ルシア、リーさん、どこにいってたんですか?
リーが落とした物を一緒に探しに行っていました。落とし物は見つかりましたが、リーが突然いなくなりました
えっ、何かトラブルでもあったのですか?
……
トラブルではありません。しばらくして、リーが同じポイントを周回していることに気づいて……
ゴホン、この都市の道路はどこもかしこも似通っているんで、少し迷っただけですよ
リー、それはナビゲーションモジュールが……
ルシア……しーっ……!
了解
地平線から太陽が昇り、暗闇に隠れていた侵蝕体の姿を照らした
金属を切断する音が一瞬で消え、その後、侵蝕体の視覚モジュールには己の破壊された躯体が現れた
電子脳に受信された信号は、頭部が地面と衝突する中に徐々に消えてゆき、電子脳に刻まれた最後の映像はただ鮮明な赤色、それのみだった
ルシア、次は3時の方向です
わかりました!
ルシアは刀についた侵蝕体のオイルを振り落とし、体をかがめてリーフが示した方向に向かって前進した
ルシアの視覚モジュールに一瞬だけ赤い光が現れた。ルシアはそれに気づき、瞬間的に赤い光の方を見た。そこにはメルトビートルが地面に伏せていた
!!
メルトビートルを見るやいなやルシアは素早く横の掩体に避難したが、爆発は起こらなかった
どういうことでしょう?
オーバーロードさせました。目に見えてしまえば恐れるに足りませんよ
僕は再び同じミスはしません
助かりました
気を緩めないでいきましょう
通信中の言葉と同時に、リーの弾丸が、ルシアに飛びかかろうとしていた1体の侵蝕体を捉えた。ルシアはすぐに刀を旋回させて、侵蝕体の頭を突き刺した
この周りをさまよっていた侵蝕体は全て片づきました
こちらも同じです
38ブロック中央の残りの侵蝕体の排除を開始します。リーフ
お願いします
リーフが両手を少し上げると、通りに集まっている侵蝕体の行動が突然遅くなった。ピンク色の電流がリーフのフロート銃に流れている
制御時間は13秒です。ここからは指揮官と皆にお任せします
はい。指揮官、行きましょう
指揮官、本当に手は大丈夫ですか?
ええ……
遠くにいるルシアが左手で攻撃の合図をした。リーが傍らの建物の影から飛び出してきた
身を隠していた掩体を乗り越えて、通りにいる侵蝕体の一群に向かって突進していく
ルシアとリーが前進する度に、次々と侵蝕体が銃や刀で倒されていく
目の前に、1体の侵蝕体が立ちはだかった
銃口を侵蝕体の眉間に当て、引き金を引いた。侵蝕体はすぐに地面に倒れた
指揮官、左です
敵の行動はリーフに抑制されて遅くなっているが、攻撃性は失われていない
体を左に翻して、かろうじて侵蝕体の攻撃を止めることができた。リーが銃弾を放ち、侵蝕体を絶命させた
ぼうっとしないでください
銃を構えて発砲した。弾丸はリーの体をかすめて、後ろに忍び寄っていた侵蝕体にヒットした
ふっ
銃を安定させるために、無意識に両手に力を入れすぎていたようだ。包帯の中から血が滲み出してきた
指、揮、官
大量の侵蝕体はグレイレイヴンによって一掃された。いつの間にかリーフが背後までに来ていた。隊員に見られないように後ろに隠していた手を、リーフが前に引き出す
動かないでください。応急手当をします
ルシアとリーは、全ての侵蝕体を撃退したことを確認し、こちらに向かって歩いてくる
リーフは慣れた手つきで応急手当をしてくれた。そのままふたりでリーとルシアを迎えた
指揮官、どうかされましたか?
……まぁ、いいでしょう
少し休憩しましょうか?
承知しました
指揮官の仰る通りです。このまま出発しましょう