太阿は避難場所に向けて前進している
遠くにある太陽は南から昇り、明るい黄色の光を放っている。そして北の方に光るひとつの点が現れたのを見た。星のようにかすかな光を発している
太阿は懸命に前進しているが、その動きは非常に遅い
あれを見て……侵蝕体が攻めてきました!
全員戦闘の準備を!この怪物を撃退せよ!
尊いものを持ち上げるように、太阿は恭しく女の子を持ち上げた
B1……!私の名は——
もう、女の子の泣き声やその他の喧騒を、損傷した受信機で識別することはできなかった
待って、あれは人では?
太阿は女の子をぐいと押し出した
子供の安全をまず確保!くそ、このクソ侵蝕体ってやつは、何なんだ!
射撃準備!カウントダウン!
HNB1の記憶メモリーには人類の英雄が戦死する時の場面が流れ、必死にかっこいい笑顔を作ろうとしていた
はたから見れば、ただ1体の残虐で恐ろしい怪物にしか見えないかもしれない……
しかし、太阿は知っている。使命を成し遂げたのだ。私は太阿、人類を守るために生まれてきた
やがて、全てを感じなくなった