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All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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EX01-5 授格者

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クロムが空中庭園の輸送機隊と連絡を取っていたその時、突然カムイが目を醒ました

……お前らは……

カムイは起き上がり、大剣を構える

意識海の影にしては変わった姿だな?

まあ、どうせ戦うんだからな。どうでもいいか

……何かが変だ

なぜだろうか。目の前のカムイは、決してカムイではないという確信がある

それはこちらの台詞だ

カムイはどこだ?なぜ俺はアイツと話せない?

……まさか……

おそらく、そのまさかでしょう

あなたはカム、ですね?

……お前らは、影じゃないのか?

カムは大剣を持ったまま、動きを止めた。今の自身の状態に気づいたようだ

……一体どうなってる?

カムは大剣を振り上げ、こちらに向けた

説明しろ

手短に言え

つまり、こうなったのはロランの仕業ということだな?

その通りだ

そしてすぐにでも解決しないと、カムイの意識が消える可能性がある

少なくともアシモフはそう言っていました

空中庭園の手術台で、あの根暗理系野郎にバラされるのは御免だからな。やることはひとつだ

お前らの話を聞く限り、大した相手ではなさそうだ

このお……俺……オ……レ……

カムは突然震え始め、大剣もろとも音を立ててビーチに倒れ込んだ

く……そ……

何かに抵抗するかのように、「カム」の身体が強張っている……

――Vegvisir……

指揮官!避けろ!

「カム」はそのまま暴走し、こちらに向けて大剣を振りかぶる

カレニーナが押し退けてくれなければ、今頃大剣に首から両断されていただろう

指揮官ッ!!

はぁ……はぁ……うぁああああ!

カムイさんの機体周辺のパニシング濃度が急速に上昇しています。今すぐ緩衝装置を装着しないと……!

――Vegvisir……

――Asgishjalmur!Asgishjalmur!!

チッ、まともな会話はできそうにない!

なら、ごり押すしかねぇな!

カレニーナはバズーカを振り上げてカムを押しのけると、その勢いのまま砂浜に引き倒し、砂の中へ押し込んだ

リーフ!今です!

カムが反応もできないうちに、ルシアとリーが力いっぱい上半身を押さえつけた。カムは暴れもがき、砂が舞い上がる

そして一瞬の隙をついて、リーフがカムの首の後ろに緩衝装置を挿し込んだ

意識海緩衝装置、最大効率!

……ぐ……あああッ……!

……………………………………

……………………なに……が……起きた?

緩衝装置で出力を5%に強制制御しました。緩衝装置が失効するまえに解決策を考えましょう

……俺が訊きたいのは、なぜ急にカムイの身体を制御できるようになったのか、それなのになぜ、暴走してしまったのか、だ

あなたの身体のエネルギー制御は完全に失調しています。おそらく、本体の意識海が閉じ込められたからだと……

私だけでは高精度点検はできませんが、空中庭園なら……

再びアシモフを呼び出す

今度は何だ?コーヒーで一息入れてる間にまた何か起きたとか言わないでくれよ?

無駄口はいいから、さっさと教えろ

カムイ?意識が戻ったのか?

……ふーん。初めまして、とでも言うべきか?

挨拶はいい、何の役にも立たないだろうが

これからお前の意識海に邪魔するんだ。挨拶くらいしとかないとな

は?

言葉通りの意味だから、深く考えないでくれよ

何が言いたいのか知らないが、いちいち癇に障るヤツだな

疑問があるのなら、簡単に説明してやってもいいが

……その説明を聞いてから、お前の端末をぶっ壊すか決めてやろう

ふん……じゃあ、よく聞けよ

わかっているとは思うが、意識海ってのは、構造体に人間の意識を保有させるために設計されたシステムだ

そして、その人間を模した脳神経配列構造に、汎用コンピューターの入出力をベースとした端子が追加された

まあ……追加したのは俺なんだが。それはさておき、

しごく簡単に言えば、今の状況はコンピューターが存在しない扉を叩き続けているようなもんだ

コンピューターは他の扉を知らないからな

お前が家出しようが爆音でヘヴィメタ聴いてようが、あいつはお前を見つけるために、ひたすら「設定された」扉を叩き続けることしかできない

だから、それが何だというんだ?

……お前は普通の構造体とは違う

お前の逆元装置のエコーバックには昇格ネットワーク特有の信号が見られる

お前は昇格者ではないが、比較的それに近い存在だというわけだ

全員

!!!

