Story Reader / 境界条約 / 瑠璃頂 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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NO.36 黄粱台

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ひとりで歩き始めたカレニーナを追いかける。カレニーナは舞台へと続く扉から、中を見回していた

カレニーナ……?

しっ!

あそこだ

カレニーナが舞台の端を指差す

???

……

機械体が「正座」のような姿勢で鎮座しているが……その体躯は舞台から浮いているように見える

おかしいだろ?すげぇやつかもしれねぇ

あれとやり合うなら、全員で一気に行った方がいいな

あなたでも戦術を考えることがあるんですね

……てめぇ、大概にしろよ?とにかく、一気に行くぞ

席をお立ちのお客様は、お早めにご着席くださいませ。まもなく開演いたします

……開演?

不肖の機械役者捌型が、文四郎をお目に掛けましょう

「文四郎」がお前の名前か?

どうぞお好きにお呼びくださいませ

『神通文四郎と黒焔魔の戦い』の文四郎を務めさせていただきます

しかしながら、演じられるのは最後から二幕目『将星散りて、残る双剣忠奸を弁える』のみになりますが

舞台に上がれる役者は、もはや私めしかおりませんので

かつて、この華麗なる「瑠璃頂」大劇場には、端役だけでも300余りがお勤めしておりました

あの大千秋楽の日、瑠璃頂の代表作である『金色世代』が舞台に掛かるはずでした

『金色世代』は瑠璃頂の大看板である連嶼さんが主演を張り、驚梅さんがお相手を務める一大演目。端役だけでも80を超える役者が舞台に上がります

ですが開演時刻になっても、中央制御室からの開演信号は一向に届かず……

気づけば、観客席の皆様方も消え失せていたのでございます

私どもはただひたすら待っております。あれから……誰ひとり舞台に立ってはおりません……

一番最初にシャットダウンされたのは連嶼さんでした。演算能力が高く、エネルギー消費量も膨大でしたから……

連嶼さんの誇りだった性能が、連嶼さんの致命傷になったのです

開演がいつになるとも知れず……私どもはただ、エネルギーの消費を抑えるしかありませんでした……

そして気づいたのです。舞台に上がっている時間が長い役者ほど、劣化が進んでいると……

……致し方のないことです。当時は起動できるだけの数で、舞台を上演し続けるしかなかったのですから

私めは最後のひとりです。演目は、先日動作を停止した役者と相談して決めました

この幕は、主演の男形ひとりがいればいい。黒焔魔は、舞台の端を走る壊れた機械体でどうにかなります

どなたかが制御室から開幕の信号を発信してさえくれれば……開演できるのです

自分でやればいいじゃねぇか

制御室は私どものような特化した機械体にとって、「不可侵」の場所

「役」としての私どもに「舞台裏」の概念はないのです。どうか、お願いできませんでしょうか

……

アイラ、なんだか悲しそう

え?そんなことないわ。ただ……舞台を最後まで演じさせてあげたいって思ったの

控室で永遠に自分の最期を待ち続けるなんて……芸術家にとっても役者にとっても……残酷だわ

ええ、ありがとう!

――まもなく開演いたします。お客様は速やかにご着席ください――

「――係員がフルーツとおしぼりをお配りいたします。どうぞご利用くださいませ――」

このお芝居は世界政府芸術協会のデータベースに記録されているわ。この幕は主役が雑兵を挑発して戦うところね

文四郎の口上や見得を侵蝕体に邪魔されないように、守ってあげましょう

デジタルボイス

青雲が空を覆い、黒竜が空へと昇り、黒焔魔が人々を取り囲む――

やや!奸賊め!ついに正体を現したか!

我が一族16の命を奪うに飽き足らず、冥府の兵を放ち、我が民百姓を脅かすとは何事か!

天が貴様を赦すとも、この文四郎は決して赦さぬ!

やあああああ!我が軍に命ず!死してなお退くべからず!黒焔魔とともに三途へ赴こうぞ!