大当たりー!おめでとうございます!
会場の一角が賑わっていた。外れたことに落胆する人もいれば、歓声を上げて拍手している人もいる
その中に、やや戸惑いを見せつつも祝福の拍手に導かれ、ひとりの少女が壇上に上がった。そして、司会者から賞品を受け取る
……指揮官?
どうやら彼女はこの賑やかな雰囲気に慣れていない様子だった。表彰式が終わり、彼女を喧噪から連れ出して静かな場所に移動した
バンビナータ、これを開けてもいいですか?
はい
彼女は綺麗な包装紙を破りたくないようだった。丁寧な仕草でゆっくりと紙をめくっていく。すると中から、淡いピンク色の物が姿を現した
幸せの小さな家……指揮官、これ、小さな家です
賞品は、家の模型と2体の人形がセットになったミニチュアの飾りだった。外箱には「おままごとにぴったり!」と書いてある
こんにちは、お帰りなさい……?
……はい、お帰りなさい……
人形を手に取ると、バンビナータは2体の人形を使って会話を演じ始めた。ぎこちなく人形の姿勢を変えながら、声を低くして会話する
はい!
少し考えたあと、彼女は柔らかく微笑み、スーツを着た人形をそっと差し出してきた
指揮官は仕事帰りの疲れた「サラリーマン」。バンビナータは帰りを待っている……
そこまで話すと、バンビナータはふと口をつぐみ、辻褄の合う関係性を考えた
……はい!「家族」です
ありがとうございます、指揮官
指揮官、まず、疲れた様子で玄関から入ってきてください。バンビナータがお出迎えします
そう言いながら、バンビナータは自分の人形をキッチンに置いた。夕食の準備をしているつもりだろう。彼女の意向に合わせて、人形でドアを押し開け……
ここはひとまず、ごく一般的な演技をしよう。真面目におままごとの人形を演じるのだ
お帰りなさい、家族……いえ、お帰りなさい、[player name]?
バンビナータは、目の前の人の名を優しく口にした
それを受けて、物語の中でサラリーマンが発する、あの疲労と解放の入り混じったため息をついた
今日もまた上司にしかられたんですね。大丈夫です、頭をなでてあげます
暖かい光がバンビナータの人形から放たれたようだった。彼女は人形を操って慰める仕草をし、「苦痛の」サラリーマンを癒そうとした
でも、私から、お伝えすることがあります
短い安らぎの後、バンビナータの人形はすっと姿勢を正し、なんだか険しい気配を漂わせた
実は今日、大家さんが来て……早く家賃を払わないと、明日追い出すぞと言われました
家の米びつも空っぽです……先ほどバンビナータはキッチンで、どうやったらお水とお醤油だけで一汁三菜を作れるか考えていました
それに……
えっ?物語でよくある展開です。バンビナータは最近、端末の中でこのような本をたくさん読みました
他の構造体から、流行ってる本だからぜひ読んでと言われたんですが……まさか、これは不適切な内容ですか?
変える……うーん
うーん……
すみません、指揮官……バンビナータには、うまく考えが浮かびません
少し悩んだあと、彼女はしょんぼりとうつむいた
家族って、日々の出来事をわかち合うんだ
今……バンビナータは、指揮官に話したいことがたくさんあります
そう言うと、バンビナータは何か思いついたように再び人形を手に取り、こちらに向き直った
指揮官、バンビナータはひとりでウサギレースの予想に参加して、特賞をもらいました
はい。そこに、ずっと上を向いている少し変わったウサギちゃんがいたんです。そのうさぎちゃんに賭けました
はい、その子が勝ちました。バンビナータ、その様子もちゃんと録画しました
それから、一昨日は、バンビナータはみんなのために、七夕の出し物のダンスの振りつけを考えて……あっ……
どうやらそれは秘密だったようで、バンビナータは口に出した瞬間、慌てて両手で口を押さえた。その仕草はまるでウサギのように可愛らしかった
はい。この前のバレンタインデーで、もっとうまくなるって指揮官と約束したから、バンビナータはたくさん頑張りました。それから、この前……
いったん話し始めたバンビナータは、まだまだ話したいことがありそうだった。その表情から、それがすぐに終わるものではないことが伝わってきた
彼女は、スーツを着た人形に「家族」の人形の手をそっと握らせて、ふたりをミニチュアの玄関からリビングに導いた
現実の世界では人の声と足音が次第に増えはじめ、何かのイベントが始まるようだ。しかし、小さな家のふたりの住人には、関係のないことだった
周囲がどんなに騒がしくとも、ふたりは変わらず静かに寄り添いながら、その小さな空間で温かく、ささやかな時間を分かち合い続けた
