1日すぎて……また1日すぎた……
今日で……何日目だっけ……
小さな手の、汚れた爪が、焼け焦げた壁に痕をつける
今日が何日目なのか、もうとっくにわからない。飢餓と恐怖は、少女の理性と記憶を完膚なきまでに叩きのめしていた
「浄化塔が再起動したら、戻って来る」。そう言ったのは父だったろうか、それとも叔父だったろうか
少女は日付を数えられなくなった自分を憎んだ。そして、たまに遭遇する侵蝕体に心底怯えていた
実のところ、今日が「3日目」であることはわかっているのだ。ただ、何回目の「3日目」なのか……それがわからない
あぁ……死んだ方がマシなのかも……
祖父はよく、黄金時代に人間がどれだけ世を謳歌していたかを話し訊かせてくれたものだが、少女には到底信じられない
黄金時代が再び訪れることがあるのだろうか?せめて……浄化塔が正常に動作している時代に戻ることができれば……
凡人の理解の及ばないところで、どれだけ人間に貢献していたことか……あの機械が動作不良になって、初めて思い知った
やっぱり、死んだ方がマシ。浄化塔はもう直らないんだし
死にたい。希望なんて何ひとつない
死にたい。誰も助けてなんてくれない
ここから出れば、死ねる
ここから出れば……!
ああああああああああ!!!!!
指揮官!ここです!
待ってください……!
目の前を大小の影がチラつく。何がなんだかわからない
でも、あの影……影に向かっていけば……!
……指揮官!
ボフッ——
夢でいつも見る、ふかふかのベッドみたい――――少女は気を失った
リーフがひと通りの検査を終えると、グレイレイヴンは少女をキャンプのベッドに運んだ
……これから、どうしましょうか?
極度の栄養失調と睡眠不足なんですが……
それに加えて……
リーフが少女のズボンの裾を持ち上げると、黒い血液が流れ落ちた。パニシングの軽度侵蝕の典型的な症状だ
助かりそう?
……脚を切断する必要があります
そんなに深刻なの?
……正直に申し上げると、
うん
切断しても間に合わないかもしれません
はい
指揮官はどうされるんですか?
?
なるほど。侵蝕体がうろちょろする中、この子ひとりだけで生き延びられたとは考えにくいですね。おそらくは家族、または仲間がいた……
そうなると、まだ近くにいるかもしれません
不完全な状態だったコイルガンを不器用ながらもなんとか組み立て、超硬合金の弾丸がきちんと装填されているのを確認する
……実技は軍事学校以来、ご無沙汰だ。さぞ腕も鈍っていることだろう。帰ったら、クロムを見習って自主練しよう……
次は何をテストされるんだろうか?灌木に埋められた地雷を見つける知識?それとも現地の人間との交渉術?
……足跡を見つけた。物を引きずったような痕跡もある
……思ったより、だいぶ近くにいるようだ
指揮官、これからそちらに向かいます
指揮官、なぜそんなところに?
……すみません、差し出がましいことを言いました
すぐに皆を連れて合流します