Story Reader / 外伝シナリオ / EX05 迷境ノ疵 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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EX05-10 ヤマイヌの刻

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21号は飛び出した。扉だけでなく壁ごとが倒れてあたりにはもうもうと煙が立ち込めるなか、ふたりの咳き込む声が聞こえた

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量を抑えてって言ったでしょう!?

???

入れれば何でもいいだろうがよ

よく知る声が聞こえ、21号は目を見張って、黙ったままその煙に突っ込んだ

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バカ、今は追跡中なのよ!こんな騒ぎを起こしたら……あ……!?

???

何だよ?待ち伏せか!!こちとら読めてんだ!この爆弾を喰らえ!

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……ノクティス!待ち伏せじゃないわ

爆発による白煙が消え、人影が見えた……ヴィラは片手を腰にあて、もう片方で武器を持っている。21号は彼女の足に抱きついて顔をヴィラの腰にうずめ、無言のままだ

隣のノクティスは自分の頭の上から、スレーブユニットを引きはがそうとしている

21号?ハハハハハハ、よーし、生きてたか!

まったくもう……

ヴィラは武器を持ったまま肩をすくめ、困ったような表情を浮かべた

21号、もういい?

……はい

21号は小声で返事し、手を離して下がった。スレーブユニットもノクティスから飛び降り、21号の側に戻った

あらあら、指揮官と一緒なのにビビって、泣いちゃったの?

……ビビる?21号じゃない。ビビったのは指揮官

自分がヴィラとノクティスとリンクしていないことに気づき、通信チャンネルを調整し、ふたりと通信を再開した

連絡が途絶えたあと、そっちに何が起きたのかわからないけど、何とか合流できたわね……予定時間よりちょっと遅れたけど

女の子を待たせるのはよくないけど、女の子を待つ分には、別にいいでしょう?

謎の人物の正体はまだわからない。途中でちょっとトラブルに巻き込まれてね。誰かにからかわれているのかもしれない

ふん。とりあえず、私はノクティスとその印を追ってここまで来た……毎回あとちょっとというところで逃げられるの

どうやってここに来たんだ?

じゃあ、話さなくていいわ。とりあえず私たちは最後の印に沿ってここに来たの。あいつより先に、「彼」を見つけないと

ヴィラはそう言いながらリビングへ入った

で、何か発見は?

赤ペンキで「こちらへ」と書かれた壁や、人形の頭が矢印の形に並んでるとか。幽霊やこの家の扉のロックとかな。【ピ——】、自分の家の扉にあんな複雑なロックかけるか!?

ノクティスの話で、物置きで見た赤い落書きを思い出した。21号も同時にそれを思い出したようで、ふたりを物置きへと案内した

ここ

他にはないのか!?

物置きの落書きを見るやいなや、ノクティスは憤慨したように大声を上げた

今回は地図か?

……この家の裏?そこが我々の目的地のようね。「最後の地獄」……とか、わかってはいたけど、ダサすぎて笑えるわ

では、行くわよ

ヴィラが発する冷ややかなオーラに、思わず後ずさってしまいそうになる

一日中私たちとかくれんぼをしてくれた、いたずらっ子と感動のご対面だわ

……あ、そうそう、21号

はい

よく戻ったわ

……21号、スタンバイ

家の裏には森があった。一同は森の小道を歩いていく

乾いた川の側道を歩いていると、荒れ狂う風が吹き渡り、その風が木々の葉を揺らした

奥へ進んでいくと、風の音に交じって断続的に声が聞こえた――どうやらそれは前方にいる

???

うっ……

??

ははっ――ははは――

……

先客がいるようよ

小道の突き当りの木々の間に月の光が注ぎ込んでいる。ヴィラは静かにするようにと隊員に目配せをした。3人の構造体は忍び足で低木の後ろへと隠れる

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――お前を殺してやる!粉々にしてやる!内臓を引き抜いてお前の顔に巻き付けてやる!

ふふ……

大きな衝撃音とともに現れたのは、誰も想像すらしていなかった構造体の姿だった……

あれ、ロランなの?

一瞬ロランとわからなかったらしいヴィラは眉をひそめている。ロランは空中庭園の監視からしばらく身を隠していたのだ。それに、今の彼は……機体が変わったように見える

誰と戦ってるんだ?

ロランは地面に着地すると、ついてもいないのに服の埃を払った。樹上にいるらしき彼の「敵」は枝に隠れているせいで、その顔が見えない

やれやれ……こんなところまで誘導して、ただ殴りたかっただけなのかい?

不満があるなら、座って話せばいいじゃないか。急に手を出すなんて、およそ紳士的なやり方とはいえないな……

???

くだらんことを言うな!任務なんて知ったことか!お前にはここで死んでもらう!

そう叫びながら、敵は獣のようにロランに飛びかかった。低木に遮られてよく見えないが、ロランは劣勢のようで後ずさっている

その刹那、ロランの笑いを含んだ目と視線が合ったように思えた。それは錯覚だったかと思えるほど、一瞬の出来事だった

…………

攻撃を受けてロランは吹っ飛ばされ、地面に倒された。彼はやれやれとばかりに手を振りながら咳き込み、その口からは循環液が流れ出している

ちっ、任務すらどうでもいいとは……こんなサイコなのを寄越すとはね……

殺すのはいいけど、せめてなんで殺されてしまうのか、説明してくれないかな

君のボスから、何か伝言とか預かってない?

それとも……ゴホッ、君はただ殺すためだけの傭兵ってこと?

ロランの言葉を聞いた敵はしらばくためらっていた。その後、何かが頭上に飛び上がった

……あれ……!

21号の声で一同が注目するなか飛び上がったのは、鋼鉄の巨大な獣だった。月の光を背に浴びて辺りを睨みつけるその様子は、思わず体に震えが走るほどだ

あの方が……お前に見せるもの……

人のような形をした大きな獣は目を光らせて再び口を開いた。その声はかすれて抑揚もなく、性別があるのかすらわからない

「ロキ」はすでにお前に見せた

私たち、相手を間違えていたようね……あの落書きは私たちに見せたものじゃなかった

だがお前にはその価値がないようだ

だからここで死んでもらう……はは……

巨獣は犬が吠えるような声で笑った

どうする、ヴィラ、やっちまうか?

……ノクティス、21号、撤退よ

任務とは無関係だもの

追う対象を間違えていたって言ったじゃない。今ならまだ引き返せる。指揮官、あなたは自分の任務を終えたってことじゃないかしら?

ヴィラの口調はどこか意味ありげだ。彼女は何かに気づいているのだろうか?

……やっぱりね。なら、なおさら戦う必要はない。むしろ私の隊員と一体何をしたのか、じっくり聞かせていただこうかしら

はっ、好きにしたら?私はさっさと仕事を片づけたいだけ

あなたの命令は受けないわ――

ここに着いてからずっと黙っていた21号だが、彼女の意識海が危険を感じて荒れ狂っている

21号、見つかった……!

……チッ