綱を掛けられているというのに、ラミアはなおも常軌を逸した機敏さで道路上の石を飛び越えていく

しかし、ラミアに引っ張られた古い馬車及びその上に座るロランはそうはいかない。つられて10cmほど跳び上がって、着地で強く地面に打ちつけられた

ラミア!気をつけろ!これは結構古いんだ、壊れたらもう代わりはないんだよ!

じゃあ馬車なんか引っ張らせるなっての、ひぃひぃひぃ――ッ!

それと同時刻、ある別の場所では……

定期的に連絡してください

???

……いつも通り、巡回中だ

6500m、この体はやはりこの高度が一番快適だ。先ほど間違った目標を追跡したお陰で、多く飛べた分余計そう感じる

でも「ロキ」は翼が好きではないと……理解できないな

……

任務と関係のない目標を追跡しないでください

???

ちょっと「ロキ」を外に出して遊ばせたいだけだ

この前のやつ、あれもあの方が指示した高レベルの目標だった。彼女はもう何も持っていないと言っているが、信用できん

そうですね

計画通りに進めてください

とにかく集中してください。あなたの意識海はすぐに他のものに影響されてしまうので

???

……わかってるさ