この怪物め、どけっ!
侵蝕体が力尽きた常羽に最後の止めを刺そうとしている時、かろうじて蒲牢衆が追いついた
彼はライフルで攻撃の姿勢を保ちながら侵蝕体が常羽に近づかないように牽制している
へ、兵隊さん!
側にいた于が弾を充填したライフルを蒲牢衆に手渡し、そして素早く他のライフルにも弾を充填した
蒲牢衆は肩から手榴弾を外して侵蝕体に向けて投げ、すぐさま常羽を地面に押し倒して自分の体で覆った
手榴弾の衝撃で高台から落ちた侵蝕体は直後に対空ミサイルで射抜かれ、空中で木っ端微塵になった
院長と于は高台に飛び上がり、蒲牢衆と常羽を助け起こした
プロテクターがあるから、私は大丈夫です。早くこの子を
……たいした怪我じゃない。本当に、ありがとうございました
いえ、私の落ち度です
まだ戦いは続いている、これで失礼します
戦争が終わった時に、またお会いしてお礼できますよう……
…………
ハハッ、そう願ってます!
い、院長、おいらたちも……
于は常羽を背負っている。院長は震える手で常羽の頭を優しくなでた
…………
戦争が私たちを路頭に迷わせた……常羽はまだ小さい。こんな苦しみを受けるべきじゃない……
そ、そうでやす……
小僧、悪いな。最後はお前に代わって決めさせてもらう
私はやはり人間の作る物を信用できん……
于よ、この子を港まで送り届けて、生きられるだけ生かせよう
院長は言い終えると、高台から飛び降り、俞生の死体を抱えてゆっくりと九龍劇場の方へ歩いていった
于は院長の後ろ姿が桟道の中に消えていくのを見届け、涙を袖でぬぐったあと、意識を失った常羽を背負い港へ向かった
——
戦いの煙焔はかつて繁栄したこの都市上空を覆い、九龍人全ての未来と過去をも遮断した……