Story Reader / イベントシナリオ / 刹那の恋の囁き / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

ヴェロニカ 刹那の恋の囁き

>

カシャッ――カシャッ――耳元でシャッター音が途切れることなく響く。目の前のヴェロニカはカメラを構えたまま、ファインダーから視線を離さない

その横で自分は、今と同じようにずっと立ち続けている。場所は、ある保全エリアの最上部。高所から下方に広がる景色を、彼女は次々とカメラに収めている

こんな風に長時間「高空に留まる」のは、初めてのような気がする。この高さから見下ろす景色はジオラマのようで、どこか現実感がない

この方位と高度角の写真は、大体撮り終えた

次はもう少し焦点距離を縮めて、さっき撮った景色をもう1度全部……

こちらの何とも言えない表情から何かを読み取ったのか、ヴェロニカは手を止め、考え込むように顔を近付けてくる

どうした?

そうか

彼女は周囲を見回し、ようやく人間にとって不快になり得る条件に「気付いた」ようだった。ここは景色を楽しむ展望台ではなく、保全エリアの高所整備用プラットホームである

ふたりがやっと立てるほどの狭い空間の中、自分は彼女の撮影の邪魔にならないようにと、ずっと同じ姿勢を保ったまま黙って付き添っていた

ヴェロニカは慎重に体をずらし、背中の「竜の翼」を広げ、こちらを抱き寄せた

これならどうだ?

もう少し寄れ。ほら、これが今撮った写真だ

彼女は両手をカメラの操作位置に保ったまま、余裕のある様子で尻尾をこちらの腰に回し、引き寄せる

彼女の体に寄り添うと、確かな体温を感じた

どうだ?イベントのテーマに沿ってると思うか?

金属の指で同じ材質のカメラを操作しながら、保存された写真を1枚ずつ確認していく。その顔には、少しだけ戸惑いが滲んでいた

私とお前で、「ふたり」の要素はあるだろう?

場所もだ。保全エリア全体の景色を収めたし、カメラ位置、光量、角度もそれぞれ変えて撮影した

必要なものは揃えたはずだが、どこか違う気がする。何かが「足りない」ような……

そう答えると、彼女は顔を上げてじっとこちらを見つめ、手にしていたカメラを差し出した

[player name]、お前は何が「欠けている」と思う?

ヴェロニカの手からカメラを受け取ったが、その問いには答えず、ただ微笑んで彼女の手を握った

……何だ?

ヴェロニカは無意識にこちらへ近付き、真剣な眼差しで見つめる。こちらの表情からそのその考えを「読み取ろう」としているかのようだった

カシャ――彼女が近付いたその瞬間、もう一方の手でシャッターを切った

時刻は日没間近。彼女は夕陽を背に立ち、風に煽られる髪は、溶けた金属のような光を帯びている。こちらを見つめるその瞳には、先ほどまでとは異なる感情が宿っていた

カメラの画面を向けて、そのまま彼女へと差し出し、今撮った写真を見せる

……そうか、それが欠けていたんだな

「互いの交流」……つまり、私たちが一緒に写るということだな?

[player name]、カメラを見ろ

ヴェロニカはカメラを構え、迷いなくシャッターを切った。並んで立つふたりの姿が、さまざまな角度で次々と切り取られていく

連写の合間、彼女の「竜の翼」と尻尾が僅かに動き、写真ごとに些細な変化を加えようとしているようだった

お前の言う通りにしたが、ひとつ問題がある

ひと通り撮り終えると、彼女は「竜の翼」を畳んだ。その表情からは撮影中に見せていた柔らかさは消え、真剣なものになる

どちらでもない

このカメラを構えている限り、ファインダーに私たちと背後の景色を同時に収められないことに気付いた

地上の景色から離れすぎているから、もう少し下に近付かなければならない

いや、このカメラには5秒のセルフタイマー機能がある。5秒もあれば「高速降下」するには十分だ

その途中でちょうどいい距離を見つけられれば、いい写真が撮れる

私がお前を抱えて、ここから飛び降りるだけだ。いくぞ、5、4……

ヴェロニカは答える代わりに、セルフタイマーをセットしたカメラを空中へと放り投げた

離すなよ!

反応する間もなく、一気に引き下ろされる感覚が走る。ヴェロニカは翼を畳んでこちらを強く抱きしめたまま飛び降り、凄まじい速度で落下していった

思考なんてまるで追いつかず、ただ本能でヴェロニカにしがみついていた

耳元を引き裂くような風切り音。視界の全てが激しく揺れ、ジオラマのように見えていた景色が、みるみるうちに大きくなる――地面まで、もうほとんど距離がない

今だ!

耳元の風切り音がはっきりと変わった。それはヴェロニカが空中で双翼を広げ、風を切り裂いた瞬間の音だった

落下の勢いが急激に止まる。彼女は翼を広げると同時に姿勢を整え、こちらの体を背後から強く抱きしめながら空中で制止した

「比翼」で宙に浮かぶその一瞬、彼女は自分を強く抱いたまま、空を見上げるように導いた。視線の先にあったのは、同じ速度で降下を続けるあのカメラ――

[player name]、目線はあっちだ

軽やかなシャッター音が響き、この瞬間と傾きかけた夕陽、そして足下に広がる保全エリアの美しい景色が、永遠の1枚に閉じ込められた

役目を終えたカメラは落下の軌道をなぞるように正確に落ち、ヴェロニカの手の中へと収まった

簡単だっただろう?[player name]、この小さなサプライズは気に入ってもらえたか?

まだ慣れないようなら、もう少し安定した飛び方にしよう

彼女はくるりと体の向きを変え、普段通りの飛行姿勢へと戻った。視界の先では、地平線へ沈みゆく夕陽が全てを鮮やかな色に染め上げている

先ほどの「高速降下」による恐怖は消え、頬をなでる穏やかな風の中で、この景色の美しさを存分に味わった

ヴェロニカは片手を離し、先ほどまで手にしていたカメラをこちらの懐へ押し込んできた

ちゃんとしまっておけ。帰ったら、さっきの写真を記念品にしよう

視界の端で、彼女の表情に微笑みが浮かぶ。背後から伝わる腕の力が強くなり、彼女がぎゅっと抱き寄せたのがわかった

次はどこへ行く?

どこでもいい。お前が行きたいと思う場所なら、今みたいにともにいよう