Story Reader / 外伝シークレット / EX03 在りし日の残照 / Story
ガブリエルさん、最近のルナ様、ますます変だと思わない？
わざわざここまで来るなんて……妙だ
頭領自ら臨戦する、士気を高める行為として特段おかしなことはない
……ふぅ
ガブリエルさんとは会話にならないや
そう言いながら、ロランは地面に落ちていた石を拾い、後ろの木に向かって投げた
不気味なことに、石は木にぶつかる直前に、空中で静止した
すると石からゆっくりと一本の手が生え、やがて体が出てきた……生えた足が木にまとわりつく
うわ……！あ、危ないなぁ、なんで石なんか投げてるの……！
ふん、それよりルナ様おひとりで一方向の攻撃を担当するなんて、大丈夫なのかい？
だ、大丈夫でしょ……援護はいらないから、私たちは任務を完了したら撤退するようにって
……全部ひとりで、か。ルナ様らしいやり方だね
でも、一緒にいて妙だと思わないの？僕たちよりはるかに多い時間、ルナ様と一緒にいるだろう？
べ、別に……た、たしかに最近、ルナ様がひとりでいる時間が増えたような気はするけど……
それが、妙なんだけどな……
で、でも、ルナ様とα様はいつも通り……
……使えないな
この前「あの人」を監視するように言っといたけど、首尾は？
えっ、だって……そっちが直接交渉しても結果が出ないのに、私に言われたって困るなぁ……
……「あの人」はいつも通り、目的もなくあちこち旅をしてるみたい
……そいつは何よりも妙なことだな
最近の南米の信号を考えると、「あの人」は何事もなかったかのように見える
情報がまだ伝わっていないのかもしれん
知っての通り、地上の情報伝達速度は前より遅くなっている
僕たちが間違っているという可能性は？
もしかしたら、「あの人」はまったく気にしてないかもしれない？
……そうならば、「あの人」はよい代行者ではないということだ
代行者が必ずしも職務に忠実とは限らないさ。代行者が生まれた経緯を知ってるかい？
…………
ね、知らないだろ。代行者自身以外は、代行者について詳しく知りえない
それが問題だね
ロランはまだ話を続けようとしたが、突然、ラミアが遠くを指差した
は、始まった……
とっさにロランとガブリエルはラミアが指差す方向を見る。航路連合があるはずの場所が、爆発の炎と煙に包まれていた
何が起こったんだろう……「あの人」を倒せば目的は達成するんじゃなかったのか？
ルナ様は……す、全て破壊するつもりなんだ……
それはまずい……ここで僕たちの力を見せてしまうのは、悪手だな……
空中庭園と「あの人」の力量が見えていないのに、こうなったら僕たちが一気に不利になる
ルナ様が戻られたら聞こう。力を隠す必要がなくなったのかもしれん
そうか、そうだね……
今でも彼らの側に立っているつもり？
その人物は、屋根が作る陰に半分隠れるようにしている男に話しかけた。男は光と闇の境界線に立っているため、シルエットしか見えない
闇に明るくライターの火が灯り、真っ赤な火の玉が浮かび上がる。ひと筋の白い煙が立ちのぼり、空間を漂っていた
そうだ。全てが面白くてな
「華胥」が加わって更に……面白くなったよ
あなたを生かすべきではなかった……
そちらの立場から物事を考えると、同情を禁じえない
私が生きているがために、仕事がかなり困難だろう
いや、ご存じでしょうが僕はさほど気に病んでません。今のところ、あなたまだ使い道がある
……後ろにいるふたりの年長者にとっても、そうなのかな？
不要な質問は受けません
答えてくれるとも思っていないさ
それで、「華胥」は？
交換する情報は？
……引き続き空中庭園の弾を避けるのに十分な情報です
フェアでよろしい。ひとつ聞こう……「華胥」の目的とは一体何か？
「華胥」はAIでそれ自体に目的などない。目的を与えるのは主人の役目だ
あなたの言う通りだ。華胥は現在、所有者が変わったが……華胥の主人は、本当に変わっているのだろうか？
人影は頭を横に振り、そして頷いた。手で拳を作ってから、指を開いて緩めた。それと同時に、電子スピーカーから笑い声が伝わってきた
本当に……ますます面白くなってきた
最後の質問です。どんなおこぼれを狙っているんです？
おこぼれか……ひょっとすると、全てを望んでいるかもしれない
勇気があるなら、どうぞ
