う……んん……
気を失っていたルシアが目を覚ました
空中で、見知らぬ亜人型構造体が侵蝕体と交戦しているのが見える。北極連合の構造体のようだ
遥かに見える氷原では、イッカクの捕獲作業が行われていた
指揮官……
それに……ビアンカさん……?
もう大丈夫ですよ
周囲には空中庭園の輸送機も複数駐機している。リーが構造体たちによる治療を受けていた
やっと……終わったんですね……
正式な任務じゃなかったのに……次々と色々なことが起こって……なんだか現実感がありません……
パカラッ、パカラッ――
守林人たちは、構造体収容槽に収容されたロゼッタの身体をどうやって運び出そうかと思案中のようだ
おい、忘れんなよ。そいつが目を覚ましたら、こっちで裁判を受けてもらうからな
だが、今のお前らはもう、罪人じゃねぇ
……
正直に話すよ……
確かに、俺たちは罪人を守林人に改造して……手酷く扱った……
だが、侵蝕体の勢いが増してきた時、俺たちは恐くなったんだ。守林人に復讐されるんじゃないかって
ロゼッタがイッカクに会いに港に現れる度に……
港の人間がした仕打ちを……思い出しちまう……
それに、ロゼッタはデカイし……人を寄せつけない感じだろ?恐ろしかったんだよ……
……約束する。今回、守林人の奮闘をこの目で見たからには、二度と差別なんかしねぇ
なるほど、結局はそういうことだったのか
……なんであれ、北極航路連合は私たちの家でもある
やり直そう。もう一度、初めから
……もし、最初に来たのがあんただったら、みんなもっと早く守林人を受け入れてたかもな
……?
お前、何言ってんだ……
……イヴァン、背中に乗れ
うん!!
えっ、イヴァンは森で生活するのですか?
港には戻るよ。けどその時は、目を覚ましたロゼ姉と一緒じゃなきゃ
このガキは、本当に……
指揮官、私たちもそろそろ行きましょう
最後に少し、よろしいでしょうか?
北極航路連合は空中庭園に対し、長らく中立の立場を維持していらっしゃいますが……
我々には、北極航路連合と守林人の皆様のような強力な盟友が必要です……どうか地球奪回戦線の一員として、ともにパニシングと戦っていただけませんか?
守林人たちは困惑しているようだ。誰もが、ディアンナの言葉を待っている
……今すぐに、というわけにはいかないが、いずれ検討しよう
そうですか……
そう返答し、守林人たちは点々とした足跡を残しながら雪深い森へと去っていった……
……
ルシアは空を見上げた。耳元で、αに囁かれた言葉が蘇る
その日が来るのを、待つ……一体どういう意味なの……
氷山の上に立つαは、北極海を漂う流氷を見つめていた
パニシング中継通信に接続――
やあ、聞こえるかい?状況はどう?
もしもし?……
……
ねぇ、間違いなく聞こえてるよね?
ブツン――
αはなぜか、若干の怒気を込めて通信を切った。そして海面を凝視し続ける
まるで、そこに何か生物が存在しているかのように……