おい!テメェら!!
止まれ!!止まれってんだ!!
コンテナの脇から、捕鯨砲を持った男が出てきた
余所者が勝手に入ってくるったぁ、いい度胸だな?
空中庭園執行部隊グレイレイヴン、私は隊長のルシアです
ちっ、んなこと……空中庭園?
……はい
いいぜ、船長会議からお達しは来てる。物資交換の手前、空中庭園のやつなら通してやらぁ
まあ……空中庭園の根性なしが何しに来たかは知らねえけどよ……?
こっちのいざこざには、絶対首を突っ込むんじゃねぇぞ!わかったならついて来い!
こ、根性なし……?
……
さあさあ、この埠頭でお迎えを待ってな!
さっさとお空に帰って、二度と戻ってくんなよ!
……
っと……また騒ぎが起きてるみてぇだな。……ちょっと行ってくるが、絶対に、余計なことはすんじゃねぇぞ
そう遠くはない別の埠頭に、人集りができている。何かあったようだが……
あれは……ロゼッタ……?
ロゼッタの巨躯は、群衆の中にあってもかなり目立つ。一方で、イヴァンの姿は人の波に埋もれてしまってよく見えない
どうせまた、キカイイッカクのことで来たんだろ!?
あのクソイッカクが現れる度に、港が滅茶苦茶になっちまうんだぞ!!
守林人のくせして……掟を破って追放されたくせに……!!
散々掟を破った挙句、また戻ってきたと思ったら、今度はクソイッカクを庇うのか!!
お前のその……
ロゼッタは手中のスピアを見つめた
そうだ……
そいつは本来、俺たちの土地を守るための槍だ……
港中が侵蝕体で大変なことになってる時に……
イッカクと一緒になって迷惑かけに来やがって……お前ら守林人に期待してた自分がよ、本当にバカみたいだぜ……
……
あんたらがわかってないんだ!ロゼ姉は毎回ドレークが暴れないように、なだめるために来てるんだよ!侵蝕体だってやっつけてる!!
ずっとずっと、何年もの間、一度だって約束を破ってない!あんたらにバカにされようがなんだろうが、守林人は一生懸命森を守り続けてるんだぞ!!
あんたらは、それを見たことないだけじゃないか!
このガキ……!また森に行ってやがったのか……!
ロゼ姉、今度も侵蝕体やっつけるのを手伝ってくれるよね?ねえ?
……
話の通じねえガキだぜ……いつも教えてやってるだろ?
俺たち北極航路連合にとって何より大切なのは、集団意識と故郷に対する忠誠心だ
パニシング爆発の日から、俺たちはずっと自力で故郷を守ってきた。裏切りは決して許さねえ
裏切り者は信用できねぇんだよ!パニシングに侵蝕されたロボットと同じようなもんだ!
ふん……耳が痛くなるような言い分ですね
ロゼッタは何ひとつ言い返さない。微塵の動揺も見せることなく、同じ姿勢で立ち続けているだけだ
お前さん、もうわかったろう?さっさと森に帰れよ
港の人々がロゼッタに武器を向けた
そうだッ!森へ帰れッ!!
指揮官……どうしましょう……割って入るべきでしょうか?
では、私が行きます
……了解しました
その時だった。港付近の海面がにわかにざわめき――
巨大なキカイイッカクが跳ね出たかと思うと、海面を強く叩きつけるようにして水中に戻った。巻き起こされた波が、港に停泊する船を大きく揺さぶった