先ほどの[player name]の状況説明も踏まえ、俺はお前のような特殊な性質の昇格者を「授格者」と名付けた

そうだ。お前の説明を聞く限り、カムの「昇格者的性質」は、おそらくロランによって授けられたものだろう

つまり、「昇格者」特有の能力のようなもので、他の個体に昇格者の属性を付与したってことだ

既存のケースと対照してみたが、カムの状態は九龍城の首領「曲」のそれに酷似している

カムの出現は、ハセン議長と俺の推測を裏付けた。空中庭園が過去に接触を持った連中以外にも、昇格者は確実に存在する

独自の目的を持つ昇格者、地球奪回戦線との協力を厭わない昇格者なんかもいるかもしれないな

話がそれた、本題に戻ろう

「カム」、今のお前は家出をした状態だ。そしてお前の身体の制御システムは、帰るための扉を見つけられなくなっている

もしお前がカムだっていうんなら……当時の黒野の資料を見る限り、お前の意識の主導権はカムイにあり、お前の「端子」はカムイに譲渡されている

つまり、お前の意識にはその身体の端子をどうにかする権限がない

動作端子は誰の電気信号でも食らうが、エネルギー関係の追加プラグインのように制御に認証が必要なものは……

マスターが自己閉鎖状態に入ってしまえばおしまいだ。サブの意識では、エネルギーシステムの失調は制御できない

……解決方法を言え

空中庭園に戻ってメンテナンスを受けろ。お前とカムイを完全に分離し、お前の意識を別の機体に接続する

…………

もちろん、完全に分離しても……今の問題を必ず解決できるとは限らん。暗力の影響がどれだけあるかもわからないからな

……

だが、少なくとも問題解決のための時間は確保できるだろう

[player name]、出発前に技術試作を渡しただろ?

あれは九龍夜航船の「枷」のサンプルをもとにして作った、ネックリングサイズの遠隔コネクトシステムだ

なんだよ?小さくすることがおかしいか?早く出せ

まずは付けろ。説明はそれからだ

まあ、エイプリルフールの時のアレみたいなものだな

SOCを採用して、外殻を芸術協会に作らせた

それからマスキングアルゴリズムをいじって、意識の圧迫を0.27%まで低下させた。もちろん出力は維持したままな

最後に細かいところを色々調整して、出来上がりってわけだ

よし、信号が来た。カム、できるだけ[player name]に近づいてくれ

カムが半信半疑で近寄ってくる

リーフ、緩衝装置はあとどれくらいもつ?

10分後に効果が減衰し始めます

結構だ

よし、接続するぞ

少しくすぐったいかもしれないが、我慢しろよ

……接続完了だ

ん?この視覚端子は一体どうなってる……?

まあいいだろう

カム、エネルギー効率は正常値に戻ってるはずだ。試しに動いてみろ

ああ、忘れてた。心配するな。お前には今、カムの意識海の景色が見えてるんだ。お前はカムの「認知」を見てるんだよ

授格者の視覚端子を作るのは面倒なんだよ。どうせ戦うのはカムだし、お前の視覚端子をそのまま意識海に転送させてもらっている

お前のエネルギー調整と戦術調節に関する権限さえ担保されればいいわけだから、あとは簡単に済ませたってわけだ

授格者というのは、根本的にシステムが違うようだし……完璧な端子を作るには、少し時間がかかるだろう。ニコラに機体を設定してもらわんとならんしな

試した、全て正常だ

……少なくとも、アンタの技術力は本物のようだ

よし!じゃあ、[player name]の視覚を補助する信号を送るから、カムはロランのもとへ向かえ

……ロランの信号はそれほど遠くない地点にある。どうやらあちらさんも、お前たちのことを「心配」しているようだな

……

……言っておくが、アンタを完全に信頼したわけじゃない

だが、カムイを元に戻すために、当面は俺の半身をアンタに預ける

おや、誰かと思えば

まさか悪い子が「選別」を生き残るとはね

知ってるかい?ほとんどの構造体は「選別」によって与えられた怒りや絶望を、自分自身の望みとして受け入れてしまうんだよ

もちろんそうなってしまえば、自分の魂とはサヨウナラさ

悪い子でもなんでもいい。カムイを元に戻す方法を言え

ふん……「真の主人格」の君の望みがそれかい?反吐が出るね

まさか、あのカムイとかいう幻影に甘い夢でも見せられちゃった?

与太話をしに来たんじゃない

この古臭い身体でわざわざ来てやったのは、お前に俺の欲しいものを吐かせるためだ

お前は俺を怒らせた。相応の代償を支払ってもらう

覚悟はいいか?

………………くくく……

………………くくくくくく……

……はっはっはっはっはっはっはっはっ!

そんな口を叩くなんて、うまいこと「試練」から逃れたようだね……

人間も、君みたいな人間未満も!皆同じだ!

昇格ネットワークに選ばれたというのに!いつも昇格ネットワークを失望させる!

わかったよ、来なよ

悪い子は僕がもう一度躾けてあげよう

ちゃんと「人」として育ててあげなきゃ、先生である僕の資質が問われることになる