悪くない。もっと続けて
αは再度、ワタナベ目掛けて突進した。対するワタナベは両手のダガーを交差して構え、αの鋭い突きを受け止める
今度は何を企んでいる?
別に、ただの「狩り」よ
狩り……?
ええ。狩りをあなたたちに邪魔されたってだけ
αの力が緩んだ瞬間を逃さず、ワタナベはダガーを持つ手を翻してαの刀の切っ先を地面に下げ、柄を踏んで上へと跳躍した
そいつはすまなかった
ワタナベは空中で身を反転し、落下の勢いでαに次の一撃を放つ
αは悠然と刀を持ち上げながら、背面をガードする姿勢をとった
刃と刃が衝突し、眩しい火花が散る。力の拮抗を感じたふたりは身を離し、互いに距離をとった
αの腕にはダガーによる裂傷が浮き上がり、赤い循環液が滲み出していた
どうした、もう狩りは終わりか?
獲物はあなたたちじゃない。邪魔されついでに遊んであげただけよ……まだ遊び足りない?
それなら……取引しない?
αは刀の先で、折り重なるオブリビオンを指し示した
今すぐ連れ帰って治療すれば、命は助かるかもしれない。お遊びを諦めてくれるなら、見逃してあげるわ
ば……馬鹿にしやがって!
倒れているオブリビオンのひとりが気炎を吐きながら、αに向かって発砲する。しかし弾丸は、彼女に届く直前に一太刀のもと跳ね返されてしまった
……
クラーク、負傷者を連れ帰って治療を
賢明な判断ね
じゃあ、お先に。獲物がちゃんと狩り場に入ったか確認しなきゃ
あの男、一体何をしたんだ?
αは背を向けると刀を収め、バイクへと歩き出す
…………偽りの真実なんか追いかけるからよ
オブリビオンの警戒を意にも介さず、悠然とバイクに跨ったαはワタナベに目線を寄越した
お遊び、楽しかったわ
覚えておけ。次にオブリビオンの拠点に足を踏み入れたら、お遊びではすまない
ふふ、楽しみが増えたわね